N値計算とは|木造の柱頭・柱脚の金物選定【告示1460号も解説】

N値計算法 構造規定
  • 木造建築物の構造設計における「N値計算法」って何?
  • 柱頭・柱脚の接合方法について知りたい。
  • 告示に定められた金物は、どのように選ぶ?

こんな疑問や要望に答えます。

本記事では、建築基準法に定められた「柱頭・柱脚の接合方法」についてわかりやすく解説。

2種類の柱頭・柱脚の設計方法について理解することができます。

  1. N値計算法
  2. 告示(平12建告第1460号第2号イ)の仕様

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柱頭・柱脚の接合方法は2種類

耐力壁や準耐力壁等が取り付いている柱の柱頭・柱脚は、発生する応力に耐えられる接合方法としなければいけません。

これは建築基準法施行令47条によるもの。

  • 柱頭(ちゅうとう):柱の頂部に設置される部材や構造を指す。梁(はり)や桁(たな)などの水平な木材と接続する部分。
  • 柱脚(ちゅうきゃく):柱の下端部分のことで、基礎や土台との接合部を指す。
  • 応力(おうりょく):建物に加わる力に対する内部の抵抗のこと。具体的には、引っ張り、圧縮、せん断、曲げなどの力に対する応力を考える。

建築基準法に定められた柱頭・柱脚の接合方法は2種類。

  1. N値計算法
  2. 告示(平12建告第1460号第2号イ)の仕様

「①N値計算法」では、計算が必要となるものの、実際の引き抜き力に見合った接合金物を選べます。

対して、「②告示の仕様」は、計算は不要。ただし、N値計算法よりも耐力にゆとりを持った接合金物を選択することになりますね。

 

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①N値計算法

N値計算法とは、木造建築物において柱頭・柱脚の接合部の仕様を選ぶ方法です。

N値:壁倍率等に応じて接合部に必要となる「引き抜きの強さ」を示す数値。

N値の計算式

「平屋建て」「2階建ての2階」「2階建ての1階で上に2階がない部分」のN値計算式

N=(A1×B1)×H1/2.7-L

  • N:N値
  • A1:検討する柱の両側の壁倍率の差(筋かいの場合は補正した数値)
  • B1:出隅の場合0.8、その他の場合0.5
  • L:出隅の場合0.4、その他の場合0.6
  • H1:当該階の横架材の上端の相互間の垂直距離(※ただし、3.2m以下の場合は2.7とする)

 

 「2階建ての1階で上に2階がある部分」のN値計算式

N=(A1×B1)×H1/2.7+(A2×B2)×H2/2.7-L

  • N:N値
  • A1:検討する柱の両側の壁倍率の差(筋かいの場合は補正した数値)
  • B1:出隅の場合0.8、その他の場合0.5
  • A2:検討する柱に連続する2階の柱の両側の壁倍率の差(筋かいの場合は補正した数値)
  • B2:2階が出隅の場合0.8、その他の場合0.5
  • L:出隅の場合1.0、その他の場合1.6
  • H1:当該階の横架材の上端の相互間の垂直距離(※ただし、3.2m以下の場合は2.7とする)
  • H2:当該階に連続する壁における2階の横架材の上端の相互間の垂直距離(※ただし、3.2m以下の場合は2.7とする)

 

N値計算法の流れ

  1. 壁倍率の差Aの算出
    • 検討する柱の両側に取り付く耐力壁の倍率の差Aを求める。
  2. 補正値の決定(筋かいの場合)
    • 筋かいの場合、以下の「筋かいの種類と位置による補正値の算出表」をもとに、①の値を補正する。
  3. 係数B、Lの決定
    • 柱が出隅かどうかを確認し、係数B、Lを決定する。
  4. N値の算出
    • ①~③を計算式に当てはめてN値を算出。一つの柱についてX・Y両方向のN値を求め、大きい方を選ぶ。
  5. 柱頭・柱脚の接合金物の選択
    • ④で求めたN値以上の許容耐力を持つ接合金物等を平12建告第1460号から選ぶ。

 

筋かいの種類と位置による補正値の算出表

柱の片側のみに筋かいがある場合

木材
15×90㎜以上、または、鉄筋
直径9㎜以上
木材
30×90㎜以上
木材
45×90㎜以上
木材
90×90㎜以上
備考
片側筋交い 0 0.5 0.5 2.0

0

片側筋交い

片側筋交い 0 -0.5 -0.5 -2.0

柱の両側に筋かいがある場合

両側筋かい 木材
15×90㎜以上、または、鉄筋
直径9㎜以上
木材
30×90㎜以上
木材
45×90㎜以上
木材
90×90㎜以上
備考
木材
15×90㎜以上、または、鉄筋
直径9㎜以上
0 0.5 0.5 2.0

0

両側筋かい

木材
30×90㎜以上
0.5 1.0 1.0 2.5
木材
45×90㎜以上
0.5 1.0 1.0 2.5
木材
90×90㎜以上
2.0 2.5 2.5 4.0
両側筋かい 木材
15×90㎜以上、または、鉄筋
直径9㎜以上
木材
30×90㎜以上
木材
45×90㎜以上
木材
90×90㎜以上
備考
木材
15×90㎜以上、または、鉄筋
直径9㎜以上
0 -0.5 -0.5 2

0

両側筋かい

木材
30×90㎜以上
0.5 0.5 0 1.5
木材
45×90㎜以上
0.5 0.5 0.5 1.5
木材
90×90㎜以上
2.0 1.5 1.5 2.0
両側筋かい 木材
15×90㎜以上
又は鉄筋
直径9㎜以上
木材
30×90㎜以上
木材
45×90㎜以上
木材
90×90㎜以上
備考
木材
15×90㎜以上、または、鉄筋
直径9㎜以上
0 0.5 0.5 2.0

0

両側筋かい

木材
30×90㎜以上
0 0.5 0.5 2.0
木材
45×90㎜以上
0 0.5 0.5 2.0
木材
90×90㎜以上
0 0.5 0.5 2.0
両側筋かい 0

出典:平12建告第1460号表3及び2020年版建築物の構造関係技術基準解説書

 

②告示(平12建告第1460号)の仕様

告示仕様では、軸組の種類や部位に応じて、「平12建告第1460号」の仕様の中から金物を選びます。

ただし、告示の仕様は、階高3.2m以下の建築物にしか適用できません。階高が3.2mを超える場合は、N値計算または構造計算が必要です。

接合方法を決める基準は以下の3つ。

  1. 柱に取り付く耐力壁・準耐力壁等の壁倍率の大きさ
    • 壁倍率が大きいほど高耐力の接合方法となる。
  2. 柱の位置する階
    • 2階よりも1階の柱の方が高耐力の接合方法となる。
  3. 出隅の柱かどうかの区別
    • 出隅の柱の方が、高耐力の接合方法となる。

出典:国交省

軸組(耐力壁・準耐力壁等)の種類と柱の位置をもとに、「平12建告第1460号」の表の中から仕様を選択。

柱頭・柱脚の接合部仕様表(平12建告第1460号)

平屋部分
または最上階 ※1
上に階のある階 ※2
出隅の柱 その他の
軸組端部
の柱
上階及び当該階の柱が共に出隅の柱の場合 上階の柱が出隅の柱で、当該階の柱が出隅の柱でない場合 上階及び当該階の柱が共に出隅の柱でない場合
上階:出隅 上階:出隅 上階:平部
下階:出隅 下階:平部 下階:平部
木ずりその他これに類するものを柱及び間柱の片面又は両面に打ち付けた壁を設けた軸組 (い) (い) (い) (い) (い)
木材(15㎜×90㎜以上)の筋かい又は鉄筋(直径9㎜以上)の筋かいを入れた軸組 (ろ) (い) (ろ) (い) (い)
木材(30㎜
×90㎜以上)の筋かいを入れた軸組
筋かいの下部が取り付く柱 (ろ) (い) (に) (ろ) (い)
その他の柱 (に) (ろ)
木材(15㎜×90㎜以上)の筋かいをたすき掛けに入れた軸組又は鉄筋(直径9㎜以上)の筋かいをたすき掛けに入れた軸組 (に) (ろ) (と) (は) (ろ)
木材(45㎜
×90㎜以上)の筋かいを入れた軸組
筋かいの下部が取り付く柱 (は) (ろ) (と) (は) (ろ)
その他の柱 (ほ)
構造用合板等を昭56建告第1100号別表第二(四)項又は(五)項に定める方法で打ち付けた壁を設けた軸組 (ほ) (ろ) (ち) (へ) (は)
木材(30㎜×90㎜以上)の筋かいをたすき掛けに入れた軸組 (と) (は) (り) (と) (に)
木材(45㎜×90㎜以上)の筋かいをたすき掛けに入れた軸組 (と) (に) (ぬ) (ち) (と)
接合具の種類 必要耐力(kN)
(い) 短ほぞ差し、かすがい打ち
又はこれらと同等以上の接合方法としたもの
0.0
(ろ) 長ほぞ差し込み栓打ち
もしくは厚さ2.3㎜のL字型の鋼板添え板を、柱及び横架材に対してそれぞれ長さ6.5㎝の太め鉄丸くぎを5本平打ちとしたもの
又はこれらと同等以上の接合方法としたもの
3.4
(は) 厚さ2.3㎜のT字型の鋼板添え板を用い、柱及び横架材にそれぞれ長さ6.5㎝の太め鉄丸くぎを5本平打ちしたもの
もしくは厚さ2.3㎜のV字型の鋼板添え板を用い、柱及び横架材にそれぞれ長さ9㎝の太め鉄丸くぎを4本平打ちとしたもの
又はこれらと同等以上の接合方法としたもの
5.1
(に) 厚さ3.2㎜の鋼板添え板に径12㎜のボルトを溶接した金物を用い、柱に対して径12㎜のボルト締め、横架材に対して厚さ4.5㎜、40㎜角の角座金を介してナット締めをしたもの
もしくは厚さ3.2㎜の鋼板添え板を用い、上下階の連続する柱に対してそれぞれ径12㎜のボルト締めとしたもの
又はこれらと同等以上の接合方法としたもの
7.5
(ほ) 厚さ3.2㎜の鋼板添え板に径12㎜のボルトを溶接した金物を用い、柱に対して径12㎜のボルト締め及び長さ50㎜、径4.5㎜のスクリュー釘打ち、横架材に対して厚さ4.5㎜、40㎜角の角座金を介してナット締めしたもの
又は厚さ3.2㎜の鋼板添え板を用い、上下階の連続する柱に対してそれぞれ径12㎜のボルト締め及び長さ50㎜、径4.5㎜のスクリュー釘打ちとしたもの
又はこれらと同等以上の接合方法としたもの
8.5
(ヘ) 厚さ3.2㎜の鋼板添え板を用い、柱に対して径12㎜のボルト2本、横架材、布基礎もしくは上下階の連続する柱に対して当該鋼板添え板に止め付けた径16㎜のボルトを介して緊結
したもの
又はこれと同等以上の接合方法としたもの
10.0
(と) 厚さ3.2㎜の鋼板添え板を用い、柱に対して径12㎜のボルト3本、横架材(土台を除く。)、布基礎もしくは上下階の連続する柱に対して当該鋼板添え板に止め付けた径16㎜のボルトを介して緊結したもの又はこれと同等以上の接合方法としたもの 15.0
(ち) 厚さ3.2㎜の鋼板添え板を用い、柱に対して径12㎜のボルト4本、横架材(土台を除く。)、布基礎もしくは上下階の連続する柱に対して当該鋼板添え板に止め付けた径16㎜のボルトを介して緊結したもの又はこれと同等以上の接合方法としたもの 20.0
(り) 厚さ3.2㎜の鋼板添え板を用い、柱に対して径12㎜のボルト5本、横架材(土台を除く。)、布基礎もしくは上下階の連続する柱に対して当該鋼板添え板に止め付けた径16㎜のボルトを介して緊結したもの又はこれと同等以上の接合方法としたもの 25.0
(ぬ) (と)に掲げる仕口を二組用いたもの 30.0

出典:平12建告第1460号表3及び2020年版建築物の構造関係技術基準解説書

 

複数の耐力壁等が取り付く場合

柱に両方向から耐力壁・準耐力壁が取り付いている場合は、それぞれの壁倍率のうち大きい方の値をもとに、金物を選びます。

出典:国交省

 

引抜耐力が10kNを超えるホールダウン金物を使用する場合

柱脚金物のうち、引抜耐力が10kNを超えるホールダウン金物を使用する場合は、基礎とアンカーボルトを直接、緊結しなければいけません。

出典:国交省

 

柱頭・柱脚の接合方法について建築基準法を読む

柱頭・柱脚の接合方法が定められているのは、建築基準法施行令47条です。

「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2025 図解建築申請法規マニュアル建築申請memo2025 といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。

(構造耐力上主要な部分である継手又は仕口)

第四十七条

構造耐力上主要な部分である継手又は仕口は、ボルト締、かすがい打、込み栓打その他の国土交通大臣が定める構造方法によりその部分の存在応力を伝えるように緊結しなければならない。この場合において、横架材の丈が大きいこと、柱と鉄骨の横架材とが剛に接合していること等により柱に構造耐力上支障のある局部応力が生ずるおそれがあるときは、当該柱を添木等によつて補強しなければならない。

2 前項の規定によるボルト締には、ボルトの径に応じ有効な大きさと厚さを有する座金を使用しなければならない。

告示仕様は、建設省告示1460号に定められています。

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第47条第1項の規定に基づき、木造の継手及び仕口の構造方法を次のように定める。

平成12年5月31日 建設省告示第1460号

建築基準法施行令(以下「令」という。)第47条に規定する木造の継手及び仕口の構造方法は、次に定めるところによらなければならない。ただし、令第82条第一号から第三号までに定める構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。

以下省略

 

まとめ

  • 耐力壁や準耐力壁等が取り付く柱の柱頭・柱脚は、応力に耐える接合方法とすること。
  • 建築基準法に定められた柱頭・柱脚の接合方法は2種類。
    • N値計算法
    • 告示(平12建告第1460号第2号イ)の仕様
  • N値計算法とは、柱頭・柱脚の接合部を「引き抜きの強さ」をもとに選ぶ方法。
    • 「平屋建て」「2階建ての2階」「2階建ての1階で上に2階がない部分」のN値計算式
      • N=(A1×B1)×H1/2.7-L
    • 「2階建ての1階で上に2階がある部分」のN値計算式
      • N=(A1×B1)×H1/2.7+(A2×B2)×H2/2.7-L
  • 告示仕様は、軸組の種類や部位に応じて、「平12建告第1460号」の仕様の中から金物を選ぶ。

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