
- 階段の寸法について、法律で定められた基準が知りたい。
- 有効幅・蹴上げ・踏面の制限について具体的な数値はある?
- 階段の寸法はどこを測ればいい?
こんな疑問に答えます。
本記事では、建築基準法における階段の基準(有効幅・蹴上げ・踏面)について、図をまじえて解説。
すべての階段に建築基準法における制限はかかるので、住宅や特殊建築物など計画する建物用途を問わず、幅広い設計者の方に役立つ情報かと。

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1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
階段寸法の基準【建築基準法|施行令23条】
建築物に設けられる『階段』の寸法は、建築基準法において限度が定められています。
✔ 基準が定められている階段の部位
- 内法幅
- 蹴上げ
- 踏面
- 踊り場
建築基準法における階段の寸法に関する最低限度を一覧表にまとめると以下のとおり。
✔ 建築基準法における階段の基準【一覧表】
階段の種類 | 階段・ 踊場の幅 (㎝) |
蹴上げ (㎝) |
踏面 (㎝) |
踊場位置(㎝) | ||
小学校の児童用 | 140以上 | 16以下 | 26以上 | 高さ3m以内ごと | ||
中学校、高等学校、中等教育学校の生徒用 | 140以上 | 18以下 | 26以上 | |||
劇場、映画館、公会堂、集会場等の客用 | ||||||
物販店舗で床面積の合計が1,500㎡を超える客用 | ||||||
直上階の居室の床面積の合計が200㎡を超える地上階用のもの | 120以上 | 20以下 | 24以上 | 高さ4m以内ごと | ||
居室の床面積の合計が100㎡を超える地階、地下工作物内のもの | ||||||
住宅(共同住宅の共用階段を除く。) | 75以上 | 23以下 | 15以上 | |||
1~4以外の階段 | 75以上 | 22以下 | 21以上 | |||
屋外階段 | 直通階段(令120・121条) | 90以上(4・5に該当すれば75で可) | けあげ・踏面・踊場の位置はそれぞれ1~5の数値による。 | |||
その他の階段 | 60以上 |
補足:階段の寸法は「階の面積」ではなく「居室の面積」で決まる
上記表の項目③について補足しておきます。
階段の寸法は、”階の床面積”ではなく「居室の床面積」で決まります。
つまり、各階の床面積が200㎡を超えていたとしても、その階における居室の床面積が200㎡未満であれば、表③には該当しないということ。
建築基準法における「居室」と「室」の違いは、『居室』とは|建築基準法における用語の定義【建築設計の必須知識】という記事で解説しています。
住宅の階段寸法について詳しく解説
上記の表における項目④を見てもらえればわかりますが、住宅の階段は「け上げ」と「踏面」の規定が、ほかの建物用途に比べて緩くなっています。
階段の種類 | 階段・踊場の幅 (㎝) |
蹴上げ (㎝) |
踏面 (㎝) |
|
住宅 | 75以上 | 23以下 | 15以上 |
ここでいう「住宅の階段」に当てはまるものは以下のとおり。
- 戸建住宅の階段
- 長屋の階段
- 共同住宅のメゾネット住戸内にある階段

共同住宅(マンション・アパートなど)における”共用部の階段”は対象となりません。
階段の幅・けあげ・踏面の測り方
階段の『幅・蹴上げ・踏面』の寸法を測る位置について、図をまじえて解説します。
階段の有効幅について、手すりの出が10㎝以下であれば、「手すりが存在しないもの」として算定が可能。
✔ 階段の幅の算定位置(手すりの出が10㎝以下の場合)
✔ 階段の幅の算定位置(手すりの出が10㎝を超える場合)
階段の「けあげ」と「踏面」を測る位置は下図のとおりです。
階段の『手すり』に関する建築基準法の制限まとめ
階段の手すりについて、建築基準法における規定を一覧表にまとめると以下のとおり。
✔ 手すりの基準【一覧表】
手すりの規定 |
|
手すりの緩和 |
|
階段の手すり・側壁は、高さ1m以下の部分では免除されています。
階段には、必ず手すりと側壁(そくへき)を設置するのが原則。
ですが、高さ1m以下の階段であれば、落下したときの危険性が少ないため、手すりや側壁がなくても建築基準法に適合とみなされるわけですね。

実際の設計では子どもが落ちると危ないので、側壁はあった方がよいと思います。
屋外階段の幅について解説
直通階段を兼ねる屋外階段は、すべて有効幅90㎝以上必要となるわけではありません。
上記表における①~③に当てはまらない場合は、屋外階段の幅を75㎝で設計することも可能。
例えば、階数3の事務所ビルで屋外階段が直通階段(令120条)であるとしても、各階ごとの居室面積が200㎡以下であれば、幅90㎝未満として設計することができます。

屋外の直通階段は、建物の規模・用途によっては、幅90㎝未満で設計できることを覚えておきましょう。
上記の法解釈は、防火避難規定の解説2023に詳しく書かれているので、実施設計で階段の幅を考えるときには必ず参照してください。
市町村の条例による階段寸法の制限
階段の寸法の制限は、建築基準法だけではありません。
市町村の条例により、特殊建築物の用途に応じて階段の基準が定められているケースもあります。
例えば、大阪府の建築基準条例において、共同住宅の階段にかかる規定を抜粋すると以下のとおり。
第47条 ( 屋内階段及びその踊場の幅並びにその階段のけあげ及び踏面の寸法 )
共同住宅、寄宿舎、下宿又は老人ホームにおける共用の屋内階段で次の表の階段の種別欄に掲げるものの階段及びその踊場の幅並びにその階段のけあげ及び踏面の寸法は、令第23条第1項の表の (4) の規定にかかわらず、次の表によらなければならない。
中略

居室の面積が100㎡以下であっても有効幅90㎝以上の階段が必要とされており、建築基準法よりも厳しい制限が課せられています。
よくある質問:「手すりの高さ」に制限はある?【ありません】
建築基準法には「階段に手すりが必要である」ということは規定されています。
ですが、「階段の手すりを床から〇㎝の位置に設けなければいけない」などの制限はありません。

結論、「階段には手すりがあり、握りやすい高さに設置されていればOK」ということ。
階段にかかる制限を建築基準法で読む
建築基準法において、階段の寸法の基準は施行令23条に書かれています。
(階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法)
第23条
階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法は、次の表によらなければならない。ただし、屋外階段の幅は、第120条又は第121条の規定による直通階段にあつては90㎝以上、その他のものにあつては60㎝以上、住宅の階段(共同住宅の共用の階段を除く。)の蹴上げは23㎝以下、踏面は15㎝以上とすることができる。
以下省略
また、階段の踊り場は施行令24条。
(踊場の位置及び踏幅)
第24条
前条第1項の表の(一)又は(二)に該当する階段でその高さが3mをこえるものにあつては高さ3m以内ごとに、その他の階段でその高さが4mをこえるものにあつては高さ4m以内ごとに踊場を設けなければならない。
2 前項の規定によつて設ける直階段の踊場の踏幅は、1.2m以上としなければならない。
さらに、階段の手すりに関して、施行令25条を参照します。
(階段等の手すり等)
第25条階段には、手すりを設けなければならない。
2 階段及びその踊場の両側(手すりが設けられた側を除く。)には、側壁又はこれに代わるものを設けなければならない。
3 階段の幅が3mをこえる場合においては、中間に手すりを設けなければならない。ただし、けあげが15㎝以下で、かつ、踏面が30㎝以上のものにあつては、この限りでない。
4 前3項の規定は、高さ1m以下の階段の部分には、適用しない。
まとめ
- 建築基準法における階段寸法の基準は、一覧表でチェック。
- 階段の寸法は、”階の床面積”ではなく「居室の床面積」で決まる。
- 住宅の階段は「け上げ」と「踏面」の制限が他用途に比べて緩い。
- 「住宅の階段」に当てはまるものは以下のとおり。
- 戸建住宅の階段
- 長屋の階段
- 共同住宅のメゾネット住戸内にある階段
- 手すりに関する基準
- 階段は手すりが必須。
- 階段・踊り場の両側には側壁などが必須。
- 階段の幅が3mを超えるときは、中間に手すりが必須。
- 手すりの緩和規定
- 高さ1m以下の階段には手すりの規定は適用しない。
- 以下のどちらにも当てはまる幅3mの階段は、中間の手すりが免除。
- けあげ≦15㎝
- 踏面≧30㎝
- 手すりの突出した部分は、10㎝を限度にないものとして階段幅を算定。
- 市町村の条例で、階段の基準が定められているケースもある。
✔ 建築基準法における階段の基準【一覧表】

