
- 住宅性能評価って、どんな制度?
- 着工していても、あとから評価書を取得できる?
- 取得するメリットが知りたい。
こんな疑問や要望に答えます。
本記事では、「住宅性能評価」の制度についてわかりやすく解説。
住宅性能評価書を取得する方法や住宅ローン控除への影響など、基本知識が身につきます。

このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
住宅性能評価とは
住宅性能評価とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称:品確法)」に基づき、住宅の性能を客観的に評価・表示する制度です。
この制度では、第三者機関が住宅の設計や建築における性能を評価し、その結果を住宅購入者や建築主に提供します。
✓ 主な評価項目
- 構造の安定(地震や台風などに対する耐久性や安全性)
- 火災時の安全(延焼防止性能や避難安全性)
- 劣化の軽減(建材や構造の耐久性、メンテナンスのしやすさ)
- 温熱環境(断熱性能やエネルギー効率)
- 空気環境(換気性能や室内空気の質)
- 音環境(遮音性能など)
- 高齢者等への配慮(バリアフリー設計や安全性)

住宅性能評価は、住宅の品質向上と消費者の安心な住宅選びをサポートするための制度。
新築やリフォームを検討する際には、この評価制度を活用することで、より良い住宅選びが可能となりますね。
住宅性能評価書とは
住宅性能評価書とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称:品確法)」に基づき、登録住宅性能評価機関が住宅の性能を客観的に評価し、その結果を記載した公式の文書です。
住宅性能評価書には、2つの種類があります。
- 設計住宅性能評価書:建築前の設計図面などを基に評価したもの
- 建設住宅性能評価書:実際の建設過程と完成後の住宅を評価したもの
住宅事業者にとって、評価書の取得は自社の建築物が高品質であることを示すアピールポイントになりますね。
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住宅性能評価の等級一覧
住宅性能評価制度の等級について一覧表にまとめました。
1 | 構造の安定に関すること | |
1-1 必須 |
耐震等級(構造躯体の倒壊等防止) | 地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさを等級で表示 |
1-2 | 耐震等級(構造躯体の損傷防止) | 地震に対する構造躯体の損傷の生じにくさを等級で表示 |
1-3 必須 |
その他(地震に対する構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止) | 免震建築物であるか否かを表示 |
1-4 | 耐風等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止) | 暴風に対する構造躯体の倒壊等及び損傷の生じにくさを等級で表示 |
1-5 | 耐積雪等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止) | 屋根の積雪に対する構造躯体の倒壊、崩壊等及び損傷の生じにくさを等級で表示 |
1-6 必須 |
地盤又は杭の許容支持力等及びその設定方法 | 地盤又は杭の耐力及び地盤に見込んでいる耐力の根拠を表示 |
1-7 必須 |
基礎の構造方法及び形式等 | 直接基礎の構造及び形式又は杭基礎の杭種、杭径及び杭長を表示 |
2 | 火災時の安全に関すること | |
2-1 | 感知警報装置設置等級(自住戸火災時) | 評価対象住戸において発生した火災の早期の覚知のしやすさを等級で表示 |
2-2 | 感知警報装置設置等級(他住戸等火災時) | 評価対象住戸の同一又は直下の階にある他住戸等において発生した火災の早期の覚知のしやすさを等級で表示 |
2-3 | 避難安全対策(他住戸等火災時 共用廊下) | 評価対象住戸の同一階又は直下の階にある他住戸等の火災時における避難のための共用廊下の対策について3項目で表示 |
2-4 | 脱出対策(火災時) | 通常の歩行経路が使用できない場合の緊急的な脱出のための対策を表示 |
2-5 | 耐火等級(延焼のおそれのある部分(開口部)) | 延焼のおそれのある部分の開口部に係る火災による火炎を遮る時間の長さを等級で表示 |
2-6 | 耐火等級(延焼のおそれのある部分(開口部以外) | 延焼のおそれのある部分の外壁等 (開口部以外) に係る火災による火熱を遮る時間の長さを等級で表示 |
2-7 | 耐火等級(界壁及び界床) | 住戸間の界壁及び界床に係る火災による火熱を遮る時間の長さを等級で表示 |
3 | 劣化の軽減に関すること | |
3-1 必須 |
劣化対策等級(構造躯体等) | 構造躯体等の大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策の程度を等級で表示 |
4 | 維持管理・更新への配慮に関すること | |
4-1 必須 |
維持管理対策等級(専用配管) | 専用の給排水管・給湯管及びガス管の清掃、点検及び補修を容易とするために必要な対策の程度を等級で表示 |
4-2 必須 |
維持管理対策等級(共用配管) | 共用の給排水管・給湯管及びガス管の清掃、点検及び補修を容易とするため必要な対策の程度を等級で表示 |
4-3 必須 |
更新対策(共用排水管) | 共用排水管の更新を容易とするための必要な対策について2項目で表示 |
4-4 | 更新対策(住戸専用部) | 住戸専用部の間取りの変更を容易とするため必要な対策について2項目で表示 |
5 | 温熱環境・エネルギー消費量に関すること | |
5-1 必須 |
断熱等性能等級 | 外壁 窓等を通しての熱損失の防止を図るための断熱化等による対策の程度を等級で表示 |
5-2 必須 |
一次エネルギー消費量等級 | 一次エネルギー消費量の削減のための対策の程度を等級で表示 |
6 | 空気環境に関すること | |
6-1 | ホルムアルデヒド対策(内装及び天井裏等) | 居室の内装の仕上げ及び天井裏等の下地材等からのホルムアルデヒドの発散量を少なくする対策を等級で表示 |
6-2 | 換気対策 | 室内空気中の汚染物質及び湿気を屋外に除去するための必要な換気対策について2項目で表示 |
6-3 | 室内空気中の化学物質の濃度等 | 評価対象住戸の空気中の化学物質の濃度及び測定方法を表示 |
7 | 光・視環境に関すること | |
7-1 | 単純開口率 | 居室の外壁又は屋根に設けられた開口部の面積の床面積に対する割合の大きさを表示 |
7-2 | 方位別開口比 | 居室の外壁又は屋根に設けられた開口部の面積の各方位毎の比率の大きさを表示 |
8 | 音環境に関すること | |
8-1 | 重量床衝撃音対策 | 居室に係る上下階との界床の重量床衝撃音を遮断する対策について、等級または相当スラブ厚を表示 |
8-2 | 軽量床衝撃音対策 | 居室に係る上下階との界床の軽量床衝撃音を遮断する対策について、等級または軽量床衝撃音レベル低減量を表示 |
8-3 | 透過損失等級(界壁) | 居室の界壁の構造による空気伝搬音の遮断の程度を等級で表示 |
8-4 | 透過損失等級(外壁開口部) | 居室の外壁に設けられた開口部に方位別に使用するサッシによる空気伝搬音の遮断の程度を等級で表示 |
9 | 高齢者等への配慮に関すること | |
9-1 | 高齢者等配慮対策等級(専用部分) | 住戸内における高齢者等への配慮のために必要な対策の程度を等級で表示 |
9-2 | 高齢者等配慮対策等級(共用部分) | 共同住宅等の主に建物出入口から住戸の玄関における高齢者等への配慮のために必要な対策の程度を等級で表示 |
10 | 防犯に関すること | |
10-1 | 開口部の侵入防止対策 | 通常想定される侵入行為による外部からの侵入を防止するための対策を講じているか否かを表示 |
住宅性能評価を行うタイミング
住宅性能評価は2種類あり、それぞれ申請のタイミングが異なります。
- 設計住宅性能評価:住宅の設計段階で申請
- 建設住宅性能評価:施工中から完成後にかけて申請
設計住宅性能評価は、設計段階で図面や計算書などを確認し、その内容を評価したうえで評価書が交付される制度です。そのため、着工後でも申請は可能。
ただし、着工後に指摘事項が発生し、それが大幅な修正を伴う場合、既に工事が進んでいるため、修正図面通りに工事を是正できないリスクがありますね。
建設住宅性能評価は、施工中から完成後までの特定のタイミングで申請・検査を受ける必要があります。

施工の進捗状況に合わせて検査が行われるため、適切なタイミングを逃すと評価を受けられません。
住宅性能評価のメリット
住宅性能評価制度を利用するメリットをまとめました。
1 | 住宅の品質保証 | 客観的な評価 | 第三者機関が客観的な基準に基づいて評価するため、住宅の品質や性能が保証されます。 |
安心感の向上 | 購入者や居住者にとって、品質が保証された住宅であることは大きな安心材料となります。 | ||
2 | 資産価値の向上 | 売却時の優位性 | 住宅性能評価書を取得していると、将来的に住宅を売却する際に高い評価を受けやすくなります。 |
市場での信頼性 | 品質が証明された住宅として、中古市場でも信頼性が高まります。 | ||
3 | トラブルの防止 | 設計・施工のチェック | 設計段階から評価を受けることで、設計ミスや施工不良を未然に防ぐことができます。 |
品質管理の向上 | 施工中に第三者機関の検査が入るため、施工品質が確保されます。 | ||
4 | 住宅ローンや保険の優遇 | 金利優遇 | 一部の金融機関では、住宅性能評価を取得した住宅に対して住宅ローンの金利優遇を行っています。 |
保険料の割引 | 住宅性能評価を取得していると、火災保険や地震保険の保険料が割引されるケースがあります。 | ||
5 | 地震対策・省エネ性能の明示 | 耐震性の確認 | 耐震等級などの評価により、地震に対する強さがわかります。 |
省エネルギー性能 | 断熱性や省エネ性能が評価されるため、光熱費の削減につながります。 |
住宅性能評価のデメリット
住宅性能評価制度を利用するデメリットは以下のとおり。
1 | 費用がかかる | 評価手数料 | 設計住宅性能評価や建設住宅性能評価を受けるための手数料が必要です。 |
追加費用の可能性 | 性能基準を満たすための設計・施工の見直しにより、コストが増加する場合があります。 | ||
2 | 手続きや期間が増える | 申請手続きの煩雑さ | 評価を受けるための書類作成や申請手続きに手間がかかります。 |
工期の延長 | 評価機関の検査スケジュールによっては、工事の進捗が遅れる可能性があります。 | ||
3 | 設計・施工の制約 | 自由度の低下 | 性能基準を満たすために、設計や材料の選択に制約が生じることがあります。 |
創意工夫の制限 | 独自のデザインや工法を採用する場合、評価基準に適合しない可能性があります。 |
住宅性能評価員とは
「住宅性能評価員」とは、住宅性能表示制度において、住宅の性能を客観的に評価する専門家のことです。
住宅性能評価員になるためには、国土交通大臣が指定する「指定住宅性能評価機関」に所属し、以下の要件を満たす必要があります。
- 専門的な資格: 一級建築士、二級建築士、木造建築士、建築主事、建築基準適合判定資格者検定合格者(※建築士試験の合格者で、登録を行っていない方も受講できる)
- 講習の受講:国土交通大臣指定の機関が実施する公式な研修を受講し、必要な知識・技能を習得すること。
まとめ
- 住宅性能評価とは、住宅の性能を客観的に評価・表示する制度。
- 評価項目
- 構造の安定
- 火災時の安全
- 劣化の軽減
- 維持管理・更新への配慮
- 温熱環境
- 空気環境
- 音環境
- 光・視環境
- 高齢者等への配慮
- 防犯
- 住宅性能評価書とは、登録住宅性能評価機関が住宅の性能を客観的に評価し、その結果を記載した公式の文書。
- 設計住宅性能評価書:建築前の設計図面などを基に評価したもの
- 建設住宅性能評価書:実際の建設過程と完成後の住宅を評価したもの
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