- 建築設備士って、どんな職業?
- 受験資格はある?
- とっても役に立たないってホント?
こんな疑問に答えます。
本記事では、「建築設備士」についてわかりやすく解説。
仕事内容、取得するための条件や難易度を理解することで、建築業界でのキャリアアップに役立ちます。
このサイトは「建設業・建築士事務所・確認検査機関」と複数の業種を経験した一級建築士が運営。
建築業界のなかでスキルの幅を広げつつ、収入を上げてきた経緯をもとに情報を発信しているので、ご参考までにどうぞ。
建築設備士とは
建築設備士は、建築士法に基づく国家資格です。取得すれば、建物の設備に関する専門的な知識をもつ技術者として社会的に認められます。
✓ 建築士法による定義
第二条
中略
5 この法律で「建築設備士」とは、建築設備に関する知識及び技能につき国土交通大臣が定める資格を有する者をいう。
主に、建築物の設備設計や施工、保守・管理などを行う方が多いですね。
具体的には、建築物の快適性や機能性を保つため以下の設備について深い知識が求められます。
- 空調設備
- 衛生設備
- 換気設備
- 給排水設備
- 電気設備
- 昇降機設備
建築設備士試験の受験資格
建築設備士試験の受験資格は以下のとおり。
- 四年制大学卒業+実務経験2年以上
- 短期大学・高等専門学校卒業+実務経験4年以上
- 高等学校・旧中学校+実務経験6年以上
また、以下の資格者は、2年以上の実務経験を積むと建築設備士の受験資格が得られます。
- 1級建築士
- 1級電気工事施工管理技士
- 1級管工事施工管理技士
- 空気調和・衛生工学会設備士
- 電気主任技術者(第1級、第2級、第3級)
建築設備士試験の概要
建築設備士試験は一次試験(学科試験)と二次試験(設計製図試験)があり、両方の基準を満たせば合格となります。
✓ 一次試験の概要
四肢択一のマークシート方式です。
試験科目 | 問題数 | 制限時間 |
建築一般知識 | 27問 | 2時間30分 |
建築法規 | 18問 | |
建築設備 | 60問 | 3時間30分 |
✓ 二次試験の概要
試験科目 | 問題数 | 制限時間 |
建築設備基本計画 | 11問 | 5時間30分 |
建築設備設計 | 5問 |
令和3年度以降の「第一次試験(学科)」に合格している場合、次の年から続く4回のうち任意の2回は、「第一次試験(学科)」が免除されます。
建築設備士試験の過去問
建築設備士試験の過去問題を提供するウェブページがあります。
以下のリンクから、令和5年度から平成26年度までの試験問題と解答をダウンロードが可能。
第一次試験(学科)と第二次試験(設計製図)の問題が含まれています。
ただし、試験問題は試験実施時の内容のため、現在の法令や規格と一致しない場合があります。
建築設備士の取得難易度・合格率
✓ 一次試験の合格率
平成30年 | 31.2% |
令和元年 | 26.8% |
令和2年 | 25.7% |
令和3年 | 32.8% |
令和4年 | 31.4% |
✓ 二次試験の合格率
平成30年 | 52.0% |
令和元年 | 54.3% |
令和2年 | 41.4% |
令和3年 | 52.3% |
令和4年 | 46.4% |
建築設備士試験の合格に必要な勉強時間
建築設備士試験の一次試験(学科試験)に合格するために必要な勉強時間の目安は「150〜200時間」です。
1日2時間の勉強を3ヶ月程度おこなうイメージ。
一次試験の当日までは二次試験のことは考えなくてもOK。まずは、学科試験合格だけを見据えましょう。
二次試験の対策には、日本設備設計事務所協会連合会主催の講習会がおすすめです。
1日の講習で受講料は2万5千円ほど。
独学の方にとって、講習会の参加は欠かせません。
二次試験は、この講習会に加えて、独習による勉強時間を「約80時間」確保すれば合格に近づくはずです。
建築設備士の仕事内容
建築設備士は、建築設備に関する専門的な知識を持ち、建築士に対して適切な助言や意見を提供する役割を担っています。
具体的な業務は以下のとおり。
- 建築士への建築設備設計に関する助言
- 建築士への工事監理に関する助言
- 建築設備の設計
- 建築設備の保守と保全
- 教育や研究開発
建築設備士の求人
建築設備士は、以下のような企業で活躍することができ、建設業界での需要も高まっています。
- ゼネコン
- 設計事務所
- 建築設備メーカー
- ビルメンテナンス会社
平均年収は500万円~700万円程度。企業の規模や経験によって差が出ますね。
まずは建設会社や設備工事会社、設計事務所などで実務経験を積み、資格取得を目指すのが一般的なルートです。
建築設備士からさらにスキルアップして、建築士の資格も取得し、建築全般の幅広い専門知識を身につけることができれば、さらなる年収増加も見込めます。
詳しくは、転職3回の一級建築士が語る。おすすめ転職サイト・転職エージェントをご確認ください。
✓ 関連記事
建築設備士は取っても意味ない?【メリットはあります】
建築設備士は「取っても意味がない」という意見を耳にします。
たとえば、建築士法において、建築士は延べ面積が2000㎡を超える建築物の設計時に建築設備士の意見を聴くよう努めることとありますが、これは義務ではありません。
指定確認検査機関で働いていた頃、建築設備士が関与した確認申請はごくわずかでした。
しかし、建築設備業界での専門性を高めるためには、資格取得が重要なステップとなることも事実。
キャリアアップにつながる可能性もあるため、一概に「意味がない」とは言えないでしょう。
「建築設備士」について建築士法を読む
建築士法において「建築設備士」に関連する条項をまとめました。
第四章 業務
(設計及び工事監理)
第十八条
中略
4 建築士は、延べ面積が二千平方メートルを超える建築物の建築設備に係る設計又は工事監理を行う場合においては、建築設備士の意見を聴くよう努めなければならない。ただし、設備設計一級建築士が設計を行う場合には、設計に関しては、この限りでない。
建築設備士の関与した建築物は、確認申請図書において明らかにしなければなりません。
(業務に必要な表示行為)
第二十条
中略
5 建築士は、大規模の建築物その他の建築物の建築設備に係る設計又は工事監理を行う場合において、建築設備士の意見を聴いたときは、第一項の規定による設計図書又は第三項の規定による報告書(前項前段に規定する方法により報告が行われた場合にあつては、当該報告の内容)において、その旨を明らかにしなければならない。
まとめ
- 建築設備士は、建築士法に基づく国家資格で、設備に関する専門知識をもつ技術者です。
- 建築設備士試験の受験資格
- 四年制大学卒業+実務経験2年以上
- 短期大学・高等専門学校卒業+実務経験4年以上
- 高等学校・旧中学校+実務経験6年以上
- 建築設備士試験には、一次試験(学科試験)と二次試験(設計製図試験)がある。
- 合格に必要な勉強時間の目安
- 一次試験(学科試験):150〜200時間。
- 二次試験(設計製図試験):約80時間。
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