『日影規制』とは|建築基準法による制限を図解【緩和方法も解説】

日影規制とは 集団規定
  • 日影規制の概要をわかりやすく知りたい。
  • 日影図による検討が必要な建物の規模は?
  • 日影規制を緩和する方法はある?

こんな疑問に答えます。

 

本記事では、建築基準法における日影規制について、基礎から応用まで幅広く解説。

日影図の検討に役立つ3つのポイントをまとめました。

  1. 日影規制についてわかりやすく解説
  2. 日影規制の対象となる建築物とは
  3. 日影規制を緩和する方法

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住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。

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日影規制とは【建築基準法の用語をわかりやすく解説】

日影規制(にちえいきせい)とは、建築物による影で、周囲の敷地の日照をさえぎらないための高さ制限。

日影の規制エリアでは、他人の敷地に長時間の影を落とすような高層建築物は建てられないわけですね。

 

日影規制の対象となる地域に建築物を設計する場合、以下の境界線から「5mおよび10mの範囲に何時間の影を落とすか」を日影図で検討することになります。

  • 隣地境界線
  • 道路中心線(道路幅が10mを超える場合、反対側の境界線から5m後退した位置)

 

✔️ 日影規制とは【イメージ図】

日影規制_とは

ここからは、建築基準法における規制の概要を詳しく解説していきます。

 

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日影規制の対象建築物とは【用途地域・指定容積率・建物高さで決まる】

日影規制の対象となる建築物かどうかは、以下の基準の組み合わせで決まります。

上記にもとづき、建築基準法に定められた規制を一覧表にまとめると、以下のとおり。

 

✔️ 日影規制の概要 一覧表【建築基準法 別表第4 ※一部抜粋】

(い)地域 (ろ)制限を受ける建築物 (は)平均地盤面からの高さ
  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 田園住居地域
軒の高さが7mを超える建築物

または、

地階を除く階数が3以上の建築物

1.5m
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
高さが10mを超える建築物 条例により以下のいずれか

  • 4m
  • 6.5m
  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域
  • 近隣商業地域
  • 準工業地域
高さが10mを超える建築物 条例により以下のいずれか

  • 4m
  • 6.5m
用途地域の指定のない区域 軒の高さが7mを超える建築物

または、

地階を除く階数が3以上の建築物

1.5m
高さが10mを超える建築物 4m

ただ、日影規制の対象となる地域かどうかは、建築基準法を読むだけでは判別できません。

特定行政庁が条例により、用途地域や容積率に応じて、日影規制の対象となるエリアを決めているからです。

 

条例で定められた日影規制の対象建築物を調べる方法

各市町村の日影規制の対象エリアは、インターネットで「(特定行政庁となる市町村名) 日影規制」などと検索すればOKです。

 

例:大阪市の日影規制

出典:大阪市内における日影規制の概要

例えば、敷地が一種住居地域で、計画する建物が10mを超えていたとしても、行政が定めた容積率の限度が300%の場合は日影図による検討は不要。

商業地域など、高層建築物を建てても日影規制がかからない区域もあります。

 

日影規制対象外の敷地でも、周囲に対象地域があれば日影の検討が必要

計画敷地が日影規制の対象外でも、近くに別の用途地域がある場合は要注意。

敷地周囲の用途地域が日影規制の対象区域で、高さが10mを超える建築物を計画する場合は、日影図による検討が必要となります。

 

例えば、計画建物の高さが10mを超えていて、計画敷地は商業地域にあるとしましょう。

商業地域では日影規制の制限がかからないものの、敷地から少し離れた位置に住居系の用途地域など、日影規制の対象エリアが近接しているときは、日影の検討が欠かせません。

 

日影規制の対象となる建築物の高さ【ペントハウスがある場合の注意点】

日影規制の対象となる建築物の高さ(10mなど)を超えているかどうか判定する際、階段室・昇降機塔などで建築面積の1/8以内のものは5mまで不算入となります。

ただし、屋上の階段室を除いた部分が10mを超えており、日影規制の対象建築物となった場合は、日影図作成時に5m以下の屋上部分も含めなければいけません。

 

ここが非常に間違いやすいポイント。

  1. 「最高高さ」に算入されない小規模な階段室は、日影規制の対象となるかどうかの検討においては高さから除外
  2. 屋上の階段室を除いても10mを超える場合など、日影規制の対象建築物となれば、日影図は階段室を含めて描かなければならない。

 

日影規制の基準となる時間

日影規制において、隣地境界線(または道路中心線)から5m・10mの測定線に影を落としてはいけない時間が、特定行政庁ごとに定められています。

 

例えば、大阪府の基準を一部抜粋すると以下のとおり。

 

一種低層住居地域で容積率150%の敷地に、3階建て以上の建築物をつくる場合、5m測定線から10m測定線の間に4時間の影を落としてはいけないということ。

また、10m測定線を超えるエリアには、2.5時間の影を落とさないように設計する必要があります。

日影規制_不適合事例

 

日影時間を測定する水平面(測定面)

日影規制_測定面

日影となる時間を測定するときの水平面(測定面)は、実際に建物が建っている地盤面ではありません。

特定行政庁ごとに用途地域と指定容積率に応じて、以下のいずれかの「平均地盤面からの高さ」が指定されます。

  • 平均地盤面+1.5m
  • 平均地盤面+4.0m
  • 平均地盤面+6.5m

 

例:大阪市の日影規制における測定面の高さ

出典:大阪市内における日影規制の概要

規制の対象となる用途地域ごとに、4mまたは6.5mの測定面が設定されていますね。

 

日影規制における平均地盤面とは

日影規制における平均地盤面の取り方は要注意。

建築物の最高高さや軒高さを決める平均地盤面の算定方法とは、根本的に異なります。

 

日影図の作成においては、高さ10mを超える建築物のみの平均地盤面ではなく、敷地にある建物すべてを合算した平均地盤面が必要です。

日影規制_平均地盤面

 

特に、学校や工場など、ひとつの敷地に大量の建物がある場合の「増築」には注意しましょう。

増築する予定の建物が、高さ10m未満であったとしても、敷地内に日影規制の対象となる建物がある場合は、既存建物をすべて含めた平均地盤面を出し直さなければなりません。

敷地内に100棟以上あるケースもあるため、既存建物の日影規制に関するCADデータがないと設計できないことも…。

 

日影規制の緩和方法まとめ

建築基準法において、日影規制を緩和する方法が3種類あります。

  1. 隣地に道路・川・線路などの空地がある場合
  2. 敷地の地盤面が隣地よりも1m以上低い場合
  3. 特定行政庁による許可を得る場合

 

【緩和①】隣地に道路・川・線路などの空地がある場合

敷地周囲に以下の空地がある場合、空地の幅の1/2だけ測定線の範囲を緩和することができます。

  • 道路
  • 河川
  • 線路敷

さらに、道路・川・線路の幅が10mを超えるときは、敷地からみて反対側の境界線から5mの位置を敷地境界線とみなして測定線を設定することが可能。

 

【緩和②】敷地の地盤面が隣地よりも1m以上低い場合

敷地の地盤面が隣地よりも1m以上低いとき、日影規制の測定面に対する緩和があります。

  • 条件:隣地の平均地表面よりも計画敷地の地盤面が1m以上低いこと
  • 緩和内容:(隣地との高低差-1m)×1/2だけ測定面が高い位置にあるとみなす

敷地の地盤レベルが周囲と比べて低い場合、建築物の影によって迷惑をかける可能性が低いからですね。

 

当然ながら、隣地よりも計画地が高いときは、緩和がありません。

実際の平均地盤面をもとに日影規制を検討することになります。

 

【緩和③】特定行政庁による許可を得る場合

「増築・改築・移転」の際、特定行政庁が土地の状況や周囲の環境に配慮したうえで、建築審査会の同意にもとづき許可した場合は日影規制が緩和されます。

これは、建築基準法56条の2による規定。

建築基準法 第56条の2(ただし書き)

ただし、特定行政庁が土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合又は当該許可を受けた建築物を周囲の居住環境を害するおそれがないものとして政令で定める位置及び規模の範囲内において増築し、改築し、若しくは移転する場合においては、この限りでない。

建築審査会の同意を得るのは、かなりハードルが高いので、どうしても緩和をうけたい方は特定行政庁と綿密な事前協議をおこないましょう。

 

日影規制について建築基準法を読んでみる

日影規制の制限内容は、主に建築基準法56条の2に書かれています。

「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアル建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解するのがおすすめです。

(日影による中高層の建築物の高さの制限)

第56条の2

別表第四(い)欄の各項に掲げる地域又は区域の全部又は一部で地方公共団体の条例で指定する区域(以下この条において「対象区域」という。)内にある同表(ろ)欄の当該各項(四の項にあつては、同項イ又はロのうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)に掲げる建築物は、冬至日の真太陽時による午前八時から午後四時まで(道の区域内にあつては、午前九時から午後三時まで)の間において、それぞれ、同表(は)欄の各項(四の項にあつては、同項イ又はロ)に掲げる平均地盤面からの高さ(二の項及び三の項にあつては、当該各項に掲げる平均地盤面からの高さのうちから地方公共団体が当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)の水平面(対象区域外の部分、高層住居誘導地区内の部分、都市再生特別地区内の部分及び当該建築物の敷地内の部分を除く。)に、敷地境界線からの水平距離が5mを超える範囲において、同表(に)欄の(一)、(二)又は(三)の号(同表の三の項にあつては、(一)又は(二)の号)のうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、土地利用の状況等を勘案して条例で指定する号に掲げる時間以上日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならない。

中略

2 同一の敷地内に二以上の建築物がある場合においては、これらの建築物を一の建築物とみなして、前項の規定を適用する。

 

まとめ

  • 日影規制とは、建築物による影で、周囲の敷地の日照をさえぎらないための高さ制限。
  • 隣地境界線・道路中心線から「5mおよび10mの範囲に何時間の影を落とすか」を日影図で検討。
  • 日影規制の対象となる建築物は、以下の基準の組み合わせで決まる。
    • 用途地域
    • 建築物の最高高さ、軒高、階数
    • 敷地の指定容積率
  • 各市町村の日影規制の対象エリアは、インターネットで検索する。
  • 計画敷地が日影規制の対象外でも、近くに別の用途地域がある場合は要注意。
    • 敷地周囲に日影規制の対象区域があると、日影図による検討が必要となりケースあり。
  • 日影規制の対象となる建築物の高さを判定する際、階段室などで建築面積の1/8以内のものは5mまで不算入。
    • ただし、階段室を除いた部分の高さが10mを超えており、日影規制の対象となる場合は、日影図作成時に5m以下の屋上部分も含めなければいけない。
  • 隣地境界線から5m・10mの測定線に影を落としてはいけない時間が、特定行政庁ごとに定められている。
  • 日影時間を測定するときの地盤面(測定面)は、実際に建物が建っている地盤面ではない。
    • 特定行政庁が、以下のいずれかの「平均地盤面からの高さ」を指定。
      • 1.5m
      • 4.0m
      • 6.5m
    • 高さ10mを超える建築物のみの平均地盤面ではなく、敷地にある建物すべてを合算した平均地盤面が必要。
  • 建築基準法において、日影規制を緩和する方法は3種類。
    1. 隣地に道路・川・線路などの空地がある場合
    2. 敷地の地盤面が隣地よりも1m以上低い場合
    3. 特定行政庁による許可を得る場合

 

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