
- 居室の定義がわからない…。
- 建築基準法において、居室にはどんな制限がかかる?
- 「居室」と「室」の違いを明確にしたい。
こんな悩みに答えます。
本記事では、「建築基準法における居室とは何か」について、くわしく解説していきます。
読み終わったあとには、設計者側で自信をもって「居室」と「室」を区別できるようになるかと。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
居室とは|建築基準法における用語の定義
居室とは、入居者が継続して居住したり、作業や集会をおこなう室(部屋)のことです。
特定の人が利用するだけでなく、入れかわり立ちかわり継続的に使用されるような、会議室、待合室も居室とみなされます。
建築基準法では、居室の定義について以下のように書かれています。
用語の定義
第2条この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(中略)
四 居室:居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。
居室とみなされる室の具体例
「居室」とみなされる室の具体例を見てみましょう。
- 住宅のリビング、ダイニング、寝室、書斎
- 事務所の事務室、会議室
- 病院の病室、待合室、診察室
- 飲食店の客席、厨房
- 物販店舗の売り場、休憩室
- 工場の作業場
- ホテルのロビー
- 病院等のX線室、暗室(小規模なものを除く)
- 公衆浴場

居室という響きから、なんとなく「居室=居住する室」という先入観を持っていませんか。
ホテルのロビーや待合室など、居住空間ではない室でも長時間にわたって利用者がいる場所は、居室とみなされるので気をつけましょう。
居室として取り扱わない室(=非居室)とは
居室として取り扱わない室は、非居室(ひきょしつ)と呼ばれます。
非居室の具体的な事例は以下のとおり。
- 納戸
- トイレ
- 浴室
- 廊下
- 倉庫
- 更衣室
- 機械室
- 車庫
- 玄関ホール

どれも継続して利用者がいる室(部屋)ではありませんよね。
常に人がいる空間かどうかを判断基準として居室・非居室を判定しましょう。
ときには、建築主にどんな使い方をする部屋かをヒアリングすることも大切です。
居室 or 非居室?判断に迷うケース
居室のおおまかな定義は理解できたと思いますが、具体的な設計に入ると判断に迷う室は数多くあります。
この記事では、確認申請においてよく質問を受ける、代表的な事例を3つ紹介します。
- 浴室
- 厨房、キッチン
- X線室、レントゲン室
上記以外にも判断が難しい室用途は多数あると思いますので、迷ったら指定確認検査機関へ事前に相談することをおすすめします。
浴室
浴室は、建築物の用途・規模によって、居室か非居室かの判断が分かれます。
例えば、住宅の浴室は、もちろん「非居室」。
ですが、ホテル・銭湯などの大浴場は、不特定多数の利用者が入れかわり立ちかわり、継続的に利用されるため、「居室」にあたります。
また、老人ホームなどの児童福祉施設等における、介護を伴って入浴することを想定した、広めの浴室も「居室」とみなされます。

入居者の方が高齢であったり、健常者ではない場合、入浴に時間がかかりますし、1日に多くの方が交代で入浴する可能性があるからですね。
厨房、キッチン
飲食店の厨房は、長時間継続して、料理人が作業をする空間のため居室です。
では、住宅のキッチンはどうでしょう?
”建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例”という書籍では、以下のように書かれています。
◆居室として取り扱わない例
住宅の台所・家事室で小規模なもの(他の部屋と間仕切壁等で明確に区画されているもの)
つまり、建物の用途が住宅(戸建住宅・共同住宅・長屋)であり、小規模なキッチンであれば、居室とはみなされないということですね。

「小規模」というのが、どの程度の大きさを示すか、具体的な数字は明確にされていませんが、おおよそ10㎡を目安にすればよいかと。
あくまでもキッチンが、間仕切壁や腰壁でダイニング等と明確に区画されていることが条件です。
ダイニングキッチンと言われるような、台所と食事室が一体となった室は、「居室」に該当するので注意しましょう。
病院等のX線室、レントゲン室
確認検査機関の相談窓口では、X線室が居室にあたるかどうかの質問が結構あります。

病院のX線室、レントゲン室は、居室にあたりますか?

患者さんが入れかわりながら継続利用するため「居室」にあたります。
でも、「採光のための開口部を必要としない居室」ですね。
X線室は「居室」。
しかし、採光をとるために有効な開口部を設ける必要はありません。
建築基準法28条1項ただし書きにおける「温湿度調整を必要とする作業室その他用途上やむを得ない居室」にあてはまるからです。
”建設省住指発第153号 採光のための開口部を設けることを要しない居室について”という資料で以下のように定義されています。
1 温湿度調整を必要とする作業を行う作業室
次に掲げる居室は、法第二八条第一項ただし書に規定する「温湿度調整を必要とする作業を行う作業室」に該当するも
のとする。
(1) 大学、病院等の実験室、研究室、調剤室等温湿度調整を必要とする実験、研究、調剤等を行う居室(小学校、中学
校又は高等学校の生徒用の実験室を除く。)
(2) 手術室
(3) エックス線撮影室等精密機器による検査、治療等を行う居室
(4) 厳密な温湿度調整を要する治療室、新生児室等

採光上の開口部を設置しない場合でも、換気、排煙の検討は必要となるので要注意ですね。
まとめ
- 居室とは、入居者が継続して居住したり、作業や集会をおこなう室(部屋)のこと。
- 入れかわり立ちかわり継続的に使用されるような、会議室、待合室も居室とみなされる。
- 居室として取り扱わない室は、非居室(ひきょしつ)と呼ばれる。
- 居室か、非居室か判断がむずかしい場合は、確認検査機関に事前相談。

