
- 屋外避難階段の周囲に開口部を設けてはいけない?
- 屋外避難階段から2mの範囲に設置してもいい扉はある?
- 防火性能のある袖壁を設けたら開口の制限範囲を緩和できる?
こんな疑問にお答えします。
この記事では、屋外避難階段の周囲に設けることができない開口部について解説します。
避難階段を設計するうえで必須の知識なので、知らない情報がないか目を通してみてください。

当サイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。
住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
屋外避難階段の周囲2mに設けてもよい開口部とは
「屋外避難階段」の周囲2mの範囲には以下の開口部しか設けることはできません。
- 階段に通じる出入口
- 開口面積1㎡以内の防火設備(法2条第九号の二ロ)で「はめごろし戸」
建築基準法において「開口部」という表現には、窓だけでなく、換気扇や給気口も含まれるので要注意。

設備の開口も屋外避難階段のまわりは設置不可です。
階段の計画は意匠設計者が担当しますが、換気口の位置なども含めて、設備設計者と打ち合わせしておく必要がありますね。
建築確認を出す前に、換気設備図面にも屋外避難階段の周囲2mの開口制限範囲を描いているか、必ず確認してください。

屋外避難階段のある建物の審査で、設計者が最も間違いやすいポイントかと…。
屋外避難階段の周囲2mは防火設備も設置不可【階段への出入口はOK】
屋外避難階段の開口制限範囲には、防火設備の窓であっても設置不可。
屋外避難階段に出入りするための扉で「遮煙性能付きの防火設備」は認められますが、その他の開口部は設置できません。
1㎡以下のはめごろし戸(防火設備)は屋外避難階段の周囲に設置可能
屋外避難階段の基準について、建築基準法をよく読むと「1㎡以下のはめごろし戸」は設置できることがわかるかと。
いわゆるFIX窓です。
たんなる「はめごろし戸」ではなく、防火設備(窓の両面が炎に20分間さらされても耐える性能)が必要。
大臣認定の防火設備を使用する場合、「EB-〇〇〇〇(数字4ケタ)」の認定を受けた建具であれば使用できます。告示仕様を選択するときは「告示1360号」となりますね。
屋外避難階段の開口制限の緩和【開放廊下があるときのみ使える】
ここまで「屋外避難階段の周囲に開口は設けてはいけない」とさんざん書いてきましたが、例外もあります。
「屋外避難階段」に面して「開放性の高い外廊下」があるとき、廊下に面する扉やEV扉は開口制限の範囲内に設けてもよいとされています。
図解すると以下のとおり。
屋外避難階段から2mの範囲に扉が設けられていますが、不適合とみなされません。
この取り扱いは、防火避難規定の解説2023という書籍に掲載されている解釈なので、詳しい内容を知りたい方はチェックしてみてください。
屋外避難階段の開口制限を『防火壁』によって緩和する方法
屋外避難階段の周囲に「防火上有効な袖壁(防火壁)」を設置することで、開口制限の範囲を変える方法もあります。
図解すると以下のとおり。
屋外避難階段の周囲に、なぜ開口を設けてはいけないかというと、屋内で発生した炎が階段へ吹き出すことで、避難ができなくなるおそれがあるから。

なので、開口部からの炎を防ぐように耐火性能のある壁を立ち上げればOKということですね。
防火壁によって「屋外階段の開放性」を損なわないように注意
基本的な話ですが、屋外避難階段は「階段の周長の1/2以上を外気に有効に開放させる」必要があります。
つまり、階段に防火壁を設置するにあたっては、周長の1/2以上をふさがないように気をつけなければいけません。

屋外避難階段のできるだけ近くに窓を設置したいからといって、防火壁で階段を囲うような設計をするのはNGですね。
屋外避難階段の開口が設置できない範囲【2mの測り方】
屋外避難階段で開口部が設置できない2mの範囲は、平面図だけでは決まりません。
階段の上部、下部の2mも開口制限の対象となるので、立面図でも確認することが重要。
以下の黄色でマーキングされた範囲が開口部の制限範囲です。
避難階段の検討は平面的におこなうのではなく、立体的に考えることを意識しましょう。
まとめ
- 「屋外避難階段」の周囲2mの範囲には以下の開口部しか設けることはできない。
- 階段に通じる出入口
- 開口面積1㎡以内の防火設備(法2条第九号の二ロ)で「はめごろし戸」
- 窓だけでなく、換気扇や給気口も設置できない。
- 「屋外避難階段」に面して「開放性の高い外廊下」があるとき、廊下に面する扉やEV扉は開口制限の範囲内に設置可能。
- 屋外避難階段の周囲に「防火壁」を設置すれば、開口制限の範囲を変えられる。
- 階段の上部、下部の2mも開口制限の対象。立面図でも確認することが重要。

