- 意匠設計(読み:いしょうせっけい)って、どんな仕事?
- しんどいって聞くけど実際どうなの?
- 構造設計との違いが知りたい。
こんな疑問や要望に答えます。
本記事では、建築設計分野のひとつ『意匠設計』の業務内容や悩みについて深掘りします。
✓ 主な建築設計分野は3種類
- 意匠
- 構造
- 設備
意匠設計の業務内容が知りたい方や、これから設計者(建築士)を目指す方にとって役立つ情報です。
このサイトは「ゼネコン・建築士事務所・指定確認検査機関」と複数の業種を経験した一級建築士が運営。
建築業界のなかでスキルの幅を広げつつ、収入を上げてきた経緯をもとに情報を発信しているので、ご参考までにどうぞ。
意匠設計の業務内容とは
意匠設計は、建築設計の中でも主にデザインを担当する分野です。
建物の外観や内装について、以下を考慮しながら、建築物をデザインする枠割を果たします。
- 空間の美しさ
- 機能性
- 防火・避難に関する安全性
- 都市計画との調和
英語でいうと「architectural design」ですね。
具体的な仕事内容は以下のとおり。
- 基本設計
- 詳細設計
- 構造設計や設備設計との連携
基本設計
施主からの要望をヒアリングし、建物の大まかな見た目や間取りを平面図・立面図・パース図などで作成。
予算内に収まる施工ができるか、建築基準法に違反していないかも確認します。
詳細設計
基本設計で決まった建物の方向性から、さらに細かい設計図を作成。
使用する建設資材や天井の高さ、コンセントの位置などの詳細を決定します。
構造設計や設備設計との連携
意匠設計は単独で行われることもありますが、近年では構造設計や設備設計と連携をとることが多いですね。
たとえば、デザイン要望について実現がむずかしい場合、構造や設備の知識を活用して解決方法を模索します。
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意匠設計に向いている人
意匠設計者には以下の能力が求められます。
- デザイン力
- コミュニケーション能力
- バランス感覚
デザイン力
意匠設計では、「直感的な設計」や「問題を解決するためにパズルのような設計」をおこなうもの。優れたデザイン力が求められます。
建築主の求める空間を実現するために、要望をくみ取り具体化する能力も重要です。
コミュニケーション能力
意匠設計者は、建築主との打ち合わせを主導します。建築主の意向を構造設計者や設備設計者へ共有しながら建物の方向性を決定します。
プロジェクトメンバーとの密なコミュニケーションが良い建物につながります。
バランス感覚
建築物に関する以下の要素について、メリットとデメリットを比較しながら建物を設計します。
- 魅力
- 性能
- コスト
- 施工性
- スケジュール
トータルで建物がよくなるような決定をくだすバランス感覚が求められます。
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意匠設計の抱える悩み
意匠設計は、クリエイティブでやりがいのあるものの、同時に大変な面もあります。
意匠設計者の抱える主な悩みをまとめました。
- 予算や期限の制約
- 構造や設備との調整
- クライアントとのコミュニケーション
予算や期限の制約
建築は高額なものであり、施主や発注者から予算や期限の圧力を受けることが多いです。
自分の理想とする設計を実現するためには、コストや工期の見積もりや調整が必要。
建築は長期的なプロジェクトであり、設計段階から完成までに数年かかることもあります。
その間に、要望や条件が変わったり、トラブルが起きたりすることもあるでしょう。意匠設計者の柔軟な対応が求められます。
構造や設備との調整
建築物には、構造や設備といった目に見えない部分も欠かせません。意匠設計者は、構造設計者や設備設計者と協力しながら、建物の安全性や機能性を確保します。
とはいえ、意匠と構造や設備は、ときに相反することも。
たとえば、美しい造形を求めて、柱や梁をかくしたいとしても、それが構造上の問題を引き起こすことがあります。
意匠設計は妥協や工夫の連続です。
クライアントとのコミュニケーション
意匠設計者は、クライアントとのコミュニケーションが必須。クライアントの要望やイメージを正確に把握し、自分の設計の良さを伝えます。
しかし、クライアントは建築の専門知識がないため、設計者との間に認識のずれや不満を感じることがあります。
そんなとき、設計者は説得力や提案力を発揮しなければいけません。
意匠設計の平均年収
日本での意匠設計の平均年収は、¥4,460,000と言われています。※ 2024年2月4日時点(出典:indeed)
平均月給は、¥316,000です。※ 2024年2月4日時点(出典:indeed)
所属企業別の意匠設計者の想定年収は以下のとおり。
- スーパーゼネコン:600~800万円
- 準大手ゼネコン:500~700万円
- 中堅ゼネコン:400~600万円
- ハウスメーカー:350~550万円
- 組織系設計事務所:400~600万円
- アトリエ系設計事務所:350~550万円
- コンサル系設計事務所:500~800万円
インターネット上の求人情報や統計データをもとに作成したもので、実際の給与とは異なる場合があります。また、経験やスキル、業績などによっても給与は変動するため、ご参考まで。
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意匠設計の求人例
意匠設計の求人について、2024年2月8日時点で募集されている事例を見てみます。
ゼネコンA社
- 勤務地:東京都
- 仕事内容:国内、海外主要拠点での建築設計・工事監理業務。オフィスビル、共同住宅の基本計画、実施設計をはじめとした一連の意匠設計にかかわる業務。
- 年収:400万円~800万円
組織系設計事務所B社
- 勤務地:東京都
- 仕事内容:公共建築、商業施設、住宅、医療・福祉施設などの建築設計・監理業務。国内外のコンペやプロポーザルにも参加する。
- 年収:400万円~700万円
アトリエ系設計事務所C社
- 勤務地:東京都
- 仕事内容:国内外のプロジェクトにおける建築設計・デザイン業務。住宅、商業施設、公共施設、ホテル、リゾートなどの多様な建築物の企画・提案から実施設計まで。
- 年収:300万円~500万円
意匠設計の求人情報を探している方には、転職3回の一級建築士が語る。おすすめ転職サイト・転職エージェントという記事が役立ちます。
構造設計との違い
構造設計は、建物が地震や風などの力に耐えられるように、柱や梁、基礎などの構造体を設計する仕事です。
物理学や構造力学の知識を活用して、安全性や耐久性を確保。
意匠設計者と構造設計者は、それぞれの専門性をもちながら、建築計画の全体を見通して連携します。
設備設計との違い
設備設計は、建物を利用する人が内部で快適に過ごせるように、空調や音響、光や配管などの設備を検討する仕事です。
最新の設備を理解し、適切な提案や調整を行います。
意匠設計に必要な資格
意匠設計に必要な資格は「建築士」です。建築士資格は以下の3種類。
- 一級建築士
- 二級建築士
- 木造建築士
それぞれ設計できる建物の規模や用途が異なります。
意匠設計の仕事をするには、一級建築士の資格が望ましいものの、二級建築士や木造建築士でも、規模や用途に応じて設計できる建物はあります。
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まとめ
- 意匠設計は、建築設計の中で主にデザインを担当。
- 意匠設計者に必要な能力
- デザイン力
- コミュニケーション能力
- バランス感覚
- 意匠設計者の抱える悩み
- 予算や期限の制約
- 構造や設備との調整
- クライアントとのコミュニケーション
- 意匠設計の平均年収:¥4,460,000※ 2024年2月4日時点(出典:indeed)
- 構造設計は、柱や梁、基礎などの構造体を設計する仕事。
- 設備設計は、空調や音響、光や配管などの設備を検討する仕事。
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