
- 一次エネルギー消費量って何?
- 一次エネルギー消費量削減率を上げるには?
- 一次エネルギー消費量の計算方法が知りたい。
こんな疑問や要望に答えます。
本記事では、省エネ基準のひとつである「一次エネルギー消費量」についてわかりやすく解説。
記事を読むことで、一次エネルギー消費量の定義や計算方法、削減率の基準を理解することができます。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
一次エネルギー消費量とは
『一次エネルギー消費量』とは、建築物が1年間に使用するエネルギーの総量を、元となる「一次エネルギー」で換算した指標です。
✓ 一次エネルギーの具体例
- 石油
- 石炭
- 天然ガス
- 太陽光
- 風力
- 水力
- 原子力
「一次エネルギー消費量」は、「私たちが活動するために、元のエネルギー資源をどれだけ使ったか」を示しているわけですね。
例えば、エアコンを1時間使うと1000W(1kWh)の電力を使うとします。
この1kWhの電気を作るためには、発電所では発電効率やエネルギー損失を考慮して約2.5倍(※)もの一次エネルギーが必要です。
一次エネルギー消費量の計算方法
一次エネルギー消費量の基本計算式は以下のとおり。
つまり、エネルギーの種類ごとに、その消費量に対応する「換算係数」を掛け合わせて合計するわけですね。
二次エネルギー消費量
二次エネルギー消費量とは、実際に建物や家庭で消費したエネルギー量。
電力メーターやガスメーターで計測される値ですね。
- 電気:kWh (キロワット時)
- 都市ガス:m³ (立方メートル)または MJ(メガジュール)
- 灯油:L (リットル)
一次エネルギー換算係数
一次エネルギー換算係数とは、「二次エネルギーを1単位つくるために、どれくらいの一次エネルギーが必要か」を示す係数です。
この係数は、国の省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)などで定められています。
✓ 主なエネルギーの換算係数(2024年時点の標準的な値)
| 二次エネルギーの種類 | 単位 | 発熱量(MJ/単位) | 一次エネルギー換算係数 (MJ/単位) | 備考 |
| 電気 | kWh | 3.6 MJ/kWh | 9.76 MJ/kWh | 昼夜間均等の係数。発電・送電ロスを含むため、発熱量よりかなり大きい。 |
| 都市ガス (13A) | m³ | 45 MJ/m³ | 45 MJ/m³ | 製造ロスが非常に小さいため、ほぼ発熱量と同じ値が使われる。 |
| 灯油 | L | 36.7 MJ/L | 36.7 MJ/L | 精製ロスが比較的小さいため、発熱量と同じ値が使われる。 |
| 太陽光発電 | kWh | – | 0 MJ/kWh | 太陽光は自然エネルギーであり、化石燃料を消費しないため、一次エネルギー換算係数はゼロとして扱われる。 |

電気の換算係数(9.76 MJ/kWh)は、そのものが持つエネルギー(発熱量:3.6 MJ/kWh)の約2.7倍と大きいですね。
これは、火力発電所などで一次エネルギー(石炭、LNG等)を燃やして電気を作る際の変換効率が約40%程度であり、さらに送電網でのロスがあるためです。
つまり、電気を1節約することは、ガスや灯油を1節約するよりも、一次エネルギーの削減効果が約2.7倍も高いと言えます。
一次エネルギー消費量の削減率の基準【BEI】
一次エネルギー消費量の削減率を確認する指標は「BEI(Building Energy Index)」です。

✓ BEIの計算式

BEIは、省エネ計算の中心的な指標。基準値を「1.0」として、設計値がそれをどれだけ下回るかを示します。
✓ 一次エネルギー消費量の削減率の調べ方
| BEIの値 | 削減率 |
| BEI = 1.0 | 基準と全く同じ性能(削減率0%) |
| BEI = 0.8 | 基準より20%エネルギー消費が少ない(削減率20%) |
| BEI = 0.5 | 準より50%エネルギー消費が少ない(削減率50%) |
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一次エネルギー消費量算定プログラムとは
「一次エネルギー消費量算定プログラム」は、一次エネルギー消費量の計算をサポートするためのプログラムです。
主に住宅の新築・増改築時に、省エネ基準への適合性を評価する目的で利用されます。
プログラムの種類
建築研究所、国土技術政策総合研究所が無償提供する「住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム」がよく利用されています。
使い方の流れ
- 住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラムへアクセス
- 建物概要、室区分、断熱仕様、設備仕様等を入力
- 算定を実行
- 結果(一次エネルギー消費量、BEI値等)を確認
- 書類出力・提出
主な入力項目
算定プログラムに入力する主な項目は以下のとおり。
- 建物用途・規模(床面積など)
- 居室・非居室の区分
- 断熱仕様・熱損失係数などの外皮性能
- 設備仕様(空調・換気・給湯・照明など)
出力される主な値
建物の「一次エネルギー消費量(GJ/年等)」の基準値と設計値の比較が出力されます。

BEIが1.0以下なら基準適合ですね。
二次エネルギーとは
二次エネルギーとは、自然界に存在する一次エネルギー(原油、石炭、天然ガス、水力、太陽光など)を加工・変換して得られるエネルギーのことです。
✓ 代表的な二次エネルギー
- 電力(電気):火力発電や水力発電、原子力発電などによって発電されるもの
- 都市ガス:天然ガスを加工して、家庭やオフィスに供給されるもの。
- コークス:石炭を加工して作られるもの。
- ガソリン、灯油などの石油製品:原油を精製して得られるもの。
まとめ
- 一次エネルギー消費量とは、建築物が1年間に使用するエネルギーの総量を、元となる「一次エネルギー」で換算した指標。
- 一次エネルギー消費量の計算式
- 一次エネルギー消費量 = Σ { (各二次エネルギーの消費量) × (一次エネルギー換算係数) }
- 一次エネルギー消費量の削減率を確認する指標は「BEI(Building Energy Index)」。
- BEIの計算式
- BEI=設計一次エネルギー消費量÷基準一次エネルギー消費量
- BEIが1.0以下なら基準適合
- 「一次エネルギー消費量算定プログラム」は、一次エネルギー消費量の計算をサポートするためのプログラム。
- 二次エネルギーとは、自然界に存在する一次エネルギーを加工・変換して得られるエネルギーのこと。
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