建築基準法の読み方をわかりやすく解説|施行令と告示の関係性も図解

建築基準法まとめ
  • 建築基準法の基礎知識をわかりやすく教えてほしい。
  • 建築基準法の条文の読み方がわからない。
  • 建築基準法・施行令・告示って、どういう関係性?

こんな疑問に答えます。

この記事では、建築基準法を読む前に頭に入れておきたい法文の構成について解説します。

建築基準法をいきなり読もうとしても、挫折します。はじめに建築基準法の体系を理解していないと、どう読めば目的の情報にたどり着けるかわからないからです…。

 

まずは、「建築基準法がどのように成り立っているか」法律の全体像を見ることからスタート。

基礎知識を身につけることによって、建築基準法に関する知識の定着に大きな差がつくと思います。

確認検査機関の検査員として働いてきた経験を活かして、建築基準法の体系について、わかりやすくまとめていきます。

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建築基準法の目的とは

建築基準法は、建築物の敷地、用途、構造、設備などについて最低限の基準を定めて、私たちの生命や財産を守ることを目的としています。

建築基準法の主な特徴は4つ。

  1. 公共の福祉を推進するための規制であること
  2. 建築設計における技術的な基準を定めていること
  3. 建築物が保つべき最低基準であること
  4. 確認申請などの手続きが定められていること

 

『単体規定』と『集団規定』とは

さらに、建築基準法の技術的な基準は、大きく2つに分けられます。

  1. 単体規定:建築物における避難・構造・設備など、建物内部の安全・防火・衛生に関する基準
    • 構造
    • 防火
    • 避難
    • 設備
  2. 集団規定:都市計画の観点から、建物用途・高さ・面積などの大きさをコントロールする基準
    • 道路
    • 用途
    • 高さ制限
    • 面積制限

とくに、確認申請では、検査員が「単体規定」「集団規定」というワードを使うこともあるので、用語の意味を知っておきましょう。

 

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建築基準法の体系【法律・施行令・告示・施行規則の関係】

建築基準法は、大きく4つのパートに分かれています。

  • 建築基準法
  • 建築基準法施行令
  • 建築基準法施行規則
  • 告示

それぞれの関連性を図解すると、以下のとおり。

 

 建築基準法・施行令・告示・施行規則の関係

 

 建築基準法・施行令・告示・施行規則の概要

法律 国会 建築基準法 建築物にかかる基本的な制限
政令 内閣 建築基準法施行令 建築基準法で定めた制限を守るための技術的な基準
省令 大臣 建築基準法施行規則 確認申請など、手続きの内容
告示 大臣 国土交通省告示 施行令で定めた技術的な基準の詳しい内容

建築基準法の全体像が見えていない設計者の方が意外と多いです。構成を知っておくと法文が読みやすくなりますよ。

 

建築基準法を読む流れ

建築基準法の制限を調べるときは、「建築基準法→建築基準法施行令→告示」の順に調べるのがオススメ。

建築基準法で大まかな制限を確認し、施行令、告示へと読み進みながら、どんどん具体的な内容へとフォーカスしていく感じです。

例えば、『耐火構造の具体的な基準を調べる』ときの流れを見てみましょう。

 

STEP.1 耐火構造の用語の定義を建築基準法で調べる

「耐火構造」の定義は、建築基準法2条に明記されています。

(用語の定義)
第2条

七 耐火構造 壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能(通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。

 

STEP.2 耐火構造に求められる”技術的な基準”を施行令(政令)で調べる

(耐火性能に関する技術的基準)
第107条 法第2条第七号の政令で定める技術的基準は、次に掲げるものとする。

以下省略

 

STEP.3 耐火構造の”国土交通大臣が定めた構造方法”を告示で調べる

H12 建設省告示第 1399 号

(耐火構造の構造方法を定める件)

建築基準法第 2 条第七号の規定に基づき、耐火構造の構造方法を次のように定める。

以下省略

 

耐火構造を例に挙げましたが、準耐火構造や建ぺい率など、基本的にはどの規制も同じ流れで読むべきですね。

  • ”建築基準法”で制限される内容を確認
  • ”施行令”で求められる性能や基準を明確化
  • ”告示”で具体的な仕様を決める

上記の順に法文を読むとわかりやすいかと。

建築設計において、苦手だなと感じる基準法の規制があれば、上記の読み方を試してみてください。

 

建築基準法に関係する主な法令

建築基準法には、他の法律が関係することもあります。

例えば、消防法や都市計画法などは、建築基準法では無いものの、『建築基準関係規定』と呼ばれ、建築設計に大きく関わってきます。

 

以下に建築基準法に関わる主な法令を抜粋しました。

  • 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)
  • 消防法
  • 屋外広告物法
  • 宅地造成等規制法
  • 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律
  • 都市計画法
  • 特定都市河川浸水被害対策法

上記の法令は建築基準関係規定と呼ばれる法律の一部で、基準をクリアしないと、建築基準法に適合するとみなされません。”建築基準法の一部”といったイメージ。

 

建築確認申請においても、『建築基準関係規定』は審査の対象となります。

例えば、都市計画法29条は建築基準関係規定に当てはまるので、開発許可を受けなければならない造成行為をする場合は、開発許可書がなければ確認済証が交付されません。

確認申請を受ける前に、開発許可への事前協議が必須ということですね。

 

建築基準法施行令で『建築基準関係規定』を読んでみる

「建築基準関係規定」は、建築基準法施行令9条に記されています。

(建築基準関係規定)

第9条 法第六条第一項(法第八十七条第一項、法第八十七条の二(法第八十八条第一項及び第二項において準用する場合を含む。)並びに法第八十八条第一項及び第二項において準用する場合を含む。)の政令で定める規定は、次に掲げる法律の規定並びにこれらの規定に基づく命令及び条例の規定で建築物の敷地、構造又は建築設備に係るものとする。

一 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第九条、第九条の二、第十五条及び第十七条
二 屋外広告物法(昭和二十四年法律第百八十九号)第三条から第五条まで(広告物の表示及び広告物を掲出する物件の設置の禁止又は制限に係る部分に限る。)
三 港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第四十条第一項
四 高圧ガス保安法(昭和二十六年法律第二百四号)第二十四条
五 ガス事業法(昭和二十九年法律第五十一号)第百六十二条
六 駐車場法(昭和三十二年法律第百六号)第二十条
七 水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第十六条
八 下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第十条第一項及び第三項、第二十五条の二並びに第三十条第一項
九 宅地造成等規制法(昭和三十六年法律第百九十一号)第八条第一項及び第十二条第一項
十 流通業務市街地の整備に関する法律(昭和四十一年法律第百十号)第五条第一項
十一 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和四十二年法律第百四十九号)第三十八条の二
十二 都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第二十九条第一項及び第二項、第三十五条の二第一項、第四十一条第二項(同法第三十五条の二第四項において準用する場合を含む。)、第四十二条、第四十三条第一項、第五十三条第一項並びに同条第二項において準用する同法第五十二条の二第二項
十三 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法(昭和五十三年法律第二十六号)第五条第一項から第三項まで(同条第五項において準用する場合を含む。)
十四 自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(昭和五十五年法律第八十七号)第五条第四項
十五 浄化槽法(昭和五十八年法律第四十三号)第三条の二第一項
十六 特定都市河川浸水被害対策法(平成十五年法律第七十七号)第八条

 

まとめ

建築基準法に対して苦手意識のある設計者の方も数多くいると思いますが、法文の構成や読み方がわかれば、さほど難しくはありません。

「法律を読んでいると頭が痛くなる」「建築基準法は読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルプロのための建築法規ハンドブック 五訂版などの本で基礎知識を身につけてもOK。

図解で解説してくれているので、頭に入りやすいはず。

 

建築士として仕事をする上で、建築基準法の知識を身につけることは、避けては通れない道なので、少しずつでも基本建築関係法令集 〔法令編〕を読むクセを身につけていきましょう。