- 防火地域って何?
- 建築物を設計するときに、どんな制限がかかる?
- 防火地域内に木造を建築することは可能?
こんな疑問に答えます。
本記事では、建築基準法における防火地域の制限について解説。
防火地域内での建築物に対する制限は、非常に厳しいもの。
本記事でまとめた内容は最低でも理解しておかなければ、確認申請で不適合と判定されるおそれがあります。
このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識をわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
防火地域とは
『防火地域』とは、主に商業地や官公庁などの重要施設が集中するエリアで、火災を高度に防止しなければならない地域です。
地域内の建築物をほぼ完全に不燃化、または耐火建築物とすることによって、火災の拡大をせき止めようとしています。
つまり、防火地域に建築物を建てる際は、厳しい防耐火の制限が適用されるということ。
防火地域内での建築基準法の制限をまとめると以下のとおり。
- 建築物の構造制限
- 屋根の制限
- 外壁開口部の制限
ここからは、テーマごとに設計基準を詳しく解説していきます。
【防火地域】建築物の構造制限
防火地域内の建築物で、耐火建築物・準耐火建築物としなければらない規模・階数は、下記の一覧表でご確認ください。
✔️ 防火地域内の構造制限
延べ面積<100㎡ | 100㎡≦延べ面積 | |
(地上の)階数≧3 | 耐火建築物等 | 耐火建築物等 |
(地上の)階数2
または 階数1 |
以下のいずれかの建築物
|
耐火建築物 |
✔️ 上記の制限から除外されるもの
- 平屋建ての附属建築物で以下の基準を満たすもの
- 延べ面積≦50㎡
- 外壁・軒裏:防火構造
- 延焼ライン内の開口部:防火設備
- 卸売市場の上屋・機械製作工場で以下に当てはまるもの
- 主要構造部:不燃材料等で造る
- 延焼ライン内の開口部:防火設備
- 高さ2m以下の門・塀
- 高さ2mを超える門・塀で以下のいずれかに当てはまるもの
- 不燃材料で造るか、または、おおわれたもの
- 道に面する部分を厚さ24㎜以上の木材で造ったもの
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防火地域内の木造3階建ては要注意【耐火建築物が必須】
一覧表を見るとわかるように、防火地域内では3階建てや床面積100㎡以上で「耐火建築物」が要求されます。
特に、木造で「耐火建築物」を設計・施工するのは、ハードルが高いので要注意。
主要構造部である壁や床に、厚み40㎜以上の石膏ボードを張るケースもあり、準耐火建築物と比べて大幅なコスト増となります。
そもそも建築基準法において、防火地域内の建物は鉄骨造やRC造を想定していたので、木造による設計は難易度が高いですね…。
【防火地域】屋根の制限
防火地域内の建築物の「屋根」は、市街地の火災にともなう火の粉で延焼を受けないよう、以下のいずれかの仕上げが必要。
- 国土交通大臣が定めた構造:H12告示第1365号
- 国土交通大臣の認定を受けたもの:DR-####
【防火地域】外壁の開口部の制限 防火設備が必須
防火地域の延焼ライン内にある「外壁の開口部(窓・扉・換気口など)」は、20分間の遮炎性能をもつ防火設備が必要です。
具体的な仕様は、以下のいずれかを選択。
- 国土交通大臣が定めた構造:告示第1360号
- 国土交通大臣の認定を受けたもの:EC-####(耐火建築物、または準耐火建築物とする場合は、EB-####)
✔️ 防火設備の大臣認定【一覧表】
防火設備の基準について詳しく知りたい方は、『防火設備』とは|告示仕様と大臣認定品の違いも解説【一覧表あり】の記事をご確認ください。
防火地域の制限について建築基準法で読む
防火地域における建築制限を調べるときは、建築基準法を以下の順で読み進めましょう。
- 建築基準法61条
- 建築基準法 施行令136条の2
- 国土交通省 告示第194号
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解するのがおすすめです。
(防火地域及び準防火地域内の建築物)
第61条
防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ2m以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。
防火地域または準防火地域における建築物の技術的基準は、令136条の2に書かれています。
(防火地域又は準防火地域内の建築物の壁、柱、床その他の部分及び防火設備の性能に関する技術的基準)
第136条の2
法第61条の政令で定める技術的基準は、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。
以下省略
国土交通大臣が定めた構造方法は、告示194号を確認しましょう。
国土交通省告示第194号
建築基準法(昭和25年法律第201号)第61条の規定に基づき、防火地域又は準防火地域内の建築物の部分及び防火設備の構造方法を定める件を次のように定める。
以下省略
まとめ
- 防火地域は、主に商業地や官公庁などの重要施設が集中するエリアで、火災を高度に防止すべき地域。
- 防火地域内における建築基準法の制限
- 建築物の構造制限
- 屋根の制限
- 外壁開口部の制限
- 耐火建築物・準耐火建築物としなければらない規模・階数は、一覧表でチェック。
- 防火地域の構造制限から除外されるもの
- 平屋建ての附属建築物で以下の基準を満たすもの
- 延べ面積≦50㎡
- 外壁・軒裏:防火構造
- 延焼ライン内の開口部:防火設備
- 卸売市場の上屋・機械製作工場で以下に当てはまるもの
- 主要構造部:不燃材料等で造る
- 延焼ライン内の開口部:防火設備
- 高さ2m以下の門・塀
- 高さ2mを超える門・塀で以下のいずれかに当てはまるもの
- 不燃材料で造るか、または、おおわれたもの
- 道に面する部分を厚さ24㎜以上の木材で造ったもの
- 平屋建ての附属建築物で以下の基準を満たすもの
- 木造で「耐火建築物」を設計・施工するのは、ハードルが高いため要注意。
- 防火地域内の建築物の「屋根」は、以下のいずれかの仕上げ。
- 国土交通大臣が定めた構造:H12告示第1365号
- 国土交通大臣の認定を受けたもの:DR-####
- 防火地域の延焼ライン内にある「外壁の開口部」は、20分間の遮炎性能をもつ防火設備が必要。
- 国土交通大臣が定めた構造:告示第1360号
- 国土交通大臣の認定を受けたもの:EC-####(耐火建築物、または準耐火建築物とする場合は、EB-####)