
- 防火設備って何?
- 建築基準法における防火設備の基準が知りたい。
- 告示仕様と大臣認定仕様が選べる?
こんな疑問に答えます。
本記事では、建築基準法の防火規定における重要ワード、『防火設備』について解説。
準防火地域で戸建住宅を建てるなど、延焼ラインにかかる開口部に防火設備が必要となるケースは多くあります。
さらに、”特殊建築物”や”防火区画が必要な建物”を設計するのであれば、『防火設備』の知識は必須です。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。
住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
防火設備とは
防火設備とは、火災が発生したときに、開口部から火が燃え広がるのを防ぐために設けられる防火戸・ドレンチャーなどの設備を指します。
建築基準法においては、開口部の延焼防止を目的として、”外壁の窓”や”防火区画の扉”に防火設備が必要となります。
✔ 防火設備が必要となるケース
- 防火地域、準防火地域で延焼ライン内にある開口部
- 耐火建築物、準耐火建築物の延焼ライン内にある開口部
- 防火区画にある開口部
防火設備は「炎を遮る性能」を満たすために、以下のいずれかの構造方法を選択することになります。
- 告示仕様:国土交通大臣が定めた構造方法を用いる
- 大臣認定仕様:国土交通大臣の認定を受けたものを用いる
ちなみに、防火設備の旧来の呼び名は、乙種防火戸です。設計経験の長い方の中には、乙防(おつぼう)と呼ぶ方もいますね。
- 防火設備=乙種防火戸(旧の呼び名)
- 特定防火設備=甲種防火戸(旧の呼び名)
建築基準法で「防火設備の規定」を読んでみる
防火設備は、”建築基準法第2条9の二号ロ”に定義されています。
(用語の定義)
第2条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。-前略-
九の二 耐火建築物 次に掲げる基準に適合する建築物をいう。
-中略-
ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第二十七条第一項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。
防火設備の告示仕様
防火設備の告示仕様は、建築基準法における建設省告示第1360号で定められています。
告示仕様をもとに防火設備を製作する場合、大きく分けると2つの基準を満たす必要があります。
- 防火設備の材質
- 防火設備の構造
たとえば、鋼製建具であれば、鉄製で0.8㎜以上の厚みを確保(=材質)し、炎が入り込むようなすき間のないもの(=構造)を製作しなければなりません。

確認申請においては、告示1360号に準じた仕様であることを確認するために「建具の構造詳細図」の添付を求められます。
建築基準法の「建設省告示第1360号」を読んでみる
防火設備の構造方法に関する「建設省告示第1360号」は、以下のように書かれています。
平成12年5月24日建設省告示第1360号
防火設備の構造方法を定める件
建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第2条第九号の二ロの規定に基づき、防火設備の構造方法を次のように定める。
第一 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第109条の2に定める技術的基準に適合する防火設備の構造方法は、次に定めるものとする。
以下省略
条文をすべて掲載すると長くなってしまうので、上記は一部抜粋して掲載しています。必ず基本建築関係法令集 法令編 令和7年版で確認してください。
防火設備の大臣認定仕様
防火設備の大臣認定仕様は、建築基準法の規定によって、設置する位置ごとに求められる性能が異なります。
火災時に炎をさえぎる性能によって「EA・EB・EC」という3つの種類に分かれています。
種類 | 防火設備 | ||
---|---|---|---|
特定防火設備 | |||
大臣認定コード | EA | EB | EC |
要件 | 加熱面以外の面に火炎を出さない | 加熱面以外の面に火炎を出さない | 加熱面以外の面に火炎を出さない |
遮炎時間 | 1時間 | 20分間 | 20分間 |
火災の種類 | 建築物の屋内または周囲で発生する通常の火災 | 建築物の屋内または周囲で発生する通常の火災 | 建築物の周囲で発生する通常の火災 |
性能 | 遮炎性能 | 遮炎性能 | 準遮炎性能 |
主な設置場所 | 防火区画 | 耐火建築物または準耐火建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分 | 防火地域または準防火地域内の建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分 |
関係法令 | 令第112条第1項 | 法第2条第九号二/口 令第109条の2 |
法第61条 令第136条の2 |
確認申請の提出時には、設置する予定のサッシが”防火設備”かどうかを確認するために、大臣認定番号の表記がもとめられます。
確認申請において『防火設備』を記載すべき図面
確認申請図書においては、「防火設備の設置位置」と「防火設備の性能」を明示することを意識しましょう。
✔ 防火設備の位置を示すべき図面
- 平面図
- 建具キープラン
✔ 各建具の防火設備の性能を示す図書
- 建具表
- 建具の構造詳細図
まとめ
- 防火設備とは、火災が発生したときに、開口部から火が燃え広がるのを防ぐために設けられる防火戸・ドレンチャーなどの設備
- 防火設備の告示仕様は、建築基準法における建設省告示第1360号で定められている
- 防火設備の大臣認定仕様は、「EA・EB・EC」という3種類
- 確認申請図書においては、防火設備の設置位置と防火設備の性能を明示することを意識

