- 「構造設計一級建築士」って、どんな資格?
- 構造設計一級建築士の関与が必要な建築物は?
- 受験資格や定期講習制度について知りたい。
こんな疑問や要望に答えます。
本記事では、建築士法における「構造設計一級建築士」について、わかりやすく解説。
記事を読むことで、構造設計一級建築士が関わらなければいけない建築物の構造や規模を理解することができます。
このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
構造設計一級建築士とは
構造設計一級建築士は、一定規模以上の建築物の構造設計に必要な資格です。
✓「一定規模以上の建築物」の具体例
- 極めて高度な構造設計が義務付けられている高さ60mを超える建築物
- 高さが13mまたは軒の高さが9mを超える木造建築物
- 鉄骨造で4階建て以上の建築物
- 鉄筋コンクリート造で高さが20mを超える建造物
構造設計一級建築士の資格制度は、平成18年12月に改正された建築士法により創設。
一級建築士よりもさらに構造設計の専門性を高めた上位資格となっています。
構造設計一級建築士の関与が必要な建物
以下の両方に当てはまる建築物は、設計図書を作成する際に、構造設計一級建築士の関与が必要となります。
- 建築士法3条1項に規定する建築物(一級建築士でなければ設計または工事監理できない建築物)
- 建築基準法20条1項一号または二号に該当する建築物
上記に当てはまると、構造設計一級建築士が設計を行うか、設計図書の法適合確認を行わなければ、確認申請が受理されません。
建築士法3条1項に規定する建築物
「建築士法3条1項に規定する建築物」の用途・規模は以下のとおり。
- 学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場(オーデイトリアムのないものを除く)または百貨店で、延べ面積が500㎡を超えるもの
- 木造の建築物で、高さが13mまたは軒の高さが9mを超えるもの
- 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、レンガ造、コンクリートブロック造もしくは無筋コンクリート造の建築物で、延べ面積が300㎡、高さが13m又は軒の高さが9mを超えるもの
- 延べ面積が1000㎡を超え、かつ、階数が2以上の建築物
建築基準法20条1項一号または二号に掲げる建築物
「建築基準法20条1項一号または二号に掲げる建築物」を一覧表にまとめました。
建築基準法20条1項 | 施行令81条 | 施行令36条 | |||
一号 | 高さ60m超 | 1項 | 時刻歴応答解析 | 1項 | 耐久性関係規定 |
二号イ
(※二号ロにより、法20条1項一号と同等の検討でも可) 高さ60m以下 |
|
2項一号 | 高さ31m超
イ 保有水平耐力計算 ロ 限界耐力計算 |
2項一号(保有水平耐力計算):仕様規定
2項二号(限界耐力計算):耐久性等関係規定 2項三号(許容応力度等計算):仕様規定(3章1節~7節の2) |
|
2項二号 | 高さ31m以下
イ 許容応力度等計算 ロ 保有水平耐力計算、限界耐力計算 |
高度な構造計算を要する建築物であっても、「建築士法3条1項に規定する用途・規模」に当てはまらなければ構造一級の関与は不要。
たとえば、構造適判が必要となるものの、構造一級建築士の関与は不要といった建築物もあるわけですね。
構造設計一級建築士の受験資格
構造設計一級建築士の講習・修了考査を受けるためには、「一級建築士」資格と5年以上の構造に関する業務経験が必要です。
✓ 構造に関する業務経験とは
- 構造設計業務
- 構造に関する工事監理の業務
- 建築確認の構造に関する審査および補助業務
- 構造計算適合性判定および補助業務
構造設計一級建築士の定期講習制度
構造設計一級建築士は、3年ごとの定期講習が義務付けられています。
技術の進歩や法改正に対応し、建築物の安全性や品質を確保することが目的。
専門知識と技能を保つためにも講習は欠かせません。
構造設計一級建築士の定期講習は、各都道府県の建築士会や専門団体が主催しています。
詳しくは、建築技術教育普及センターのHPをご確認ください。
建築士法を読む
構造一級建築士の関与が必要な建築物について、建築士法20条の2に記載されています。
(構造設計に関する特例)
第二十条の二 構造設計一級建築士は、第三条第一項に規定する建築物のうち建築基準法第二十条第一項第一号又は第二号に掲げる建築物に該当するものの構造設計を行つた場合においては、前条第一項の規定によるほか、その構造設計図書に構造設計一級建築士である旨の表示をしなければならない。構造設計図書の一部を変更した場合も同様とする。2 構造設計一級建築士以外の一級建築士は、前項の建築物の構造設計を行つた場合においては、国土交通省令で定めるところにより、構造設計一級建築士に当該構造設計に係る建築物が建築基準法第二十条(第一項第一号又は第二号に係る部分に限る。)の規定及びこれに基づく命令の規定(以下「構造関係規定」という。)に適合するかどうかの確認を求めなければならない。構造設計図書の一部を変更した場合も同様とする。
3 構造設計一級建築士は、前項の規定により確認を求められた場合において、当該建築物が構造関係規定に適合することを確認したとき又は適合することを確認できないときは、当該構造設計図書にその旨を記載するとともに、構造設計一級建築士である旨の表示をして記名しなければならない。
4 構造設計一級建築士は、第二項の規定により確認を求めた一級建築士から請求があつたときは、構造設計一級建築士証を提示しなければならない。
建築士法「第三条第一項に規定する建築物」は以下のとおり。
(一級建築士でなければできない設計又は工事監理)
第三条 左の各号に掲げる建築物(建築基準法第八十五条第一項又は第二項に規定する応急仮設建築物を除く。以下この章中同様とする。)を新築する場合においては、一級建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。一 学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場(オーデイトリアムを有しないものを除く。)又は百貨店の用途に供する建築物で、延べ面積が五百平方メートルをこえるもの
二 木造の建築物又は建築物の部分で、高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルを超えるもの
三 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れん瓦造、コンクリートブロツク造若しくは無筋コンクリート造の建築物又は建築物の部分で、延べ面積が三百平方メートル、高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルをこえるもの
四 延べ面積が千平方メートルをこえ、且つ、階数が二以上の建築物
2 建築物を増築し、改築し、又は建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をする場合においては、当該増築、改築、修繕又は模様替に係る部分を新築するものとみなして前項の規定を適用する。
建築基準法を読む
建築士法20条の2における「建築基準法第二十条第一項第一号又は第二号に掲げる建築物」を建築基準法で見てみましょう。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
(構造耐力)
第二十条 建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める基準に適合するものでなければならない。一 高さが六十メートルを超える建築物 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。この場合において、その構造方法は、荷重及び外力によつて建築物の各部分に連続的に生ずる力及び変形を把握することその他の政令で定める基準に従つた構造計算によつて安全性が確かめられたものとして国土交通大臣の認定を受けたものであること。
二 高さが六十メートル以下の建築物のうち、第六条第一項第二号に掲げる建築物(高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルを超えるものに限る。)又は同項第三号に掲げる建築物(地階を除く階数が四以上である鉄骨造の建築物、高さが二十メートルを超える鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物その他これらの建築物に準ずるものとして政令で定める建築物に限る。) 次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。
イ 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合すること。この場合において、その構造方法は、地震力によつて建築物の地上部分の各階に生ずる水平方向の変形を把握することその他の政令で定める基準に従つた構造計算で、国土交通大臣が定めた方法によるもの又は国土交通大臣の認定を受けたプログラムによるものによつて確かめられる安全性を有すること。
ロ 前号に定める基準に適合すること。
以下省略
まとめ
- 構造設計一級建築士は、一定規模以上の建築物の構造設計に必要な資格。
- 以下の両方に当てはまる建築物は、構造設計一級建築士の関与が必要。
- 建築士法3条1項に規定する建築物(一級建築士でなければ設計または工事監理できない建築物)
- 建築基準法20条1項一号または二号の建築物
- 構造設計一級建築士の講習・修了考査を受けるためには、「一級建築士」資格と5年以上の構造に関する業務経験が必要。
- 構造設計一級建築士は、3年ごとの定期講習が必須。
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