非常用進入口とは|建築基準法による設置基準・構造・免除方法を解説

避難規定
  • 『非常用進入口』は、どんな建築物に必要?
  • 建築基準法における非常用進入口の基準が知りたい。
  • 進入口の設置を免除する方法はある?

こんな疑問に答えます。

本記事では、建築基準法における『非常用進入口ひじょうようしんにゅうこう』の規定について解説。

3階建て以上の建物を計画するときは、「非常用進入口」または、「非常用進入口に代わる窓」の設置が必要です。

戸建住宅でも階数3以上になると、進入口の設置が必須となるので、さまざまな建物の設計で役立つ情報かと。

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。

1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。

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非常用進入口とは

非常用進入口

出典:高知市HP

『非常用進入口』とは、火事などの災害時に、外部から消防隊が進入するための開口部やバルコニー(足場)などの総称そうしょう

建築基準法では、施行令126条の6に定められています。

内部に入るための開口部だけでなく、足場となるバルコニーや赤色灯などの基準を満たさなければ、建築基準法における「非常用進入口」とはみなされません。

 

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非常用進入口が必要な建築物

建築基準法において、非常用進入口の設置が必要となる建築物は以下のとおり。

非常用進入口が必要な建築物

(地上から)3階以上の建築物

つまり、どのような用途であっても、3階以上の各階には進入口が欠かせないということ。

3階以上の階に居室がなくても、非常用進入口は免除されません。

もちろん1・2階には非常用進入口は不要です。

 

非常用進入口を設置する部分

非常用進入口を設置すべき建築物の部分は以下のとおり。

 

✔️ 非常用進入口が必要となる建築物の部分

  • 道路、または幅4mの通路に面する部分
  • 3階以上の各階、かつ高さ31m以下の部分

はしご車が到着できて、消防活動が可能となるよう、道路や幅員4mの通路に沿って非常用進入口が必要となります。

 

非常用進入口は道に沿って40m以内ごとに設置

非常用進入口_設置範囲

 

建築基準法における非常用進入口の構造

非常用進入口を設計するにあたり、満たすべき基準を一覧表にまとめました。

 

非常用進入口の基準【一覧表】

非常用進入口の構造 基準
進入口の間隔 40m以下
進入口の大きさ 幅75㎝以上、高さ120㎝以上
進入口の高さ 床面から進入口下端まで80㎝以下
バルコニー 奥行1m以上、長さ4m以上
赤色灯 常時点灯、かつ30分間点灯の予備電源を設置
赤色反射塗料(▼マーク) 一辺20㎝の正三角形

ここからは、それぞれの仕様について解説していきます。

 

非常用進入口の基準:ガラスの材質・厚み

非常用進入口となる開口部は、外部から消防隊が破壊できる構造としなければなりません。

よって、ガラスの材質や厚みについて、特定行政庁や所轄の消防署が基準を定めています。

例えば、大阪市では以下のとおり。

非常用の進入口の構造

出典:大阪市建築基準法取扱い要領

 

非常用進入口の基準:赤色灯

非常用進入口には、夜間でも進入口の位置を特定できるよう、赤色灯の設置が義務付けられています。


出典:パナソニック

 

非常用進入口の基準:マーク(赤色三角印)

非常用進入口には、屋外から消防隊が進入口の位置を把握するため、開口部に赤色三角マークを明示しなければなりません。


出典:ASKUL

 

非常用進入口の設置を免除する方法

非常用進入口の設置が免除されるのは、以下のいずれかに当てはまる場合です。

  • ”不燃性の物品の保管その他”これと同等以上に、火災の発生のおそれの少ない用途に供する階
  • ”特別の理由により屋外からの進入を防止する必要がある階”で、その直上階または直下階から進入することができるもの
  • 非常用エレベーターの設置
  • 代替進入口(非常用進入口に代わる窓)の設置
  • 吹抜きとなっている部分その他の一定の規模以上の空間で国土交通大臣が定めるもの

 

代替進入口(非常用進入口に代わる窓)とは

以下の基準を満たす「非常用進入口に代わる窓(代替進入口だいたいしんにゅうこう」を設ければ、「非常用進入口」の設置は免除。

 

代替進入口(非常用進入口に代わる窓)の基準

  • 31m 以下の3階以上の階に進入口を設置
  • 設置すべき位置は、”道”または”道に通じる幅員 4m 以上の通路”に面する外壁面
  • 進入口は、外壁面の長さ 10m 以内ごとに設置
  • 窓(開口部)は、以下のいずれかの大きさを確保。
    • 直径1m 以上の円が内接できる開口部
    • 幅が 75㎝以上、および高さが 1.2m 以上の開口部
  • 開口部に用いるガラスの種類や厚みについて、消防活動の観点から一定の制限があるため、所管する特定行政庁や確認検査機関に照会が必要。(※建築基準法における規定はなし)

設置すべき窓の数は増えますが、バルコニー や赤色灯の設置が不要となります。

 

代替進入口(非常用進入口に代わる窓)は道に沿って10m以内ごとに設置

代替進入口_設置間隔

例えば、目にする機会の多い3階建て住宅でも、非常用進入口に代わる開口部を設けることにより、窓に赤色三角マークの表示が免除されています。

詳しくは、『代替進入口』とは|建築基準法における設置基準まとめ【図解】という記事で解説しているので、ご参考にどうぞ。

 

「屋外からの進入を防止する特別の理由」がある建物とは

特別な事情によって、外部からの進入を防ぐ必要のある階には、非常用進入口の設置が免除されます。

「建設省告示第1438号」に定められた、具体的な事例は以下のとおり。

 

✔️ 進入口を設けることにより周囲に著しい危害を及ぼすおそれがある場合

  • 放射性物質、有害ガスその他の有害物質を取り扱う建築物
  • 細菌、病原菌その他これらに類するものを取り扱う建築物
  • 爆発物を取り扱う建築物
  • 変電所

 

✔️ 進入口を設けることによりその目的の実現が図られないこと

  • 冷蔵倉庫
  • 留置所、拘置所その他人を拘禁することを目的とする用途
  • 美術品収蔵庫、金庫室その他これらに類する用途
  • 無響室、電磁しゃへい室、無菌室その他これらに類する用途

防犯性を高める必要がある用途の建物(留置所など)や、機能を果たすために閉鎖性・気密性が必要となる部分(冷蔵倉庫)が対象。

「建築主の要望で非常用進入口を設けたくない」といった軽い理由では免除できません。

 

非常用進入口について建築基準法を読んでみる

非常用進入口は、建築基準法の施行令126条の6に定められています。

第126条の6

建築物の高さ31m以下の部分にある3階以上の階(不燃性の物品の保管その他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない用途に供する階又は国土交通大臣が定める特別の理由により屋外からの進入を防止する必要がある階で、その直上階又は直下階から進入することができるものを除く。)には、非常用の進入口を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合においては、この限りでない。

一 第129条の13の3の規定に適合するエレベーターを設置している場合⇐非常用エレベーター

二 道又は道に通ずる幅員4m以上の通路その他の空地に面する各階の外壁面に窓その他の開口部(直径1m以上の円が内接することができるもの又はその幅及び高さが、それぞれ、75㎝以上及び1.2m以上のもので、格子その他の屋外からの進入を妨げる構造を有しないものに限る。)を当該壁面の長さ10m以内ごとに設けている場合⇐代替進入口

三 吹抜きとなつている部分その他の一定の規模以上の空間で国土交通大臣が定めるものを確保し、当該空間から容易に各階に進入することができるよう、通路その他の部分であつて、当該空間との間に壁を有しないことその他の高い開放性を有するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを設けている場合

さらに、進入口の構造に関しては施行令126条の7.

第126条の7

前条の非常用の進入口は、次の各号に定める構造としなければならない。

一 進入口は、道又は道に通ずる幅員4m以上の通路その他の空地に面する各階の外壁面に設けること。

二 進入口の間隔は、40m以下であること。

三 進入口の幅、高さ及び下端の床面からの高さが、それぞれ、75㎝以上、1.2m以上及び80㎝以下であること。

四 進入口は、外部から開放し、又は破壊して室内に進入できる構造とすること。

五 進入口には、奥行き1m以上、長さ4m以上のバルコニーを設けること。

六 進入口又はその近くに、外部から見やすい方法で赤色灯の標識を掲示し、及び非常用の進入口である旨を赤色で表示すること。

七 前各号に定めるもののほか、国土交通大臣が非常用の進入口としての機能を確保するために必要があると認めて定める基準に適合する構造とすること。

 

まとめ

  • 『非常用進入口』とは、外部から消防隊が進入するための開口部やバルコニーなどの総称。
  • 非常用進入口が必要な建築物
    • 3階以上の建築物
  • 非常用進入口が必要となる建築物の部分
    • 道路、または幅4mの通路に面する部分
    • 3階以上の各階、かつ高さ31m以下の部分
  • 非常用進入口の構造
    • 進入口の間隔:40m以下
    • 進入口の大きさ:幅75㎝以上、高さ120㎝以上
    • 進入口の高さ:床面から進入口下端まで80㎝以下
    • バルコニー:奥行1m以上、長さ4m以上
    • 赤色灯:常時点灯、かつ30分間点灯の予備電源を設置
    • 赤色反射塗料(▼マーク):一辺20㎝の正三角形
  • 非常用進入口の設置が免除されるのは、以下のいずれかに当てはまる場合
    • ”不燃性の物品の保管その他”これと同等以上に、火災の発生のおそれの少ない用途に供する階
    • 特別の理由により屋外からの進入を防止する必要がある階で、その直上階または直下階から進入することができるもの
    • 非常用エレベーターの設置
    • 代替進入口(非常用進入口に代わる窓)の設置
    • 吹抜きとなっている部分その他の一定の規模以上の空間で国土交通大臣が定めるもの

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