
- 避難安全検証法(ひなんあんぜんけんしょうほう)って何?
- 排煙設備が免除できるって、ホント?
- 避難安全検証法の基本知識を身に着けたい。
こんな疑問や要望に応えます。
本記事では、建築基準法における「避難安全検証法」の概要をわかりやすく解説。
実際に避難安全検証法を採用するかどうかに関わらず、設計の選択肢を広げるための基礎知識として、ぜひ押さえておきたい内容です。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
避難安全検証法とは
避難安全検証法は、建築基準法の避難規定に対し「仕様規定」ではなく、「性能規定」に基づき安全性を評価する方法です。
火災発生時、煙やガスが避難のさまたげになる高さへ降りてくるまでの間に、建物内の居住者が安全に避難できるかを検証します。

避難安全検証法をおこなうことで、排煙設備の設置基準が免除できるなど、設計の柔軟性や合理性が向上しますね。
避難安全検証法の種類
避難安全検証法には3つの種類があります。

対象や適用範囲に応じて使い分けられます。
区画避難安全検証法
区画避難安全検証法は、火災発生時に在室者全員が「区画部分」から「区画外」へ避難できることを検証する手法です。
以下のいずれかで区画された部分(区画部分)が、区画避難安全性能を有することを検証します。
詳しくは、区画避難安全検証法とは|緩和規定やルートBを解説【排煙設備を免除】の記事をご確認ください。
階避難安全検証法
階避難安全検証法は、建築物の「階」が階避難安全性能を有することを確かめる手法です。
火災発生時、その階にいるすべての人(その階を通らなければ避難できない人も含む)が、直通階段(避難階の場合は地上)まで避難を終えるまでの間、その階の居室や廊下などで、避難の妨げとなる高さへ煙・ガスが降りてこないことを確認します。
詳しくは、階避難安全検証法とは|緩和規定・ルートBの概要をわかりやすく解説の記事をご確認ください。
全館避難安全検証法
全館避難安全検証法とは、建築物全体が全館避難安全性能を有することを確かめる手法です。
当該建築物のいずれの室で火災が発生した場合でも、在館者の全てが地上までの避難を終了するまでの間、各居室・廊下・階段等において、避難上支障がある高さまで煙・ガスが降下しないことを検証します。
詳しくは、全館避難安全検証法とは|検証ルートと排煙設備免除のポイントを解説の記事をご確認ください。
避難安全検証法の適用対象
避難安全検証法は、すべての建築物に適用できるわけではありません。
対象となる建築物
避難安全検証法は、以下の要件を満たす建築物が対象です。
- 用途:自力での避難が可能な人々が利用するもの(オフィスビル、店舗、倉庫、工場など)
- 構造:主要構造部が準耐火構造または不燃材料で造られていること
適用除外となる建築物
避難時に介助の必要な方が利用される施設は、適用対象外となります。

利用者の歩行速度が検証法の定める前提条件を満たさないなど、安全性の確保が困難だからですね。
検証ルートの種類
建築基準法において、建物の避難安全性を評価する方法は、4つのルート(種類)に分けられます。
- ルートA(仕様規定)
- ルートB1(性能規定=避難安全検証法)
- ルートB2(性能規定=避難安全検証法)
- ルートC(性能規定=避難安全検証法)

この中で、避難安全検証法を適用するのは「ルートB(B1・B2)」「ルートC」ですね。
ルートA(仕様規定)
一般的な設計手法で、建築基準法に定められた具体的な仕様(例:避難経路の幅員、排煙設備など)を満たすことで避難安全性を確保します。
避難安全検証法のような数式を用いた検討はなく、法文に準じた設計です。
ルートB(性能規定)
建築基準法告示に基づいた計算式により避難性能を検証する方法です。
性能規定なので、仕様規定に比べて柔軟な設計が可能に。
ルートB1・B2の違い
| 項目 | ルートB1(避難時間判定法) | ルートB2(煙高さ判定法) |
| 概要 | 「避難開始時間+歩行時間+出口通過時間=避難完了時間」を計算し、これが煙が降下する前に完了するか判定 | 避難時間を予測し、その時間で煙層の下端高さを計算。煙高さが1.8m以上なら避難可能と判定 |
| 判定基準 | 避難時間が煙降下時間より早ければOK | 複数基準があり、避難時間と煙高さが密接にリンク |
| 適用例 | 天井が高い、床面積が広い大きな部屋向き | 狭い空間や木材内装など火災の影響が大きい部屋向き |
ルートB2は令和3年(2021年)に告示として導入されました。

広い空間はB1、狭い空間や可燃物が多い空間はB2が適していますね。
ルートC(性能規定・大臣認定が必要)
告示に定められた計算方法(ルートB)以外の検証方法を用いる場合は、国土交通大臣の認定を受ける必要があります。
特殊用途や複雑な設計に対応可能で自由度は高いものの、審査に時間とコストがかかりますね。
避難安全検証法による免除項目
「避難安全検証法」を適用した場合、建築基準法施行令における特定の条項が免除されます。
免除される規定は、採用する避難安全検証法の種類(区画避難、階避難、全館避難)によって異なるため注意が必要。
区画避難安全検証法で免除される条項
区画避難安全検証法で免除される条項は以下のとおり。
| 条項 | 内容 |
| 令第126条の2 | 排煙設備の設置に関する規定 |
| 令第126条の3 | 排煙設備の構造に関する規定 |
| 令第128条の5(第2項、第6項、第7項の規定、および階段に係る部分は免除対象外) | 特殊建築物等の内装制限に関する規定 |
階避難安全検証法で免除される条項
階避難安全検証法で免除される条項は以下のとおり。
| 条項 | 内容 |
| 令第119条 | 廊下の幅に関する規定 |
| 令第120条 | 直通階段の設置(居室からの歩行距離)に関する規定 |
| 令第123条第3項(第1号、第2号、第10号(屋内からバルコニー又は付室に通ずる出入口に係る部分に限る)及び第12号が免除) | 特別避難階段の構造に関する規定の一部 |
| 令第124条第1項第2号 | 避難階段の設置に関する規定の一部 |
| 令第126条の2 | 排煙設備の設置に関する規定 |
| 令第126条の3 | 排煙設備の構造に関する規定 |
| 令第128条の5(第2項、第6項、第7項の規定、および階段に係る部分は免除対象外) | 特殊建築物等の内装制限に関する規定 |
全館避難安全検証法で免除される条項
全館避難安全検証法で免除される条項は以下のとおり。
| 条項 | 内容 |
| 令第112条(第7項、第11項から第13項まで、及び第18項) | 防火区画に関する規定の一部(高層区画、竪穴区画) |
| 令第119条 | 廊下の幅に関する規定 |
| 令第120条 | 直通階段の設置(居室からの歩行距離)に関する規定 |
| 令第123条(第1項第1号及び第6号、第2項第2号、第3項第1号から第3号まで、第10号及び第12号) | 難階段及び特別避難階段の設置・構造に関する規定の一部 |
| 令第124条第1項 | 避難階段の設置に関する規定の一部 |
| 令第125条(第1項及び第3項) | 屋外への出入口(歩行距離、幅)に関する規定の一部 |
| 令第126条の2 | 排煙設備の設置に関する規定 |
| 令第126条の3 | 排煙設備の構造に関する規定 |
| 令第128条の5(第2項、第6項、第7項の規定、および階段に係る部分は免除対象外) | 特殊建築物等の内装制限に関する規定 |
避難安全検証法に関する確認申請で必要な図書
避難安全検証法を適用した場合、確認申請において、以下の検証結果を示す図書が必要となります。
| 図書の種類 | 明示事項 |
| 避難安全検証法に関する計算書 | 居室避難時間及びその算出方法、居室煙降下時間、階避難時間及びその算出方法、煙降下時間、煙又はガスの高さ及びその算出方法、各室の用途、在館者密度、各室の用途に応じた発熱量など。 |
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平⾯図 (避難安全検証した際の平⾯図)
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防火区画の位置及び面積、居室の出口の幅、各室の天井の高さ。
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室内仕上げ表
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令第128条の5に規定する部分の仕上げの材料の種別及び厚さ。
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耐火構造等の構造詳細図
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主要構造部の断面の構造、材料の種別及び寸法。
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各階平⾯図
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耐力壁及び非耐力壁の位置(階避難および全館避難)。
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全館避難の場合のみ
|
屋上広場その他これに類するものの位置、屋外に設ける避難階段の位置。
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避難安全検証法の最新書籍・講習・研修情報
避難安全検証法の知識を深めるために役立つ書籍や研修を紹介します。
おすすめ書籍
建築物の防火避難規定の解説
建築物の防火避難規定の解説は、日本建築行政会議で議論された建築基準法の解釈を図解した書籍です。

避難安全検証法に関する疑問が出たら、チェックしてみましょう。
避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例
避難安全検証法について詳しく解説した書籍が、『避難安全検証法(時間判定法)の解説及び計算例』(発行:一般財団法人日本建築センター)。実務において欠かせない一冊です。
セミナー・講習会
日本建築センターは避難安全検証法に関する研修を主催しており、実務に役立つ技術や知識を学べます。
最新の研修情報は、日本建築センターの公式サイトでご確認ください。。
避難安全検証法に関するQ&A
避難安全検証法についてよくある質問をまとめました。
- 設計変更があった場合、避難安全検証法の再計算が必要?
- 避難安全検証法で、面積区画や重複距離などの規定は除外できる?
設計変更があった場合、避難安全検証法の再計算が必要?
たとえば、以下の変更に伴い避難経路に影響が生じるため、常に最新の計画に応じて避難安全性能を検証し直さないと安全が確保できません。
- 部屋の用途
- 床面積
- 天井高
- 扉の構造、有効寸法
- 防火設備の変更
避難安全検証法で、面積区画や重複距離などの規定は除外できる?

全館避難安全検証法でも、面積区画(1500㎡以下の区画)や、重複距離の規定は免除されませんね。
避難安全検証法について建築基準法を読む
区画避難安全検証法については、建築基準法施行令128条の7に書かれています。
(避難上の安全の検証を行う区画部分に対する基準の適用)
第百二十八条の七
居室その他の建築物の部分で、準耐火構造の床若しくは壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるもので区画されたもの(二以上の階にわたつて区画されたものを除く。以下この条において「区画部分」という。)のうち、当該区画部分が区画避難安全性能を有するものであることについて、区画避難安全検証法により確かめられたもの(主要構造部が準耐火構造である建築物(特定主要構造部が耐火構造である建築物を含む。次条第一項において同じ。)又は主要構造部が不燃材料で造られた建築物の区画部分に限る。)又は国土交通大臣の認定を受けたものについては、第百二十六条の二、第百二十六条の三及び第百二十八条の五(第二項、第六項及び第七項並びに階段に係る部分を除く。)の規定は、適用しない。
以下省略
階避難安全検証法については、建築基準法施行令129条。
(避難上の安全の検証を行う建築物の階に対する基準の適用)
第百二十九条
建築物の階(物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物にあつては、屋上広場を含む。以下この条及び次条第四項において同じ。)のうち、当該階が階避難安全性能を有するものであることについて、階避難安全検証法により確かめられたもの(主要構造部が準耐火構造である建築物又は主要構造部が不燃材料で造られた建築物の階に限る。)又は国土交通大臣の認定を受けたものについては、第百十九条、第百二十条、第百二十三条第三項第一号、第二号、第十号(屋内からバルコニー又は付室に通ずる出入口に係る部分に限る。)及び第十二号、第百二十四条第一項第二号、第百二十六条の二、第百二十六条の三並びに第百二十八条の五(第二項、第六項及び第七項並びに階段に係る部分を除く。)の規定は、適用しない。
以下省略
全館避難安全検証法は、建築基準法施行令129条の2です。
(避難上の安全の検証を行う建築物に対する基準の適用)
第百二十九条の二
建築物のうち、当該建築物が全館避難安全性能を有するものであることについて、全館避難安全検証法により確かめられたもの(主要構造部が準耐火構造であるもの(特定主要構造部が耐火構造であるものを含む。)又は主要構造部が不燃材料で造られたものに限る。)又は国土交通大臣の認定を受けたもの(次項において「全館避難安全性能確認建築物」という。)については、第百十二条第七項、第十一項から第十三項まで及び第十八項、第百十九条、第百二十条、第百二十三条第一項第一号及び第六号、第二項第二号並びに第三項第一号から第三号まで、第十号及び第十二号、第百二十四条第一項、第百二十五条第一項及び第三項、第百二十六条の二、第百二十六条の三並びに第百二十八条の五(第二項、第六項及び第七項並びに階段に係る部分を除く。)の規定は、適用しない。
以下省略
まとめ
- 避難安全検証法は火災発生時、煙やガスが降りてくるまでの間に、居住者が安全に避難できるかを計算するもの。
- 避難安全検証法は3種類。
- 区画避難安全検証法
- 階避難安全検証法
- 全館避難安全検証法
- 避難安全検証法は、以下の要件を満たす建築物が対象。
- 用途:自力での避難が可能な人々が利用するもの
- 構造:主要構造部が準耐火構造または不燃材料で造られているもの
- 建築基準法において、避難安全性を評価する方法は、4つのルート(種類)に分けられる。
- ルートA(仕様規定)
- ルートB1(性能規定=避難安全検証法)
- ルートB2(性能規定=避難安全検証法)
- ルートC(性能規定=避難安全検証法)
- 避難安全検証法を適用した場合、建築基準法施行令における特定の条項が免除される。
- 避難安全検証法を適用した場合、確認申請において、検証結果を示す図書が必要となる。
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