- 異種用途区画って、どんな用途にも必要なんですか?
- 共同住宅に駐車場を設けると、用途が違うので異種用途区画が必要?
こんな疑問に答えます。
本記事では、「共同住宅において住宅部分と駐車場部分を区画する壁に、異種用途区画が必要か?」という点について、Q&A形式で解説。
わりとニッチな内容ですが、マンションやアパートを計画している設計者から、よく質問を受けるので記事にまとめました。
このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
【Q&A】共同住宅と駐車場は異種用途区画が必要?
区画不要と判断できる理由をここから解説していきます。
異種用途区画の概要について知りたい方は、【防火区画】異種用途区画とは?区画の壁と防火設備の基準を解説という記事を先にご確認ください。
共同住宅専用の駐車場は異種用途区画が緩和される理由
階数3以上の共同住宅を設計する場合、”住宅以外の用途”が建物内にあると、異種用途区画が原則必要です。
「駐車場(自動車車庫)」は、住宅以外の用途にあたりますよね。
ただし例外として、共同住宅内にある住宅専用の駐車場で、床面積が50㎡以下のものは異種用途区画が免除されています。
異種用途区画が不要と判断できる根拠【防火避難規定の解説による】
なぜ異種用途区画が不要と判断できるのでしょうか?
理由はシンプルで、”防火避難規定の解説2023”という書籍に、日本建築行政会議による法解釈として明記されているからです。
”防火避難規定の解説”では、以下のように書かれています。
自動車車庫が共同住宅に含有されるものとして原則異種用途とはみなされないが、一定の規模(令第112条12項)を超えるものは異種用途とみなし区画(令第112条第13項)が必要である。
ここで書かれている”一定の規模(令第112条12項)”とは、ざっくり言うと「自動車車庫で床面積50㎡を超えるもの」です。
”建築基準法施行令112条12項”の本文で見ると…
12 建築物の一部が法第24条各号のいずれかに該当する場合においては、その部分とその他の部分とを準耐火構造とした壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。
”法第24条各号のいずれかに該当する場合”とあるため、法24条の法文を確認してみます。
(木造建築物等である特殊建築物の外壁等)
第24条 (一部省略)二 自動車車庫の用途に供するもので、その用途に供する部分の床面積の合計が50㎡を超えるもの
上記ような法文の流れで、「一定規模の自動車車庫」=「床面積50㎡以下の自動車車庫」であるという解釈に至るわけですね。
建築基準法の改正により条文は変わっていますが、”異種用途区画が免除される”という取り扱い自体は、現在も有効です。
共同住宅の駐車場に異種用途区画が不要となる取り扱いは、”防火避難規定の解説”の本文ではなく、質疑応答のページに記載されています。
確認検査機関の審査担当も見落としている可能性があり、確認申請時に防火区画をおこなうように指示されるかもしれません。
そんなときは、”防火避難規定の解説2023”にもとづいて設計をしていることを検査員に伝え、合意を得てから申請を進めるようにしましょう。
「異種用途区画が不要」という回答を出すために必要な書籍
上記の回答を出すために必要となった書籍は2冊です。
どちらも建築設計や確認申請において役立つ本ですし、防火区画のある建物を計画する場合は必須とも言えます。
防火避難規定の解説
”防火避難規定の解説2023”は、建築基準法における防火避難規定のさまざまな取り扱いが記載されており、全国の建築主事も参考としている書籍です。
いわば、日本全体で認められている建築基準法解釈の共通見解ともいえます。
情報源となる書籍に必ず目をとおして、異種用途区画不要と自信を持って言い切れるようにしましょう。
基本建築関係法令集 法令編
この記事で解説した内容を”基本建築関係法令集”と照らし合わせることで、法律知識が高まっていきます。
建築基準法の本質を理解しなければ、応用が効かず、奇抜なアイデアや独創的なプランをまとめることは難しい…。
まとめ
- 駐車場が住宅専用で、床面積が50㎡以下であれば異種用途区画は不要
- 判断根拠:”防火避難規定の解説”という書籍で、日本建築行政会議による法解釈として明記あり