- 『屋外階段』の定義って何?
- 屋外階段を計画すると、どんなメリットがある?
- 床面積や建築面積の算定基準について知りたい。
こんな疑問に答えます。
本記事では、建築基準法における『屋外階段』の設計指針について解説。
避難規定の制限が緩和されたり、床面積に算入されない等、屋内階段と比べてメリットが多数あります。
共同住宅やホテルといった特殊建築物の計画で、外部階段の設置を検討している設計者に役立つ情報です。
このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識をわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
『屋外階段』とは|建築基準法における2つの基準
『屋外階段』とは、手すりの上部が外気に開放された階段。
建築基準法において、屋外階段には2つの基準があります。
- 床面積の算定における屋外階段
- 避難規定の検討における屋外階段
ただし…、法文のなかに屋外階段という用語の定義は書かれていません。
以下の2つの書籍に具体的な基準が示されています。
- 建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例
- 防火避難規定の解説2023
2つの基準は微妙に違うので、確認検査機関で審査をする際、混乱する設計者を数多く見てきました。
ここからは、それぞれの基準を詳しく解説していきます。
床面積の算定における屋外階段
床面積の算定において、屋外階段とみなされる条件をまとめると下記のとおり。
- 外気に開放された部分の長さが、階段の周長の1/2以上
- 外気に開放された手すり上部の高さが1.1m以上、かつ、階段の天井の高さの1/2以上
「外気に開放されている部分」とは…
- 隣地境界線との空き寸法(※特定行政庁ごとに異なる)が確保されていること
- 階段に面する建築物との空き寸法(※特定行政庁ごとに異なる)が確保されていること
例えば、兵庫県神戸市であれば隣地境界線と階段の空きが1m以上必要。
階段に面して建築物がある場合の空き寸法は、2m以上と定められています。
1.床面積の算定方法は、昭和61年4月30日付建設省住指発第115号通達による。
なお、同通達の1-(4)、(5)、(6)中「外気に有効に開放されている部分」とは次の通りとする。
(1) 隣地境界線からの距離が1m(商業地域及び近隣商業地域にあっては 0.5m)以上であること。ただし、隣地が公園、水面等で、将来とも空地として担保される場合は隣地境界線からの距離は問わない。
(2) 当該部分に面する同一敷地内にある他の建築物又は当該建築物の部分からの距離が2m(商業地域及び近隣商業地域にあっては1m)以上であること。
出典:神戸市建築主事取扱要領
避難規定の検討における屋外階段
「避難規定の検討における屋外階段」は、建築基準法の下記条文に関係します。
- 令23条 階段の構造
- 令123条 屋外避難階段の定義
令23条における屋外階段の設置基準をまとめると下記のとおり。
- 階段の二面以上、かつ、周長のおおむね1/2以上が外気に開放されていること
- 手すりの上部が1.1m以上、外気に開放されていること
屋外避難階段(令123条)の場合は、「外気に開放された部分」に以下の条件が加わります。
- 隣地境界線から50㎝以上の距離を確保
- 敷地内の建築物から1m以上の距離を確保
「避難上の屋外階段」と「床面積算定上の屋外階段」を比べると、”外気に開放された部分”の隣地境界線や建築物との離隔距離が異なるわけですね。
屋外階段の建築面積【算定パターンを図解】
屋外階段を設置するときに、迷いやすいのが建築面積の算定方法。
ここからは階段の形状ごとに面積の算定パターンを紹介します。
屋外階段の建築面積 算定事例①
屋外階段の建築面積 算定事例②
屋外階段を設計するメリット
一般的に屋外階段を設計すると、屋内階段に比べて建築基準法の制限が緩和されます。
屋内階段と屋外階段で異なる建築基準法の主な条文を一覧にまとめてみました。
屋外階段 | 屋内階段 | |
床面積 | 不算入 | 算入 |
階段の幅
【例】建築基準法施行令23条 下記のいずれかの建築物
|
90㎝ | 1.2m |
特定行政庁の建築基準条例
【例】大阪府建築基準法施行条例47条 |
階段の規制が免除 | 階段の蹴上げ・踏面・有効幅の規制あり |
特定行政庁の条例のうち、屋外階段が除外された事例として、大阪府の建築基準法施行条例を見てみましょう。
(屋内階段及びその踊場の幅並びにその階段の蹴上げ及び踏面の寸法)
第47条
共同住宅、寄宿舎、下宿又は老人ホームにおける共用の屋内階段で次の表の階段の種別欄に掲げるものの階段及びその踊場の幅並びにその階段の蹴上げ及び踏面の寸法は、令第23条第1項の表の(四)の規定にかかわらず、次の表によらなければならない。
以下省略
屋外階段の高い開放性によって、隣地や道路に対して採光・通風が通るという利点から、規制の一部が緩和されるわけですね。
他にも、災害時の避難において外部が見えることによる安心感や、救助活動をスムーズに進めやすいといったメリットがあります。
屋外階段について建築基準法で読む
屋外階段の幅・け上げ・踏面の基準が書かれているのは、建築基準法施行令23条。
第三節 階段
(階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法)
第23条
階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法は、次の表によらなければならない。ただし、屋外階段の幅は、第120条又は第121条の規定による直通階段にあつては90㎝以上、その他のものにあつては60㎝以上、住宅の階段(共同住宅の共用の階段を除く。)の蹴上げは23㎝以下、踏面は15㎝以上とすることができる。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解するのがおすすめです。
まとめ
- 屋外階段とは、手すりの上部が外気に開放された階段。
- 屋外階段には2つの基準がある。
- 床面積の算定における屋外階段
- 避難規定の検討における屋外階段
- 床面積の算定において、屋外階段とみなされる条件。
- 外気に開放された部分の長さが、階段の周長の1/2以上
- 外気に開放された手すり上部の高さが1.1m以上、かつ、階段の天井の高さの1/2以上
- 「外気に開放されている部分」の基準
- 隣地境界線との空き(※特定行政庁ごとに異なる)が確保されている
- 階段に面する建築物との空き(※特定行政庁ごとに異なる)が確保されている
- 令23条における屋外階段の設置基準をまとめると下記のとおり。
- 階段の二面以上、かつ、周長のおおむね1/2以上が外気に開放されていること
- 手すりの上部が1.1m以上、外気に開放されていること
- 屋外避難階段(令123条)の場合は、「外気に開放された部分」に以下の条件が加わる。
- 隣地境界線から50㎝以上の距離を確保
- 敷地内の建築物から1m以上の距離を確保
- 屋外階段を設計すると、屋内階段に比べて建築基準法の制限が緩和される。