
- 「構造耐力上主要な部分」って、建築物のどの部材?
- 主要構造部との違いは?
- 建築基準法による定義が知りたい。
こんな疑問に答えます。
本記事では「構造耐力上主要な部分」について、わかりやすく解説。
用語の定義はもちろん、それぞれの部材の役割や、力が伝わる流れまで理解することができます。

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住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
構造耐力上主要な部分とは【長期・短期荷重を負担する部材】
建築基準法における「構造耐力上主要な部分」とは、建築物の以下の部位のことです。
- 基礎
- 基礎ぐい
- 壁
- 柱
- 小屋組
- 土台
- 斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するもの)
- 床版
- 屋根版
- 横架材(はり、けた)
実務においては「構造部材(または構造材)」と言われます。建築物にかかる以下の外力に抵抗し、建物を支えるために欠かせない部材ばかり。
- 建築物の自重
- 積載荷重
- 積雪荷重
- 風圧
- 土圧
- 水圧
- 地震その他の震動もしくは衝撃
「構造耐力上主要な部分」と「主要構造部」の違い
建築基準法には「構造耐力上主要な部分」と「主要構造部」という2つの用語があり、それぞれ定義が異なります。
まず、2つの違いをおおまかにまとめると以下のとおり。
1 | 構造耐力上主要な部分 | 建築構造の観点から主要な部分(荷重に対する安全確保) |
2 | 主要構造部 | 防火上の観点から主要な部分(火災に対する安全確保) |
✓ 主要構造部とは
- 壁
- 柱
- 梁
- 床
- 屋根
- 階段


「構造耐力上主要な部分」と比較すると、基礎と最下階の床が除かれていますね。
詳しくは、「主要構造部」の定義とは|「構造耐力上主要な部分」との違いも解説という記事をご確認ください。
構造部材の構成
建物は以下の3つから構成されています。
- 構造材
- 仕上げ材
- 設備機器
なかでも構造材は人体でいえば骨格にあたり、建物を保つためには欠かせないもの。
✓ 主な構造材
- 床
- 梁(大梁・小梁)
- 柱
- 壁
- 基礎
床(スラブ)
床の役割は、人・物・重力に抵抗して支持すること。
柱・梁・壁が受けた水平力を伝達する役目も果たします。
梁(大梁)
梁(大梁)は、床を支持するために配置する横架材です。
床の重量や面積が大きいときは、大梁に小梁をかけて支えます。
柱
柱は、鉛直方向に建てられる部材です。
鉛直方向の荷重、および水平力に対して抵抗する役目を果たします。
壁
壁は主に地震力をはじめとする水平力に抵抗する部材です。
基礎
基礎は、建物が受けた鉛直方向・水平方向すべての荷重を柱や土台などを通して支持しつつ、地盤や杭へと伝達する役割をもちます。
構造材から地盤への力の伝達経路
建物が荷重を受けると、その力は構造部材を通して地盤へと伝わります。
✓ 「鉛直方向の荷重(固定荷重・積載荷重など)」の伝達経路
✓ 「水平力(地震力・風荷重など)」の伝達経路
非構造部材とは
構造耐力上主要な部分に含まれない部材(仕上げ材・内装材など)は、非構造部材と呼ばれます。
建築構造における安全性の確保を目的としない部材です。
✓ 非構造部材の例
- 天井材
- 床材(フローリングなど)
- 間仕切り壁
- 鉄骨造や木造の外壁材(タイル・ALC版など)
構造耐力上主要な部分に関するQ&A
構造耐力上主要な部分について、よくある質問をまとめました。
- 住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)における「構造耐力上主要な部分」とは
- 地震保険における「主要構造部」とは
品確法における「構造耐力上主要な部分」とは
住宅の品質確保の促進等に関する法律は、住宅の性能表示および、瑕疵担保に関する基準を定めたものです。
品確法における瑕疵担保保証の対象は、以下の2点。
- 構造耐力上主要な部分
- 雨水の浸入を防止する部分
地震保険における「主要構造部」とは
地震保険と建築基準法では「主要構造部」という言葉の定義が違います。
地震保険における「主要構造部」は、建築基準法上の「構造耐力上主要な部分」を意味しています。
構造耐力上主要な部分について建築基準法を読む
構造耐力上主要な部分は、建築基準法2条に書かれています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2025 図解建築申請法規マニュアル や建築申請memo2025 といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
中略
三 構造耐力上主要な部分 基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。)、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。)で、建築物の自重若しくは積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものをいう。
まとめ
- 建築基準法における「構造耐力上主要な部分」とは以下の部位のこと。
- 基礎
- 基礎ぐい
- 壁
- 柱
- 小屋組
- 土台
- 斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するもの)
- 床版
- 屋根版
- 横架材(はり、けた)
- 「鉛直方向の荷重(固定荷重・積載荷重など)」の伝達経路
- 床(または屋根)→梁→柱→土台(木造の場合のみ)→基礎→地盤
- 「水平力(地震力・風荷重など)」の伝達経路
- 床(または屋根)→梁→柱・壁(耐震壁)→土台(木造の場合のみ)→基礎→地盤
- 非構造部材:構造耐力上主要な部分に含まれない部材(仕上げ材・内装材など)
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