
- 居室の採光面積が1/20以上確保できない…。内装制限がかかるらしいけど区画の壁は、天井裏まで達さないといけない?
- 配管設備の処理がむずかしいから、天井裏に壁を設けたくない。
こんな疑問に答えます。
本記事では、採光窓が居室面積の1/20以上確保できない居室(=採光無窓居室)の内装制限について、「区画の壁を天井裏に設置しなければいけないか」という点を解説。
建築基準法に明確に書かれておらず、解釈の余地があるため、区画の判断に迷っている設計者にとっては有益な情報かと。
そもそも『無窓居室』の意味がよくわからないという方は、先に無窓居室とは?採光・換気・排煙・避難の4種類を整理【一覧表あり】という記事を読んでみてください。

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住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
【採光無窓の内装制限】天井裏に区画の壁は必要?不要?
ただし、指定確認検査機関によって建築基準法の解釈が異なる可能性があるので、申請先に事前相談しておくことをおすすめします。
結論は上記のとおりですが、ここからは区画壁が天井裏にも必要かどうかについて「なぜ建築基準法の解釈が分かれるのか」を詳しく解説してみます。
法35条の3(無窓の居室等の主要構造部)の条文を読んでみる
まずは、採光無窓の内装制限について書かれている建築基準法35条の3を読み込んでみましょう。
(無窓の居室等の主要構造部)
第35条の3
政令で定める窓その他の開口部を有しない居室(=採光無窓の居室)は、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない。ただし、別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供するものについては、この限りでない。
「間仕切壁が天井裏まで達しない場合は不適合」という判断がなされると、各種設備配管の貫通処理もしなければならず、施工の手間が大きく増えるので”法35条の3”の解釈はとても重要。

しかし、僕の知りうる限り、明確な法解釈が示されている書籍は無い…。
よって、本記事では法解釈を確定させることを目的とはしません。
- 区画壁が天井裏まで必要派
- 区画壁が天井裏まで不要派
上記の2つの主張について、自分なりに掘り下げて考えた結果を解説していきます。
【採光無窓の内装制限】「壁を天井裏・小屋裏まで達せしめる必要は無い」という意見
「壁を天井裏・小屋裏まで達せしめる必要は無い」派の意見の要点は以下の2つ。
- 法文に「天井裏まで達せしめなければならない」とは書かれていない
- 天井を不燃材料で造っていれば、区画は成立するため、法の主旨に反してはいない
例えば、”建築基準法施行令114条(建築物の界壁、間仕切壁及び隔壁)“においては、界壁を「小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない」と明確に記載されています。
”法35条の3”においては、このような文章はありません。
また、”逐条解説 建築基準法”という書籍によれば法35条の3の解釈について以下のように書かれています。
採光無窓の居室は火災時に外部の光から遮断されるため、逃げ遅れるケースがあることから、防火上有効な区画をすべきである。
つまり、無窓居室の壁・天井が不燃材料で区画されていれば、防火上の支障はないとも考えられるかと。

間仕切り壁を天井裏まで立ち上げて区画するのも、壁と天井で区画するのも防火性能に大きな違いはないという見解ですね。
「壁を天井裏・小屋裏まで達せしめる必要は無い」という設計者の意見
設計者の方からこんなご意見を頂いたことも。
”法35条の3”の「その居室を区画する主要構造部を~」という文章は、はじめから居室の区画が主要構造部(壁・屋根・床)によって成立している場合を想定している。
ただし、居室に天井がある場合、部屋を区画している部分は壁と天井であり、この中で主要構造部は「壁」のみとなる。
よって、「壁」だけを不燃材料で造るか、耐火構造とすればよいと読める。
念のため、天井は不燃材料で造っておくけどね。
【採光無窓の内装制限】「壁を天井裏まで達せしめる必要がある」という意見
「壁は天井裏まで達せしめる必要がある」派の意見の要点は以下の2つ。
- 「居室を区画する主要構造部を~」と法文に書かれており、天井は主要構造部ではない。つまり、”壁”と”天井”では区画は完結していない
- 主要構造部である”屋根(上階の床)”と”屋根まで到達した壁”で区画を構成しなければならない
主要構造部:
壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。
つまり、天井は主要構造部に含まれていないため、屋根もしくは上階の床まで壁を到達させなければ区画として成立しないという意見。
天井裏まで区画しておけば、天井裏に壁を設けない場合よりも防火上有効となります。どんな検査機関に出しても適合と判断されるでしょう。

確認検査機関と議論をしたくないという方は、天井裏まで壁を到達させておくのが安全。設備配管の貫通処理などの手間は増えますが…。
まとめ
- 個人的には採光無窓居室の壁を天井裏まで立ち上げる必要はないと考えている。
- ただし、指定確認検査機関によって建築基準法の解釈が異なる可能性あり。
- 採光無窓の内装制限は建築基準法35条の3による。
- 壁を天井裏・小屋裏まで達せしめる必要は無い」派の意見の要点は以下の2つ。
- 法文に「天井裏まで達せしめなければならない」とは書かれていない。
- 天井を不燃材料で造っていれば、区画は成立するため、法の主旨に反してはいない。
- 「壁は天井裏まで達せしめる必要がある」派の意見の要点は以下の2つ。
- 「居室を区画する主要構造部を~」と法文に書かれており、天井は主要構造部ではない。つまり、”壁”と”天井”では区画は完結していない。
- 主要構造部である”屋根(上階の床)”と”屋根まで到達した壁”で区画を構成しなければならない。

