竪穴区画①|耐火・準耐火構造で3階または地階のある建築物の区画

竪穴区画_耐火構造・準耐火構造 防火規定
  • 準耐火構造で3階に居室をつくると竪穴区画が必要?
  • 開口部に必要な“遮煙性能付きの防火設備”って何?
  • 防火区画を免除する方法があれば知りたい。

こんな疑問に答えます。

 

竪穴区画は、建築物の用途・規模に応じて3つのパターンがあります。

  1. 耐火構造、準耐火構造等で3階or地階に居室のあるもの
  2. 病院・診療所・児童福祉施設等で階数3・延べ面積<200㎡
  3. 共同住宅・ホテル・寄宿舎で階数3・延べ面積<200㎡

本記事では、①の”耐火構造・準耐火構造等で3階or地階に居室のある建築物”の竪穴区画について解説。

区画の対象となる建築物、構造、設計基準をまとめています。

 

竪穴区画の全体像が知りたい方は、竪穴区画とは|区画が必要な建築物・構造・緩和基準を総まとめという記事を先にご確認ください。

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竪穴区画①の必要な建築物

竪穴区画とは

以下のいずれかの建築物で、3階または地階に居室のあるものは、竪穴区画が必要です。

  • 主要構造部を耐火構造とした建築物
  • 主要構造部を準耐火構造とした建築物
  • 令136の2-1-ロの基準適合建築物
  • 令136の2-2-ロの基準適合建築物

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「主要構造部を準耐火構造とした建築物」≠「準耐火建築物」

「主要構造部を準耐火構造とした建築物=準耐火建築物」ではありません。

準耐火建築物は、以下の4種類。

  • 準耐火建築物(イ-1)
  • 準耐火建築物(イ-2)
  • 準耐火建築物(ロ-1)
  • 準耐火建築物(ロ-2)

このうち、“主要構造部を準耐火構造とした建築物”とみなされるのは、イ-1・イ-2です。

ロ-1・ロ-2を正確にいうと「主要構造部を準耐火構造とした建築物と同等の耐火性能を有する建築物」。

よって、ロ準耐火建築物は、”主要構造部が準耐火構造ではない”ため、区画不要となるケースがあります。

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3階・地階に居室が無ければ”竪穴区画“は不要

竪穴区画の対象となるのは「地階または3階以上の階に居室があるもの」です。

つまり、地下室や3階のある建築物でも、そこに居室がなければ竪穴区画は不要。

例えば、3階建ての事務所ビルであっても、3階は倉庫や更衣室のみで居室がない場合は対象外となりますね。

 

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竪穴区画①の構造

竪穴区画①は、吹き抜け部分を以下の構造で区画します。

  • 床:準耐火構造(または耐火構造)
  • 壁:準耐火構造(または耐火構造)
  • 開口部:遮煙性能付きの防火設備(または特定防火設備)

 

竪穴区画①の概要

対象となる建築物 区画が必要となる部分 壁の構造 床の構造 開口部の構造
  • 主要構造部を耐火構造とした建築物
  • 主要構造部を準耐火構造とした建築物
  • 令136の2-1-ロの基準適合建築物
  • 令136の2-2-ロの基準適合建築物
  • 吹き抜け
  • 階段
  • EV昇降路
  • ダクトスペース
  • メゾネット住戸
準耐火構造(または、耐火構造) 準耐火構造(または、耐火構造) 防火設備(遮煙性能付き)

  • 常時閉鎖式
  • 随時閉鎖式(煙感知器、熱煙複合式感知器連動

“階段などの吹き抜け部分”へ炎や煙が流れこまないように、準耐火構造の床・壁・防火設備(遮煙性能付き)で区画するわけですね。

 

主要構造部が耐火構造の建築物は、竪穴区画も耐火構造とする

防火区画の壁は主要構造部とみなされるため、耐火建築物の竪穴区画は、“耐火構造”で設計しなければいけません。

これは、建築基準法2条の主要構造部の定義によるもの。

五 主要構造部

壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。

“構造上重要でない間仕切り壁”は主要構造部から除かれるものの、防火区画の壁は“構造上重要な間仕切り壁”とみなされます。

よって、「防火区画を構成する間仕切り壁=主要構造部」となるわけですね。

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遮煙性能付きの防火設備とは

「遮煙性能付きの防火設備」とは、”建築基準法2条九号の二ロによる防火設備”で、“遮煙性能を持つもの”です。

①告示仕様・②大臣認定仕様の2種類あり、いずれかを選択。

  1. 告示仕様の基準:以下の両方を満たすもの
    • ”建設省告示1360号”による遮炎性能(20分間)を満たすこと
    • ”建設省告示2564号”による遮煙性能をもつこと
  2. 大臣認定仕様の基準:
    CAS-〇〇〇〇の認定を取得した建具であること

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竪穴区画①の緩和

以下のいずれかに当てはまる場合は、竪穴区画が緩和されます。

  • 令112条1項1号に定められた”建築物の用途上、竪穴区画ができない部分(劇場・映画館・集会場・体育館など)”
  • 避難階の上下階で一層のみに通じる吹き抜け部分
  • 階数3以下で床面積200㎡以内の住宅部分

 

建築物の用途上、区画できない部分【劇場・映画館・集会場・体育館など】

“床面から1.2m以上の壁・天井の仕上・下地を準不燃材料”とし、以下の用途にあてはまる場合は、竪穴区画が免除されます。

  • 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場の客席、体育館、工場その他これらに類する用途の部分(建築基準法施行令112条1項一号)
  • 倉庫、荷さばき施設(昭和44年3月3日 住指発26号)
  • 卸売市場の部分のうち、卸売場、仲買売場等の売場、買荷の保管、積込等の荷捌場の用途部分(昭和46年9月8日 住指発623号)
  • ボーリング場、屋内プール、屋内スポーツ練習場などの主たる用途部分(昭和46年12月4日 住指発905号)

 

避難階の上下階で一層のみに通じる吹き抜け部分

令112条11項ただし書きにより、以下の両方に当てはまる部分は、竪穴区画が免除されます。

  • 避難階の上下階で1層のみに通じる吹き抜け部分
  • 壁・天井の下地、および仕上げが不燃材料で造られたもの

竪穴区画_緩和

竪穴区画_緩和_NG例

 

階数3階以下で床面積200㎡以内の住宅部分

令112条11項ただし書きによる規定で、以下のすべてに当てはまる部分は、竪穴区画が免除されます。

  • 階数:3以下
  • 延べ面積:200㎡以内
  • 用途:一戸建ての住宅、長屋、共同住宅の住戸(メゾネット形式)

竪穴区画_緩和_住宅

 

竪穴区画①を建築基準法で読む

準耐火構造等の建築物にかかる竪穴区画は、建築基準法施行令112条11項に書かれています。

「建築基準法を読みたくない」という場合は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアル建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。

11 主要構造部を準耐火構造とした建築物又は第136条の2第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物であつて、地階又は3階以上の階に居室を有するものの竪穴部分(長屋又は共同住宅の住戸でその階数が2以上であるもの、吹抜きとなつている部分、階段の部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分をいう。以下この条において同じ。)については、当該竪穴部分以外の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。次項及び第13項において同じ。)と準耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第 九号の2ロに規定する防火設備で区画しなければならない。

ただし、次の各号のいずれかに該当する竪穴部分については、この限りでない。

1 避難階からその直上階又は直下階のみに通ずる吹抜きとなつている部分、階段の部分その他これらに類する部分でその壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造つたもの

2 階数が3以下で延べ面積が200平方メートル以内の1戸建ての住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸のうちその階数が3以下で、かつ、床面積の合計が200平方メートル以内であるものにおける吹抜きとなつている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分その他これらに類する部分

主要構造部が準耐火構造等の建築物にかかる竪穴区画の開口部は、以下の基準を満たすものとします。

建築基準法施行令112条

19 中略

1 中略

 常時閉鎖若しくは作動をした状態にあるか、又は随時閉鎖若しくは作動をできるものであること。

 閉鎖又は作動をするに際して、当該特定防火設備又は防火設備の周囲の人の安全を確保することができるものであること。

 居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の通行の用に供する部分に設けるものにあつては、閉鎖又は作動をした状態において避難上支障がないものであること。

2 第1項第2号、第10項若しくは前項の規定による区画に用いる特定防火設備、第10項、第11項若しくは第12項本文の規定による区画に用いる法第2条第9号の二ロに規定する防火設備、同項ただし書の規定による区画に用いる10分間防火設備又は第13項の規定による区画に用いる戸

次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの

イ 前号イからハまでに掲げる要件を満たしているものであること。

ロ 避難上及び防火上支障のない遮煙性能を有し、かつ、常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあつては、火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖又は作動をするものであること。

 

まとめ

  • 竪穴区画は、建築物の用途・規模に応じて3パターン。
    1. 耐火構造、準耐火構造等で3階or地階に居室のあるもの
    2. 病院・診療所・児童福祉施設等で階数3・延べ面積<200㎡
    3. 共同住宅・ホテル・寄宿舎で階数3・延べ面積<200㎡
  • 本記事は、”①耐火構造・準耐火構造等で3階or地階に居室のある建築物”の竪穴区画を解説。
  • 以下のいずれかの建築物で、3階または地階に居室のあるものは、竪穴区画が必要。
    • 主要構造部を耐火構造とした建築物
    • 主要構造部を準耐火構造とした建築物
    • 令136の2-1-ロの基準適合建築物
    • 令136の2-2-ロの基準適合建築物
  • 「主要構造部を準耐火構造とした建築物」≠「準耐火建築物」
  • 3階・地階に居室が無ければ”竪穴区画“は不要。
  • 竪穴区画の構造
    • 床:準耐火構造(または耐火構造)
    • 壁:準耐火構造(または耐火構造)
    • 開口部:遮煙性能付きの防火設備(または特定防火設備)
  • 防火区画の壁は、主要構造部とみなされる。
  • 竪穴区画の緩和
    • 建築物の用途上、竪穴区画ができない部分(劇場・映画館・集会場・体育館など)”
    • 上下階で一層のみに通じる吹き抜け部分
    • 階数3以下で床面積200㎡以内の住宅部分

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