避雷針の設置基準とは|避雷設備の種類・構造を解説

避雷針 建築基準法まとめ
  • 避雷針を設置するときに守るべき基準は?
  • 避雷設備が必要となるのは、どんな建物?
  • 避雷針の構造が知りたい。

こんな疑問や要望に答えます。

本記事では、「避雷針」の設置基準についてわかりやすく解説。

建築基準法において、高さ20mを超える建築物には避雷設備が必要となります。

記事を読むことで、高層建築物を設計する際に欠かせない知識が身につきます。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。

住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。

 

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避雷針とは【建築物を落雷から保護する設備】

避雷針

避雷針は、建築物を雷や落雷から保護するための仕組みです。

落雷が発生した際に、避雷針が雷を呼び込み、地面へと電流を逃がすことで建物への被害を防ぐもの。

棒状の導体であり、建物の先端部分に設置されます。

 

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避雷針が必要となる建築物

避雷設備が必要となる構造物は以下のとおり。

  • 高さ20mを超える建築物(建築基準法33条)
  • 高さ20mを超える工作物(建築基準法88条)

ちなみに、「高さ20m」の算定には、ペントハウス(階段室・昇降機塔など)も含まれます。

ペントハウスが建築面積の1/8以下で、階数や高さに算入されない部分であっても、避雷設備の要否に影響するため注意しましょう。

 

避雷設備の種類

避雷設備の基準は2種類あります。

  • 旧JIS:JIS A 4201-1992
  • 新JIS:JIS A 4201-2003

建築基準法では、旧JISと新JISのどちらも有効とされており、設計の判断で使い分けることが可能。

新JISでは、旧JISにはない「回転球体法による雷撃の影響範囲」や「超高層建築物の中層部の壁への落雷保護」等が新たに規定されています。

今回の記事では、中高層建築物でよく用いられる「旧JISによる避雷設備の設置基準」を詳しく解説します。

 

避雷針の設置基準

避雷針の設置基準(旧JIS A 4201-1992)を部位ごとに解説します。

突針部【空中に突出させた受雷部】

避雷針は、保護角60°以下で対象物の全体が保護できるよう配置すること。

避雷針 保護角

むね上げ導体【パラペット等に沿って設置した受雷部】

  1. むね上げ導体の保護角は、60°以下
  2. 保護範囲に入らない屋根部分は、むね上げ導体までの水平距離が10m以内となるように設け、屋根全体を保護すること
  3. 危険物(火薬可燃性液体・可燃性ガスなど)の貯蔵または取扱いを行う対象物に設置する避雷設備の構造
    • 受雷部の保護角は、45°以下
    • 2基以上の独立避雷針を設ける場合(平面的にみて避雷針を結ぶ中心線に対して両側30°の範囲)は、保護角60°以下
    • 独立架空線を設ける場合は、2本以上の独立架空地線ではさまれた部分の保護角は60°以下
    • ゲージを設ける場合の鋼目は、1.5m以下

避雷導線【受雷部と接地極を接続する導線】

  1. 1つの対象物について2本以上。ただし、対象物の水平投影面積が、50㎡以下のものについては1本でOK
  2. 引下げ導線または接地極板の間隔は、対象物の外周に沿って測り、原則として50mを超えないこと
    • 突角と突角との距離が50m以内の場合はその端部を結ぶ線とする
    • 突角と突角との距離が50mを超える場合の測線は、外周長が最短になるように、かつ、その外壁に沿わない部分の長さが50mを超えないこと
  3. 引下げ導線は対象物の外周にほぼ均等に、かつ、できるだけ突角部の近くに配置
  4. 引下げ導線は、対象物の外側に引き下ろし、長さが最も短くなるように設置
  5. 引下げ導線が地上から地中に入る部分は、硬質ビニール管等によって、地上2.5m以上から地下0.3m以上を保護

引き下げ(構造体代用)

鉄骨鉄筋コンクリート造および鉄筋コンクリート造の建築物において、柱および梁は2本以上の主鉄筋をもって引下げ導線に変えられる。

  1. 建築物の基礎の設置抵抗と設置極の設置抵抗の合成値は、5Ω以下
  2. 接地極は、断面積30mm²の銅線または同等以上の導線によって2箇所以上の鉄骨・鉄筋に接続

接地極【雷電流を大地へ放流する部分】

  1. 各引下げ導線に1箇所以上に接続
  2. 長さ1.5m以上、外径12mm以上の溶融亜鉛めっき銅棒、銅覆銅棒、銅棒等(厚さ2mm以上)、ステンレス鋼管(SUS304、厚さ1mm以上)、面積が片面0.35㎡以上の溶融亜鉛めっき鋼板(厚さ2mm以上)等の接地効果のある金属体。ただし、アルミニウムなど腐食しやすいものの使用は不可
  3. 地下0.5m以上の深さに埋設
  4. 避雷設備の総合接地抵抗は、10Ω以下
  5. 各引下げ導線の単独接地抵抗は、50Ω以下
  6. 1本の引下げ導線に2個以上の接地極を並列に接続する場合は、その間隔は原則として2m以上。地下0.5m以上の深さのところで断面積22mm²以上の裸導線で連接接続すること。ただし、連接銅線が著しい機械的衝撃を受けるおそれがないように接地した場合、0.5m未満でもよい。
  7. 接地極または埋設地線は、ガス管から1.5m以上離すこと

 

避雷設備に関する用語

避雷設備に関する用語の意味をまとめました。

用語 意味
被保護物 雷の影響に対して保護しようとする建築物等の部分または範囲。
受雷部 雷撃を受けとめるために使用する金属体。突針部・むね上げ導体・ケージの網目状導体のほか、直接雷撃を受けとめるために利用される手すり・フェンス・ 水そうなど建築物に附属した金属体も含まれる。
雷保護システム 雷の影響に対して被保護物を保護するために使用するシステムの全体。
外部雷保護システム 受雷部システム、引下げ導線システム、接地システムからなるシステム。
受雷部システム 雷撃(落雷における1回の放電)を受けるための部分。
突針 空中に突出させた受雷部。
保護範囲 避雷設備の設置によって、雷の直撃の危険から保護される避雷設備の周辺の大地及び空間。
保護角 受雷部の上端から、その上端を通る鉛直線に対して保護範囲を見込む角度。
むね上げ導体 むね、パラペット、屋根などの上に沿って設置した受雷部。
避雷導線 雷電流を流すために、受雷部と接地極とを接続する導線。
引き下げ導線 雷電流を受雷部システムから接地システムへ流すための部分。避雷導線の一部で、被保護物の頂部から接地極までの間の鉛直な部分。
接地システム 雷電流を大地へ流し、拡散させるための部分。避雷導線と大地とを電気的に接続するために、地中に埋設した導体。
接地極 大地と直接電気的に接触し、雷電流を大地へ放流させるための接地システムの部分又はその集合。
環状接地極 大地面又は大地面下に建築物等を取り巻き、閉ループを構成する接地極。
基礎接地極 建築物等の鉄骨または鉄筋コンクリート基礎によって構成する接地極。
金属製工作物 被保護物内において、広い範囲にわたっている金属製部分で配管構造物、階段、エレベーターのガイドレール、換気用等のダクト、相互に接続した鉄筋等のように雷電流の経路を構成することができるもの。
安全離隔距離 危険な火花放電を発生しない被保護物内の2導電性部分間の最小距離。
保護レベル 雷保護システムを効率に応じて分類する用語。雷の影響から被保護物を保護する確率を表す。

 

避雷針について建築基準法を読む

建築基準法において、避雷針の基準は「法33条」および「令129条の14~15」に書かれています。

「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアル建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。

(避雷設備)
第三十三条

高さ二十メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。

第三節 避雷設備

(設置)
第百二十九条の十四

法第三十三条の規定による避雷設備は、建築物の高さ二十メートルをこえる部分を雷撃から保護するように設けなければならない。

(構造)
第百二十九条の十五

前条の避雷設備の構造は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。

一 雷撃によつて生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。

二 避雷設備の雨水等により腐食のおそれのある部分にあつては、腐食しにくい材料を用いるか、又は有効な腐食防止のための措置を講じたものであること。

避雷設備の構造方法は、建設省告示第1425号に記載。

建設省告示第1425号

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の15第一号の規定に基づき、雷撃によって生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができる避雷設備の構造方法を次のように定める。

雷撃によって生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができる避雷設備の構造方法を定める件

雷撃によって生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができる避雷設備の構造方法は、日本産業規格A4201(建築物等の雷保護)-2003に規定する外部雷保護システムに適合する構造とすることとする。

 

まとめ

  • 避雷針は、建築物を雷や落雷から保護するための仕組み。
  • 避雷設備が必要となる構造物は以下のとおり。
    • 高さ20mを超える建築物(建築基準法33条)
    • 高さ20mを超える工作物(建築基準法88条)
  • 避雷針の設置基準(旧JIS A 4201-1992)における構成部位は以下のとおり。
    • 突針部
    • むね上げ導体
    • 避雷導線
    • 引き下げ(構造体代用)
    • 接地極

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