- 平均地盤面って何?
- どうやって算定する?
- バルコニーや庇がある建物での計算方法が知りたい。
こんな悩みに答えます。
本記事では、建築基準法における地盤面の算定方法について詳しく解説。
平均地盤面は“建築物の高さ”や“軒の高さ”に影響を与えるため、正しく求めなければ設計ミスに直結します。
特に起伏がはげしい地域で建築計画する方にとって欠かせない情報です。
このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築基準法の知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
平均地盤面とは
平均地盤面とは、建築物が傾斜のある地面に接するとき、高低差の平均をわり出して求める仮想の水平面です。
ただし、建物に接する地面の「最も低い位置」と「最も高い位置」の差が3mを超えるときは、高低差3m以内ごとに平均地盤面を求めなければなりません。
これは、“建築基準法2条 地盤面”の定義によるもの。
(面積、高さ等の算定方法)
第二条 次の各号に掲げる面積、高さ及び階数の算定方法は、それぞれ当該各号に定めるところによる。2 前項第二号、第六号又は第七号の「地盤面」とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい、その接する位置の高低差が三メートルを超える場合においては、その高低差三メートル以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう。
つまり、高低差が3mを超えると、一つの建築物に対して地盤面が2つ以上あることに。
平均地盤面の算定方法
★平均地盤面の計算式
高低差が3mを超える場合は、平均地盤面を複数とることになります。
地面のレベル差が3m以内となるように、エリアを分けるイメージ。
下図のように複数の平均地盤面を描き、それぞれの地表面から建築物の高さを求めます。
特定行政庁が地盤の算定位置を指定するケース
建築基準法における“建築物が周囲に接する部分”の解釈は、特定行政庁ごとにばらつきがあります。
特に、建築物の以下の部分で、判断が分かれやすいですね。
- バルコニー
- 屋外廊下
- ドライエリア
- キャンティレバー
平均地盤の算定に不安がある場合は、特定行政庁の法解釈をインターネットで調べるか、確認検査機関に相談しましょう。
この記事では、大阪府と兵庫県神戸市の事例を紹介します。
大阪府の事例
大阪府では、下図のような基準を設けています。
4−42 建築物が周囲の地面と接する位置の取扱い
Q.下図において、建築物が周囲の地面に接する位置はどこか。
A.
- バルコニー、開放廊下 a 点。ただし、1 階の当該部分が地面に近接している場合については、手すり壁等の位置で「建築物が周囲の地盤と接する位置」とみなす。
- ひさし、a 点。
- キャンティレバー、a 点。
上部外壁の位置で「建築物が周囲の地盤と接する位置」とみなす。- 屋外階段、a 点。
支柱とはねだし部分で造られている屋外階段等は外壁の位置を「建築物が周囲の地盤と接する位置」とみなす。
上記以外は階段の外周に設けられた柱又は各階に連続して囲まれた手すり壁等の位置を「建築物が周囲の地盤と接する位置」とみなす。- ①原則として W < 2m の場合、a 点。②原則として W ≧ 2m の場合、b 点。
- a点。
兵庫県神戸市の事例
兵庫県神戸市では、建築物周囲500mmの範囲内で最も低い位置が、建築物の接する地盤高さとみなされます。
1.敷地が前面道路や隣地より高い場合
当該敷地が既存宅地で前面道路又は隣接する地面が当該敷地より低い場合で、前面道路又は隣接する地面の擁壁等と当該建築物の外壁面との水平距離が50cm(地上の階数が5以上の建築物にあっては 200cm)未満の部分は前面道路又は隣接する地面の高さで地盤面を算定する。
出典:神戸市
例えば、隣地の地盤が低く、建築物が近接している場合、平均地盤面が急激に下がることもあり得ます。
建築基準法で平均地盤面が関係する条文【一覧】
建築基準法において、高さの基準が平均地盤面となる条文を一覧表にまとめました。
内容 | 条項 |
避雷針の設置義務 | 法33条 |
一種・二種低層住居専用地域内の高さの限度 | 法55条 |
隣地斜線制限 | 法56条1項二号 |
北側斜線制限 | 法56条1項三号 |
日影規制の適否判定 | 法56条の2 |
特例容積率適用地区 | 法57条の4 |
高度地区 | 法58条 |
総合設計制度 | 法59条の2 |
特定用途誘導地区 | 法60条の3 |
平均地盤面に関するQ&A
平均地盤面に関して、よくある質問に答えます。
- 庇がある建物は、どのように平均地盤面を計算する?
- ポーチは、平均地盤面の算定に関係する?
- 日影規制の平均地盤面は、どのように求める?
- 建物の接する最も低い位置を平均地盤面とみなす不利側検討はOK?
- 平均地盤面の計算で、周長は壁芯でとる?壁面でとる?
庇がある建築物の平均地盤面
ポーチ
日影規制
詳しくは、『日影規制』とは|建築基準法による制限を図解【緩和方法も解説】の記事をご確認ください。
地盤面の不利側検討について
地面のなかで最も低い位置を(仮想の)地盤面にすると、建築物の最高高さや軒高が上がるため、建築基準法による制限は厳しくなります。
例えば、高さ制限や構造に関する規定が代表的ですね。
「建築基準法への適合を確認するためなら、平均地盤よりも低いレベルを設定すればよい」というのが見解。
ただし、異なる意見の方もいるかもしれません。
確認申請を出す場合は、指定機関に事前に相談しておくことをおすすめします。
平均地盤面の計算における周長のとり方
ただし、書籍”建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例”によれば、壁の中心線で求めることが不合理となる場合は、外壁面で算定してもよいとされています。
よって、実際に地面と接する壁面で算定したとしても支障ありません。
まとめ
- 平均地盤面とは、建築物が傾斜のある地面に接するとき、高低差の平均をわり出して求める仮想の水平面。
- 建物に接する地面の「最も低い位置」と「最も高い位置」の差が3mを超えるときは、高低差3m以内ごとに平均地盤面を求める。
- 平均地盤面の計算式
- 基準面から平均地盤面までの高さ=基準面から上の見付け面積÷建築物の周長
- 建築基準法における“建築物が周囲に接する部分”の解釈は、特定行政庁ごとに異なる。