
- 建ぺい率を緩和する方法はある?
- 2つの道路の角にある敷地は、建ぺい率が緩和される?
- 準防火地域内の敷地で、準耐火建築物であれば建ぺい率10%アップ?
こんな疑問に答えます。
本記事では、建ぺい率の「緩和方法」と「条件」について、図をまじえて解説。
- 「2つの道路の角にある敷地」「2つの道路に挟まれた敷地」における建ぺい率の緩和
- 「防火地域」「準防火地域」における建ぺい率の緩和(→令和元年の建築基準法改正に対応)
- 【おまけ】建築面積そのものを緩和規定で減らす方法
建ぺい率の緩和について学ぶことで、敷地に建てられる建物の規模が大きくなり、設計の自由度が上がるかと。

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住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
建ぺい率の緩和方法まとめ
建ぺい率には、敷地の状況に応じて定められた「建ぺい率の限度」に、10%加算できる緩和があります。
建ぺい率の限度を増やすことができるケースは主に4つ。
- 2つの道路の角にある敷地(角地)
- 2つの道路に挟まれた敷地
- 防火地域内にある敷地
- 準防火地域内にある敷地
ここからは、上記4つの緩和を適用するために、建築基準法に定められている条件を解説していきます。
『角地』の建ぺい率緩和
角地とは、2つの道路が交差する角にある敷地のこと。
計画敷地が角地で、特定行政庁が定めた条件を満たしていれば、建ぺい率の限度が10%加算されます。

例えば、指定建ぺい率が60%の敷地で、角地緩和が使えると、70%まで建築可能に。
角地の建ぺい率が緩和される条件は以下のとおり。
- 計画敷地が角地であり、それぞれの道路が敷地に2m以上接していること
- 敷地を管轄する特定行政庁が定めた「建築基準法施行細則」を満たすこと
「建築基準法施行細則」は、インターネットで[特定行政庁となる地域名(例:東京都中央区) 建築基準法施行細則]と検索すればOK。
例として、東京都中央区の建築基準法施行細則を見てみましょう。
(建築面積の敷地面積に対する割合の緩和)
第45条 法第53条第3項第二号の規定により区長が指定する敷地は、その周辺の1/3以上が道路又は公園、広場、川その他これらに類するもの(以下この条において「公園等」という。)に接し、かつ、次の各号の一に該当するものとする。
一 2つの道路(法第42条第2項の規定による道路で、同項の規定により道路境界線とみなされる線と道との間の当該敷地の部分を道路として築造しないものを除く。)が隅角120度未満で交わる角敷地
以下省略
道路だけでなく「公園、広場、川その他」に敷地が接している場合でも、建ぺい率の緩和が適用できます。
ただし、緩和が使える「公園等」に当てはまるかどうかは、事前に行政または確認検査機関と協議しておきましょう。

広場が公共のものではなく、民間敷地だった場合は適用できない可能性があるので…。
『2つの道路に挟まれた敷地』の建ぺい率緩和
「2つの道路に挟まれた敷地」も、角地と同じように建ぺい率が緩和されます。
以下の条件を満たした敷地であれば、建ぺい率の限度が10%増加。
- 敷地が2つの道路に挟まれており、それぞれの道路が2m以上敷地に接していること
- 敷地を管轄する特定行政庁が定めた「建築基準法施行細則」を満たすこと
もう一度、東京都中央区の施行細則を見てみましょう。
(建築面積の敷地面積に対する割合の緩和)
第45条 法第53条第3項第二号の規定により区長が指定する敷地は、その周辺の1/3以上が道路又は公園、広場、川その他これらに類するもの(以下この条において「公園等」という。)に接し、かつ、次の各号の一に該当するものとする。
一 中略
二 幅員がそれぞれ8m以上の道路の間にある敷地で、道路境界線相互の間隔が35mを超えないもの
東京都中央区の施行細則による緩和条件を図解すると、、、

上図のような敷地であれば、建ぺい率の限度を10%加算して設計できるわけですね。
『防火地域・準防火地域』における建ぺい率緩和
防火地域または準防火地域で、防火性能の高い建物(耐火建築物など)を建築することによる建ぺい率緩和があります。
防火地域内で耐火建築物等を建てることによる建ぺい率緩和
防火地域内で、敷地内の建物すべてが下記のいずれかの場合、建ぺい率の限度が10%加算されます。(⇒法53条3項)
- 耐火建築物
- 延焼防止建築物(耐火建築物と同等の延焼防止性能を有する建築物)
さらに、指定建ぺい率が80%の敷地で、上記の「耐火建築物」「延焼防止建築物」を設計する場合、建ぺい率の規定は適用されません。(⇒法53条6項)

防火地域内で指定建ぺい率が80%の地域では、敷地内すべての建物が耐火建築物であれば、建ぺい率の限度がなくなるということ。
大げさにいえば「建ぺい率100%」のように、敷地全域を建築物で覆うような計画も可能となるわけですね。
準防火地域で準耐火建築物等を建てることによる建ぺい率緩和
準防火地域内で、敷地内の建物すべてが下記のいずれかの場合、建ぺい率の限度が10%加算されます。
- 耐火建築物
- 延焼防止建築物(耐火建築物と同等の延焼防止性能を有する建築物)
- 準耐火建築物
- 準延焼防止建築物(準耐火建築物と同等の延焼防止性能を有する建築物)

準防火地域における建ぺい率の緩和は、2019年6月に施行されました。
準防火地域内の準耐火建築物による建ぺい率10%アップは、2019年の建築基準法改正の大きな目玉。
都市部には準防火地域に指定された地域が多いので、狭い敷地いっぱいに建物を設計したい場合、とても有益な緩和規定ですね。
【おまけ】建築面積そのものを減らす緩和
敷地いっぱいに建物を建てたいとき、建ぺい率の限度を増やすのも一つの方法ですが、建築面積そのものを減らす方法も知っておくと役立つかと。
「建設省告示1437号」という、主に住宅のポーチ部分などで使える緩和規定があります。
詳しい内容は、『建築面積』とは?計算方法をわかりやすく図解【庇・出窓は緩和あり】という記事で図解しているので、ご参考までにどうぞ。
建築基準法で「建ぺい率の緩和」について読んでみる
建ぺい率の緩和は、「建築基準法53条3項」に定められています。
- 法53条3項一号:防火地域・準防火地域における建ぺい率緩和
- 法53条3項二号:角地・2つの道路に挟まれた敷地の建ぺい率緩和
第53条 建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合(以下「建蔽率」という。)は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を超えてはならない。
中略
3 前二項の規定の適用については、第一号又は第二号のいずれかに該当する建築物にあつては第一項各号に定める数値に1/10を加えたものをもつて当該各号に定める数値とし、第一号及び第二号に該当する建築物にあつては同項各号に定める数値に2/10を加えたものをもつて当該各号に定める数値とする。
一 防火地域(第一項第二号から第四号までの規定により建蔽率の限度が8/10とされている地域を除く。)内にあるイに該当する建築物又は準防火地域内にあるイ若しくはロのいずれかに該当する建築物
イ 耐火建築物又はこれと同等以上の延焼防止性能(通常の火災による周囲への延焼を防止するために壁、柱、床その他の建築物の部分及び防火戸その他の政令で定める防火設備に必要とされる性能をいう。ロにおいて同じ。)を有するものとして政令で定める建築物(以下この条及び第六十七条第一項において「耐火建築物等」という。)
ロ 準耐火建築物又はこれと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物(耐火建築物等を除く。第八項及び第六十七条第一項において「準耐火建築物等」という。
二 街区の角にある敷地又はこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するものの内にある建築物
また、指定建ぺい率が80%の防火地域で、耐火建築物等を建てるときは「法53条6項」により建ぺい率の制限が適用されません。
法53条 中略
6 前各項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 防火地域(第一項第二号から第四号までの規定により建蔽率の限度が8/10とされている地域に限る。)内にある耐火建築物等以下省略
まとめ
- 『角地』で建築基準法施行細則に適合すれば、建ぺい率10%加算
- 「公園、広場、川その他」に敷地が接している場合でも、建ぺい率の緩和が適用可。
- 『2つの道路に挟まれた敷地』で建築基準法施行細則に適合すれば、建ぺい率10%加算
- 防火地域で、敷地内の建物すべてが下記のいずれかの場合、建ぺい率10%加算。
- 耐火建築物
- 延焼防止建築物(耐火建築物と同等の延焼防止性能を有する建築物)
- 指定建ぺい率が80%の防火地域で、耐火建築物または延焼防止建築物であれば、建ぺい率の規定は適用されない。
- 準防火地域で、敷地内の建物すべてが下記のいずれかの場合、建ぺい率の限度10%加算。
- 耐火建築物
- 延焼防止建築物(耐火建築物と同等の延焼防止性能を有する建築物)
- 準耐火建築物
- 準延焼防止建築物(準耐火建築物と同等の延焼防止性能を有する建築物)

