
- 木造建築物の柱の小径って、どの部分?
- 構造設計において、どのように太さを決める?
- 確認申請で使える表計算ツールについて知りたい。
こんな疑問や要望に答えます。
本記事では、木造の構造設計における「柱の小径」についてわかりやすく解説。
建築基準法にもとづいて柱の寸法を決める方法が理解できます。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
柱の小径とは
「柱の小径」とは、柱の断面寸法のことです。

柱が細長いと座屈の危険性が高まるので、建築基準法において、柱の小径の最低限度が定められています。
柱の小径の制限から、建物の種類によっては90mmの柱では所定の階高を確保するのがむずかしいでしょう。

一般的な住宅では、柱の小径105㎜を確保しますね。
ただし、吹抜けを設置する場合は断面を大きくするなどの工夫が必要です。
柱の小径の最低限度を求める計算式
「横架材相互の垂直距離に対する柱の小径」の計算式は以下のとおり。
- de:必要な柱の小径(mm)
- ℓ:横架材の相互間の垂直距離(mm)
- Wd:当該階が負担する単位面積あたりの固定荷重と積載荷重の和(N/m²)
- 荷重算定のイメージは壁量基準と同様
- 積雪荷重は含まない
✓ より詳細な算定式(座屈の理論式)
- Ae:荷重負担面積(m2)
- Fc:柱材の圧縮基準強度(N/mm2)
- ℓ:横架材の相互間の垂直距離(mm)
- Wd:当該階が負担する単位面積あたりの固定荷重と積載荷重の和(N/m²)
柱の小径の設計支援ツール
柱の小径を検討するにあたって、国交省は2種類の設計支援ツールを公開しています。
- 早見表
- 表計算ツール
「早見表」の活用方法
早見表の中から、横架材相互の垂直距離に対する柱の小径の割合を選びます。
- 以下の条件をもとに、計画している住宅に当てはまる早見表を選びます。
- 太陽光発電の有無
- 階高(かいだか)
- 床面積比(1F床面積に対する2F床面積の割合)
- 以下の構造部について、計画している住宅の仕様を選びます。
- 屋根
- 外壁
- 住宅の階数に応じて、柱の小径の割合を選びます。
「表計算ツール」の活用方法
表計算ツール(Excel等)上で情報を入力または選択すると、柱の小径の最小寸法や負担可能な床面積が自動計算されます。
✓ 表計算ツールによる算定方法は3種類
- 算定式と有効細長比により柱の小径を求める方法
- 樹種等を選んで算定式と有効細長比によって柱の小径を求める方法
- 柱の小径に応じて柱の負担可能面積を求める方法
①算定式と有効細長比により柱の小径を求める方法
必要事項を入力または選択すると、柱の小径の最小寸法が表示されます。
②樹種等を選んで算定式と有効細長比によって柱の小径を求める方法
柱材の種類(規格・樹種・等級等)を入力して、より実態に合った柱の小径を算出できます。
③柱の小径に応じて柱の負担可能面積を求める方法
柱の小径を設定し、その「柱が支えられる床面積(負担可能面積)」を表計算ツールで求めます。
その結果を「実際に柱が支えている床面積(負担面積)」と比較することで、柱の小径が基準に適合しているか確認する方法です。

柱の小径を大きくできない場合に、柱の本数や配置を調整して、基準への適合を検討するのに役立ちますね。
「柱の小径」について建築基準法を読む
柱の小径に関する基準は、建築基準法施行令43条に定められています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2025 図解建築申請法規マニュアル や建築申請memo2025 といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
(柱の小径)
第四十三条
構造耐力上主要な部分である柱の張り間方向及びけた行方向の小径は、それぞれの方向でその柱に接着する土台、足固め、胴差、はり、けたその他の構造耐力上主要な部分である横架材の相互間の垂直距離に対して、次の表に掲げる割合以上のものでなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。
以下省略
国土交通大臣が定める基準は、建設省告示第1349号。
建設省告示第1349号
建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第43条第1項ただし書及び第2項ただし書の規定に基づき、木造の柱の構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を次のように定める。
平成12年5月23日 建設省告示第1349号
改正 平成13年6月12日 国土交通省告示第1024号
木造の柱の構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件
建築基準法施行令(以下「令」という。)第43条第1項ただし書及び第2項ただし書に規定する木造の柱の構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準は、次のとおりとする。
一 令第3章第8節第2款に規定する荷重及び外力によって当該柱に生ずる力を計算すること。
二 前号の当該柱の断面に生ずる長期及び短期の圧縮の各応力度を令第82条第二号の表に掲げる式によって計算すること。
三 前号の規定によって計算した長期及び短期の圧縮の各応力度が、平成13年国土交通省告示第1024号第1第一号ロに定める基準に従って計算した長期に生ずる力又は短期に生ずる力に対する圧縮材の座屈の各許容応力度を超えないことを確かめること。
まとめ
- 「柱の小径」とは、柱の断面寸法を指す。
- 「横架材相互の垂直距離に対する柱の小径」の計算式
- de/ℓ=0.027+22.5・Wd/ℓ²
- 柱の小径に関する設計支援ツール
- 早見表
- 表計算ツール
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