2020年(令和2年)4月1日の建築基準法改正にともない、記事を加筆・修正しました。

- 戸建住宅を設計するとき、建物の外の避難経路は、有効幅90㎝必要って本当?
- 玄関から出たら90㎝幅の通路がいるってこと?
- 勝手口を避難出口とするのはダメですか?
こんな疑問に答えます。
本記事では、3階建ての戸建て住宅を設計するときに注意が必要な「敷地内通路(建築基準法施行令128条)」について解説。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。
指定確認検査機関で、戸建て住宅から特殊建築物まで少なくとも1000件以上審査した経験をもとに書いているので、確認申請をスムーズに通したい設計者の方に役立つ情報です。
戸建住宅からの避難経路は『幅90㎝の通路』が必要?
例えば、3階建の住宅で床面積200㎡未満であれば有効幅90㎝の敷地内通路が必須。
4階建て以上や延べ面積200㎡以上になると、幅1.5m以上の通路が必要となります。
結論は以上ですが、理由を深掘りしていきます。
戸建住宅の「敷地内通路の幅」は建築基準法施行令128条によって決まる
「戸建住宅の屋外から道路まで避難する経路(敷地内通路)」に、建築基準法の制限がかかるかどうかは、”施行令128条”に該当する建物か否かで決まります。
2階建ての住宅であれば、床面積が1000㎡を超えない限り、敷地内通路の検討は不要です。
✔『敷地内通路』の規定がかかる建築物
- 階数が3以上である建築物
- 建築基準法 別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物
- 政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物
- 延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が1000㎡をこえる建築物
つまり、設計している戸建住宅が、上記のいずれかに当てはまると、敷地内通路の制限を守らなければいけないということですね。
なかでも、”①階数が3以上の建築物”という条件に注目してください。
先ほど、「3階建の戸建住宅は通路幅員90㎝(または1.5m)を確保」という結論に至った理由です。
3階建の住宅の設計で、「敷地内通路の検討を忘れていた…」というのは、致命的なミスになります。

狭い敷地で、道路に面していない位置に玄関をつくる場合は特に注意。
戸建住宅の敷地内通路は、玄関以外の出口からでもOK?
もしも玄関から道路に至るまでの経路で敷地内通路が設けられない場合、勝手口や掃き出し窓から避難する経路を想定するのも「有り」です。
建築基準法において、敷地内通路につながる「屋外への出口」は”玄関でなければいけない”とは書かれていません。

腰窓を避難時の出口とするのはNGですけど、勝手口や掃き出し窓であれば逃げることができますよね。
敷地内通路の規定における、ちょっとした抜け道として覚えておいてください。
玄関からインナーガレージを抜けて道路に出る設計はOK?
玄関から直接、外に出られないような計画では、敷地内通路をどのように考えるべきでしょうか?
例えば、多いのは狭小敷地に建てる3階建住宅でインナーガレージを設ける場合ですね。
結論として、インナーガレージで屋根のかかる空間があっても、問題ありません。

玄関からガレージを抜けて、空の見える部分に出たところから、『敷地内通路』の規定がかかると考えます。
ガレージから道路に至るまでの経路で、有効幅90㎝確保されていれば問題なし。
上記の考え方は、ピロティのある建物でも同じで、防火避難規定の解説2023という本の中に詳しく書かれています。
防火避難規定の解説2023で書かれている内容をもとにした設計は、確認申請でも問題なく通りますし、全国的に認められた解釈なので、実務で積極的に活用できます。
設計事務所に勤めていて読んだことがないという方がいれば、できるだけ早く目を通すようにしましょう。
敷地内通路の途中に「門・塀・階段」を設けるときは要注意
住宅の外構として、道路に沿って門を設けると、門扉の有効幅も90㎝(または1.5m)以上確保する必要があります。
道路に達するまで障害物を設けてはいけないからで、”両開き戸”や”親子扉”でなければ基準を満たすのは困難。
外構の階段でも同じ。
道路と敷地に高低差があって、階段をのぼって建物にアプローチするような住宅ってありますよね。その外構階段の有効幅も90㎝(または1.5m)以上必要です。
設計をするときは建物内部についつい目が行きがちですが、「敷地全体で建築基準法に適合させる」という意識を必ず持っておきましょう。
建築基準法で『敷地内通路』の基準を読んでみる
『敷地内通路』の規定について、建築基準法で読むべき条項は”施行令128条”。関連する条文が”施行令127条”と”法35条”です。
先に建築基準法施行令”127条”と”128条”を見てみましょう。
第6節 敷地内の避難上及び消火上必要な通路等
(適用の範囲)
第127条この節の規定は、法第35条に掲げる建築物に適用する。(敷地内の通路)
第128条敷地内には、第123条第2項の屋外に設ける避難階段及び第125条第1項の出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる幅員が1.5m(階数が3以下で延べ面積が200㎡未満の建築物の敷地内にあつては、90㎝)以上の通路を設けなければならない。
「建築基準法35条に掲げる建築物」を調べるために条文を見てみると、、、
(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)
第35条別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が千平方メートルをこえる建築物については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓せん、スプリンクラー、貯水槽そうその他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。
まとめ
- 戸建住宅における「屋外から道路までの避難経路」の制限は、”建築基準法|施行令128条”。
- 『敷地内通路(令128条)』の規定がかかる建築物を理解しましょう
- 勝手口や掃き出し窓から避難する経路も「あり」
- 住宅の外構として、道路に沿って門を設けると、門扉の有効幅も90㎝(または1.5m)以上確保

