- 建築設備って、どんな種類がある?
- 建築基準法における定義が知りたい。
- 設備の定期報告って何?
こんな悩みに答えます。
本記事では、『建築設備』の”基礎知識・定期検査の基準・確認申請の要否”について解説。
記事を読むことで、建築基準法にもとづく用語の定義や、代表的な設備を理解することができます。
このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築基準法の知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
建築設備とは【建築物における各種設備】
『建築設備』とは、建築物と一体となって、必要な機能をはたすための設備です。
屋内にあるものだけでなく、屋外に設置するキュービクルなども対象。
代表的な建築設備をまとめると以下のとおり。
- 電気
- ガス
- 給水
- 排水
- 空気調和設備
- 換気
- 暖房
- 冷房
- 消火
- 排煙
- 汚物処理
- し尿浄化槽
- 焼却炉
- 避雷設備
- 昇降機
数ある設備のなかでも、「昇降機」は機械そのものが確認申請の対象となります。
昇降機を設置する際は、”建築物本体の確認申請”と”昇降機の確認申請”が別々に必要ということ。
その他の建築設備は、建物本体の確認申請において審査対象となるため、意匠図や構造図といっしょに設備図を添付すればOKです。
【建築基準法】建築設備は、建築物の一部とみなされる
建築基準法において、建築設備は「建築物の一部」とみなされます。
建築基準法2条を読んでみましょう。
第2条
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨こ線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
二 中略
三 建築設備 建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針をいう。
“建築物”と扱われることにより、建築基準法のさまざまな規定が設備にも適用されます。
よくミスが起こりやすいのは、道路斜線や天空率。
建築設備が屋外に設けられているとき、道路斜線の後退緩和に影響したり、天空率の計画建築物にモデリングが必要となりますね。
意匠設計者であっても建築設備を意識した計画が求められます。
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確認申請が必要な建築設備【EV・エスカレーター・小荷物専用昇降機】
出典:東芝エレベータ株式会社
確認申請が必要となる建築設備は、以下に当てはまる昇降機。
- エレベーター
- エスカレーター
- 小荷物専用昇降機のフロアタイプ(昇降路の出し入れ口が床面から50㎝未満)
小荷物専用昇降機の定義【確認申請の要否も解説】
「小荷物専用昇降機」とは、以下の基準を満たす荷物専用の昇降設備です。
- かごの水平投影面積が1㎡以下
- 天井の高さが1.2m以下
ダムウェーター(DW)と呼ばれることも。
この小荷物専用昇降機は、出し入れ口の位置によって、確認申請の要否が変わります。
- テーブルタイプ:確認申請が不要
- フロアタイプ:確認申請が必要
出典:クマリフト株式会社
テーブルタイプとは、昇降路の出し入れ口が床面よりも50㎝以上高いもの。
フロアタイプは、出し入れ口が床面から50㎝未満にあるもの。
人の落下する危険性があるのは、床から直接出し入れするフロアタイプ。だから「確認申請が必要」と考えれば覚えやすいと思います。
「垂直搬送機」は建築基準法上の昇降機に該当しない【確認申請の対象外】
「垂直搬送機(すいちょくはんそうき)」のうち、以下の要件をすべて満たすものは、建築基準法における昇降機とみなされません。
- 工場、作業場等の生産設備又は搬送(荷役)設備として専らそれらの過程の一部に組み込まれる施設であること。
- 人が搬器への物品の搬出、搬入に直接介入せずに使用されること。
- 人が乗り込んだ状態で運転されるおそれのない構造であること。
出典:近畿建築行政会議
”昇降機に該当しない”ということは、確認申請も不要。
ただし、建築基準法以外に、クレーン等安全規則による”エレベーター”または”簡易リフト”に該当するケースがあるので注意しましょう。
設置にあたって所管労働基準監督署への確認は欠かせません。
定期検査の対象となる建築設備
建築設備の「定期検査」とは、建築基準法12条3項にもとづく法的検査。
設備の異常によって起こる災害から建物利用者を守るために行われます。
建築設備の定期検査は1年に1回実施。
実施した検査の結果は、特定行政庁に報告するよう義務づけられています。
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建築設備の定期検査は、建物そのものではなく「設備」が対象。
✓ 定期検査の対象
- 給排水設備
- 換気設備
- 非常用の照明装置
- 排煙設備
ただし、検査項目は特定行政庁によって異なります。
例えば、給排水設備が免除になっている行政があるなど。
報告の進め方も違うケースが多いので、事前に特定行政庁へ確認のうえ、調査を開始しましょう。
建築設備について建築基準法を読む
建築基準法87条の4で、昇降機に確認申請が必要であることが明記されています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めてください。
(建築設備への準用)
第87条の4
政令で指定する昇降機その他の建築設備を第6条第1項第1号から第3号までに掲げる建築物に設ける場合においては、同項(第87条第1項において準用する場合を含む。)の規定による確認又は第18条第2項(第87条第1項において準用する場合を含む。)の規定による通知を要する場合を除き、第6条(第3項、第5項及び第6項を除く。)、第6条の2(第3項を除く。)、第6条の4(第1項第1号及び第2号の建築物に係る部分に限る。)、第7条から第7条の4まで、第7条の5(第6条の4第1項第1号及び第2号の建築物に係る部分に限る。)、第7条の6、第18条(第4項から第13項まで及び第25項を除く。)及び第89条から第90条の3までの規定を準用する。
以下省略
建築基準法の対象となる昇降機は、令129条の3に該当するもの。
(適用の範囲)
第129条の3
この節の規定は、建築物に設ける次に掲げる昇降機に適用する。
一 人又は人及び物を運搬する昇降機(次号に掲げるものを除く。)並びに物を運搬するための昇降機でかごの水平投影面積が1平方メートルを超え、又は天井の高さが1.2mを超えるもの(以下「エレベーター」という。)
二 エスカレーター
三 物を運搬するための昇降機で、かごの水平投影面積が1㎡以下で、かつ、天井の高さが1.2m以下のもの(以下「小荷物専用昇降機」という。)
以下省略
小荷物昇降機の構造は建築基準法施行令129条の13。
(小荷物専用昇降機の構造)
第129条の13
小荷物専用昇降機は、次に定める構造としなければならない。
一 昇降路には昇降路外の人又は物がかご又は釣合おもりに触れるおそれのないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する壁又は囲い及び出し入れ口の戸を設けること。
二 昇降路の壁又は囲い及び出し入れ口の戸は、難燃材料で造り、又は覆うこと。ただし、地階又は3階以上の階に居室を有さない建築物に設ける小荷物専用昇降機の昇降路その他防火上支障のないものとして国土交通大臣が定める小荷物専用昇降機の昇降路にあつては、この限りでない。
三 昇降路のすべての出し入れ口の戸が閉じた後、かごを昇降させるものであること。
四 昇降路の出し入れ口の戸には、かごがその戸の位置に停止していない場合においては、かぎを用いなければ外から開くことができない装置を設けること。ただし、当該出し入れ口の下端が当該出し入れ口が設けられる室の床面より高い場合においては、この限りでない。
確認申請を要する建築設備は、令146条にもとづくものです。
(確認等を要する建築設備)
第146条 法第87条の4(法第88条第1項及び第2項において準用する場合を含む。)の規定により政令で指定する建築設備は、次に掲げるものとする。
一 エレベーター及びエスカレーター
二 小荷物専用昇降機(昇降路の出し入れ口の下端が当該出し入れ口が設けられる室の床面より高いことその他の理由により人が危害を受けるおそれのある事故が発生するおそれの少ないものとして国土交通大臣が定めるものを除く。)
三 法第12条第3項の規定により特定行政庁が指定する建築設備(屎し尿浄化槽及び合併処理浄化槽を除く。)
以下省略
まとめ
- 建築設備とは、建築物と一体となって必要な機能をはたすための設備。
- 電気
- ガス
- 給水
- 排水
- 空気調和設備
- 換気
- 暖房
- 冷房
- 消火
- 排煙
- 汚物処理
- し尿浄化槽
- 焼却炉
- 避雷設備
- 昇降機
- 建築基準法において、建築設備は「建築物の一部」とみなされる。
- 確認申請が必要となる建築設備は、以下に当てはまる昇降機。
- エレベーター
- エスカレーター
- 小荷物専用昇降機のフロアタイプ
- 小荷物専用昇降機は、出し入れ口の位置によって、確認申請の要否が変わる。
- テーブルタイプ:確認申請が不要
- フロアタイプ:確認申請が必要
- 垂直搬送機のうち、一定の要件を満たすものは、建築基準法における昇降機とみなされない。
- 建築設備の「定期検査」は、建築基準法12条3項にもとづく法的検査。