- 延べ面積の計算方法がわからない。
- 面積の取り方が正しいか、設計していて不安になる…。
- 廊下やバルコニーなど、部分ごとの算定パターンが知りたい。
こんな疑問に答えます。
本記事では、延べ面積の計算において、ミスが起きやすい具体的な事例をまとめています。
✔️ 記事で紹介する延べ面積の計算事例
- バルコニー
- 開放性の高い廊下
- 屋外階段
- ピロティ
- ポーチ
- 小屋裏物置、ロフト、床下収納
- 出窓
延べ面積は、容積率をはじめとした、様々な法規制に影響する重要な数値です。
計画の大幅な修正をせまられるケースもあるので、算定ミスは絶対に避けたいところ。
この記事を読むことで、”延べ面積の計算間違い”や”確認申請での訂正”が着実に減らせると思います。
このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識をわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
延べ面積の計算パターン【建築物の部位別に具体例で解説】
延べ面積は、建築物全体の床面積を合計したもの。
居室・廊下・階段など、建築物のパーツごとに算定した床面積の合計とも言えます。
ここでは、建築物の部位別の計算パターンを解説します。
✔️ 延べ面積の算定でミスが起こりやすい部分
- バルコニー
- 開放性の高い廊下
- 屋外階段
- ピロティ
- ポーチ
- 小屋裏物置、ロフト、床下収納
- 出窓
確認検査機関で審査をしていた頃、とくにミスの多かった事例をピックアップしました。
バルコニー
屋根のあるバルコニーで、以下の基準を満たす場合、奥行2mまでは床面積に不算入となります。
- 手すり上部の高さ:1.1m以上、かつ天井高さの1/2以上
- 隣地境界線との空き:特定行政庁ごとに定められた距離以上
バルコニー床面積の計算手順は、『床面積』とは|計算方法・用語の定義を解説【不算入の事例も紹介】の記事で、フローチャートを用いて解説しています。
開放性の高い(吹きさらし)廊下
開放性の高い廊下(吹きさらし廊下)で、奥行2mまでは延べ面積に不算入。
手すりのみで壁のない廊下は、屋外空間とみなされるわけですね。
✔️ 延べ面積に含まれない開放廊下の基準
- 開放された部分の高さ:1.1m以上、かつ天井高さの1/2以上
- 隣地境界線との空き:特定行政庁ごとに定められた距離以上
隣地境界線との空き寸法は、特定行政庁ごとに異なります。
以下のいずれかの方法で調べましょう。
- インターネットで検索する
- 書籍「プロのための 主要都市建築法規取扱基準 四訂版」で読む
- 特定行政庁や確認検査機関に電話・メールで問い合わせる
吹きさらし廊下が道路・水路などに面している場合
吹きさらし廊下が、道路や水路に面しているときは、”道路・水面の反対側の境界線”までを必要な離隔とみなすことが可能。
例えば、敷地境界との空きが1m以上必要とされる兵庫県で考えてみましょう。
吹きさらしの廊下が水路に面していて、「屋根の先端から水路までの距離+水路幅≧1m」であれば床面積に不算入となりますね。
屋外階段
以下の基準を満たした屋外階段は、延べ面積に不算入。
- 外気に開放された部分の長さが、階段の周長の1/2以上
- 外気に開放された手すり上部の高さが1.1m以上、かつ、階段の天井の高さの1/2以上
たとえ吹きさらしの階段だとしても、上記の開放性の基準を満たしていない場合は、延べ面積に入ります。
ピロティ
ピロティと呼ばれる開放性の高い空間は、延べ面積に算入されません。
✔️ 床面積に含まれないピロティの基準
- 屋内的な用途がないこと
- 外気に開放されていること
駐車スペースや作業スペースとして利用する場合は、開放された空間であっても、ピロティとはみなされません。
人の通行のみに利用する部分に限り、延べ面積に不算入となるわけですね。
ポーチ
通路として利用するポーチ部分は、延べ面積から除かれます。
✔️ 延べ面積に含まれないポーチの条件
屋内的用途とは、物を置いたり、作業場に利用したりと、目的をもって作られた内部空間を指します。
たとえ玄関ポーチの一部でも、人の通行しないエリアは、駐車スペース等で利用される可能性もあるため延べ面積に含まれます。
小屋裏物置・ロフト・床下収納
以下の基準を満たす小屋裏物置・ロフト・床下収納は、延べ面積に算入されません。
- 小屋裏部分、天井裏部分などの余剰空間を利用して設けたもの
- 物置の水平投影面積が、出し入れ口がある階の床面積の1/2未満
- 物置の最高の内法高さ:1.4m以下
- 物置の直下の天井高さ:2.1m以上
上図において、以下の計算式を満たすものは小屋裏物置とみなされる。
(a1+b1)<(S1×1/2)
(c2+d2)<(S2×1/2)
(b1+c2)<(S0×1/2)
- S1:1階床面積
- S2:2階床面積
- S0:S1とS2の小さい方の床面積
- a1:1階床下物置面積
- b1:1階天井裏物置面積
- c2:2階床下物置面積
- d2:物置面積
逆に言えば、上記のいずれかを満たしていない小屋裏収納は、階数にも入り、延べ面積にも含まれるということ。
この記事では、全国的な基準の一つを紹介しましたが、小屋裏物置等とみなされる条件は、特定行政庁ごとに異なります。
建築する市町村ごとの基準をインターネットで「〇〇(特定行政庁名) 小屋裏物置」と検索するか、「書籍:プロのための 主要都市建築法規取扱基準 四訂版」でご確認ください。
出窓
以下の基準を満たす出窓は、延べ面積に不算入です。
- 下端の床面からの高さが、30㎝以上
- 周囲の外壁面からの水平距離が50㎝以上突き出ていないこと
- 見付け面積の1/2以上が窓であること
まとめ
- 屋根のあるバルコニーで、以下の基準を満たすものは、奥行2mまでは床面積に不算入。
- 手すり上部の高さ:1.1m以上、かつ天井高さの1/2以上
- 隣地境界線との空き:特定行政庁ごとに定められた距離以上
- 延べ面積に含まれない開放廊下の基準
- 開放された部分の高さ:1.1m以上、かつ天井高さの1/2以上
- 隣地境界線との空き:特定行政庁ごとに定められた距離以上
- 以下の基準を満たした屋外階段は、延べ面積に不算入。
- 外気に開放された部分の長さ:階段の周長の1/2以上
- 外気に開放された手すり上部の高さ:1.1m以上、かつ、天井の高さの1/2以上
- 床面積に含まれないピロティの基準
- 屋内的な用途がないこと
- 外気に開放されていること
- 延べ面積に含まれないポーチの条件
- 屋内的な用途として利用しないこと
- 以下の基準を満たす小屋裏物置・ロフト・床下収納は、延べ面積に不算入。
- 小屋裏部分、天井裏部分等の余剰空間を利用して設けたもの
- 物置の水平投影面積の合計が、出し入れ口がある階の床面積の1/2 未満
- 物置の最高の内法高さ:1.4m 以下
- 物置の直下の天井高さ:2.1m以上
- 以下の基準を満たす出窓は、延べ面積に不算入。
- 下端の床面からの高さが、30㎝以上
- 周囲の外壁面からの水平距離が50㎝以上突き出ていないこと
- 見付け面積の1/2以上が窓であること