- 『準耐火構造』って何?
- 木造で準耐火構造を造る場合、どのように設計すればいい?
- 「準耐火構造」と「準耐火建築物」は、どう違う?
こんな疑問に答えます。
本記事では、建築基準法における『準耐火構造の設計基準』を解説。
例えば、木造で準耐火建築物を設計する場合や、防火区画の必要な建物を計画する方にとって役立つ情報です。
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住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できる限りわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
『準耐火構造』とは【準耐火性能をもつ主要構造部】
『準耐火構造』とは、火災時に建築物の延焼を抑えるため、準耐火性能のある被覆をほどこした主要構造部のことです。
✔ 事例:準耐火構造の外壁の耐火被覆
各主要構造部に求められる耐火性能をまとめると以下のとおり。
一般的な準耐火構造は、「通称:45分準耐火」と言われ、主要構造部が45分間倒壊しない仕様であることを示しています。
他にも、建築物の用途や規模によって「通称:60分準耐火」と呼ばれる基準もあります。
✔️ 60分間の準耐火性能が必要となる例
- 耐火建築物としない木造3階建て共同住宅(木三共)
- 防火区画(面積区画となる壁や床など)
準耐火性能を構成する3つの要素
建築基準法において、準耐火性能は3つの要素から成り立ちます。
- 非損傷性:変形、溶融、破壊を受けないこと
- 遮熱性:材料が燃焼する温度以上に上昇しないこと
- 遮炎性:ひび割れなどの損傷を受けないこと
上記の性能をもとに「炎にさらされた主要構造部が何時間耐えられるか」、その耐火時間に応じて準耐火構造の仕様が決まるわけですね。
準耐火構造の仕様は2種類【告示と大臣認定】
準耐火構造を設計するときの基準は、大きく分けて2種類。
- 告示仕様
- 大臣認定仕様
上記のいずれかで定められた材質・施工方法に応じて、耐火被覆の仕様を選定します。
準耐火構造の告示仕様とは
告示仕様は、建築基準法において決められた耐火被覆の中から選択。
準耐火構造の耐火性能に応じて、以下の告示が定められています。
- 45分間の準耐火性能:告示1358号
- 60分間の準耐火性能:告示195号
準耐火構造(45分準耐火性能)の仕様である告示1358号の条文を見てみましょう。
準耐火構造の構造方法を定める件
(平成12年5月24日建設省告示1358号)
建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第七号の二の規定に基づき、準耐火構造の構造方法を次のように定める。
以下省略
上記では条文の続きを省略していますが、このあと、各主要構造部の部位ごとに求められる仕様について具体的に書かれています。
準耐火構造の大臣認定仕様とは
準耐火構造の大臣認定仕様は「QF045BE-1234」のように、それぞれの主要構造部ごと、仕様ごとに異なる認定番号が定められています。
大臣認定ごとに”認定書”が発行されており、記載された仕様どおりに設計・施工しなければなりません。
準耐火構造の大臣認定は、数多くのメーカーが認定を取得しているため、多様な製品の中から選択することが可能です。
「準耐火構造」と「準耐火建築物」の違い
主要構造部がすべて『準耐火構造』であっても、「準耐火建築物」になるとは限りません。
準耐火建築物は以下の2つの基準を満たして、はじめて成立するからです。
- 主要構造部が準耐火性能をもつこと
- 延焼ラインにある開口が防火設備であること
つまり、建物が準耐火構造でも、延焼ライン内の建具が防火設備でなければ「準耐火建築物とみなされない」ということ。
「準耐火構造」は「イ準耐火建築物」のみ【ロ準耐火≠準耐火構造】
準耐火建築物は大きく分けて2種類あります。
- イ準耐火建築物(建築基準法2条九の三号イ)
- ロ準耐火建築物(建築基準法2条九の三号ロ)
この中で、主要構造部が準耐火構造なのは、通称「イ準耐火建築物」のみです。
- イ準耐火建築物:主要構造部が「準耐火構造」
- ロ準耐火建築物:主要構造部が「準耐火構造と同等の準耐火性能」をもつ
準耐火建築物の定義について、詳しくは準耐火建築物まとめ|『イ-1・イ-2・ロ-1・ロ-2』の基準という記事で解説しています。
耐火構造・準耐火構造・防火構造の関係性
準耐火構造は、主要構造部の耐火性能を示す3つの種別のひとつ。
✔️ 主要構造部の耐火基準を示す3つの構造
- 耐火構造
- 準耐火構造
- 防火構造
このうち準耐火構造は、防火構造よりも性能が高く、耐火構造よりも低くなります。
✔️ 耐火基準の性能
図解にすると以下のとおり。
例えば、防火区画を計画するときに、建築基準法によって準耐火構造が要求される壁を、耐火構造で造るのはOK。
逆に、防火構造とした場合は不適合となります。
建築基準法で準耐火構造の定義を読む
建築基準法において、準耐火構造という用語の定義は法2条に書かれています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解するのがおすすめです。
(用語の定義)
第2条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
七の二 準耐火構造
壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、準耐火性能(通常の火災による延焼を抑制するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。第九号の三ロにおいて同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
政令で定める技術的基準は、建築基準法施行令107条の2。
準耐火性能に関する技術的基準
第107条の2 法第2条第七号の二の政令で定める技術的基準は、次に掲げるものとする。
以下省略
1時間準耐火基準は、令112条に定義されています。
第112条
中略
2 前項の「1時間準耐火基準」とは、主要構造部である壁、柱、床、はり及び屋根の軒裏の構造が、次に掲げる基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであることとする。
まとめ
- 準耐火構造とは、準耐火性能のある被覆をほどこした主要構造部のこと。
- 主要構造部が45分間倒壊しない性能を持つことを示す。
- ”60分間の準耐火基準”が必要となる建築物もある。
- 耐火建築物としない木造3階建て共同住宅(通称:木三共)
- 防火区画(面積区画となる壁や床など)
- 準耐火性能は3つの要素から成り立つ。
- 非損傷性:変形、溶融、破壊を受けないこと
- 遮熱性:材料が燃焼する温度以上に上昇しないこと
- 遮炎性:ひび割れなどの損傷を受けないこと
- 準耐火構造を設計するときの基準は、大きく分けて2種類。
- 告示仕様
- 大臣認定仕様
- 告示仕様は、建築基準法において決められた耐火被覆の中から選択。
- 45分間の準耐火性能:告示1358号
- 60分間の準耐火性能:告示195号
- 準耐火構造の大臣認定仕様は、仕様ごとに認定番号が定められている。
- 主要構造部がすべて準耐火構造でも、延焼ライン内の開口部が防火設備でなければ「準耐火建築物とみなされない」。
- 主要構造部が準耐火構造なのは、通称「イ準耐火建築物」のみ。
- イ準耐火建築物:主要構造部が「準耐火構造」
- ロ準耐火建築物:主要構造部が「準耐火構造と同等の準耐火性能」をもつ
- 準耐火構造は、主要構造部の耐火性能を示す3つの種別のひとつ。
- 耐火構造
- 準耐火構造
- 防火構造