
- 防煙垂れ壁ってどんな仕様・構造?
- 防煙垂れ壁が必要となるのは、どんなケース?
- 防煙垂れ壁の高さを緩和する方法があれば知りたい。
こんな疑問に答えます。
本記事では、建築基準法における『防煙垂れ壁(防煙壁)』について解説。
排煙設備の設計において、煙を遮る防煙垂れ壁の知識は必須です。
天井が低い建物の設計で、”垂れ壁の高さを低くする方法”も解説するため、意匠設計者の方に役立つ情報かと。

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住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識を、できるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。
防煙垂れ壁(防煙壁)とは

『防煙垂れ壁(防煙壁)』とは、排煙設備の設計において、煙を一定規模ごとに区画ために設置する垂れ壁のことです。
建築基準法では、防煙垂れ壁ではなく、『防煙壁』と記されています。
また、いわゆる「垂れ壁」という表現には、扉の上部から天井までの部分も該当。

排煙設備の防煙区画を構成する扉の上部は、防煙垂れ壁とみなされるので、建具上端から天井まで500㎜以上の高さが必要。

建具高さが2000㎜の場合、天井高は2500㎜以上必要となりますね。
防煙垂れ壁の設置基準(構造)
建築基準法における防煙垂れ壁は、以下のいずれかの構造とする必要があります。
- 不燃材料で造る
- 不燃材料で覆う
例えば、防煙垂れ壁として多く採用されているのは「ガラス」。
ガラスは建築基準法の”告示1400号(不燃材料を定める件)”によって、不燃性能が認められているため、上記の「不燃材料で造る」という基準に合致するわけですね。

ただし、ガラスを垂れ壁とする場合は建築物の防火避難規定の解説において、網入りガラスが推奨されています。
防煙垂れ壁を「不燃材料で造る・覆う」の定義を解説
下地や仕上げが不燃材料ではない場合、どのような構成であれば「不燃材料で造る・覆う」の規定を満たすか、基準となる事例を紹介します。
以下の条件を満たす場合は、壁の一部に「不燃材料以外の素材」が含まれていても、防煙垂れ壁として認められます。

- 【図-1】②をコンクリート・ALC 等の不燃材料で造った場合:①の壁紙・塗料等の仕上については不燃性能は問われない。
- 【図-2】①および②を不燃材料として大臣認定を受けた壁紙・塗料等の仕上げとした場合:③について不燃性能は問われない。
- 【図-2】①がない場合で、②を不燃材料の化粧ボード等とした場合:③について不燃性能は問われない。
出典:近畿建築行政会議 建築基準法 共通取扱い集 構造・建築設備関係
防煙垂れ壁の高さは500㎜【常時閉鎖の不燃戸で300㎜まで緩和】
建築基準法にもとづく『防煙垂れ壁』とみなされるためには、原則として500㎜の高さが必要。

防煙垂れ壁の高さを緩和する方法
ただし、例外として以下のような設計であれば垂れ壁高さを300㎜まで低くすることが可能。
以下のいずれかの構造をもつ不燃製の戸(鉄製扉など)の上部は、垂れ壁高さが300㎜であっても、防煙間仕切り壁とみなされます。
- 常時閉鎖式
- 煙感知器と連動して閉鎖


上記の緩和は、建築基準法の本文には書かれておらず、建築物の防火避難規定の解説という書籍に記されています。
防煙垂れ壁が必要となる位置
排煙設備が必要となる建築物で、防煙垂れ壁を設置すべき位置は以下のとおり。
- 500㎡以内ごとの防煙区画
- 告示1436号による排煙設備の緩和
- 階段・エスカレーター・吹き抜けの防煙区画
500㎡以内ごとの防煙区画
排煙設備の設置基準のひとつに、「床面積500㎡以内ごとに防煙壁で防煙区画しなければならない」という規定があります。


避難が完了するまでの一定時間、煙の拡散を防ぐための規定ですね。
告示1436号で排煙設備を免除する場合
排煙設備を免除するための規定である告示1436号第4の条件として、防煙壁の設置が出てきます。
✔️ 告示1436号第4の区画【一覧表】
| 室(ニ-1) | 室(ニ-2) | 居室(ニ-3) | 居室(ニ-4) | |
| 床面積 | 100㎡以下 | 100㎡以下 | ||
| 内装制限 | 準不燃仕上げ | 準不燃仕上げ | 下地・仕上げとも不燃 | |
| 屋内に面する 開口部 |
防火設備または戸 | 防煙垂れ壁 | 防火設備 | 防煙垂れ壁 |
| 区画 | 防煙垂れ壁 | 100㎡以内ごとに準耐火構造 | 防煙間仕切り壁 |

告示1436号第4の(二-2)または(ニ-4)により排煙設備を免除する場合は、防煙垂れ壁による区画が必須。
物置や更衣室など、排煙窓を設置できない室は告示1436号を適用するケースが多いので、垂れ壁の計画が欠かせません。
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階段・エスカレーター・吹き抜けの防煙区画
階段部分は排煙設備の免除規定が適用されますが、階段とその他の部分を防煙壁で区画する必要があります。

可動式の防煙垂れ壁を設計する方法
防煙垂れ壁をデザイン的に見せたくない場合は、「可動式の防煙垂れ壁」という選択肢もあります。
煙感知器と連動して、火災が発生すると防煙垂れ壁がおりてくるイメージ。
出典:文化シャッター
✔ 可動式防煙垂れ壁の設置基準
- 火災時に有効に作動しなければならない
- 垂れ壁の高さは50㎝以上とし、作動後に床面から1.8m以上の空間を確保する
- 煙感知器に連動して作動し、かつ垂れ壁の近くに手動降下装置を設ける
- 中央管理室(防災センター)の設置が必要な建築物は、垂れ壁の作動が中央管理室で制御でき、かつ監視できるようにする
詳細は建築物の防火避難規定の解説に書かれています。実際の設計では、書籍に書かれた要件をよく読んで設置してください。
防煙垂れ壁について建築基準法で読む
防煙壁の定義は、建築基準法の施行令126条の2に書かれています。
「建築基準法は読みたくない」という方は、建築法規PRO2025 図解建築申請法規マニュアル や建築申請memo2025 といった書籍で、図や表を見て理解するのがおすすめです。
第3節 排煙設備
(設置)
第126条の2
前略
間仕切壁、天井面から50㎝以上下方に突出した垂れ壁その他これらと同等以上に煙の流動を妨げる効力のあるもので不燃材料で造り、又は覆われたもの(以下「防煙壁」という。)によつて区画されたものを除く。)、
以下省略
まとめ
- 防煙垂れ壁(防煙壁)とは、排煙設備の設計において、煙を一定規模ごとに区画するもの。
- 防煙区画を構成する扉の上部は、防煙垂れ壁とみなされる。
- 建築基準法における防煙垂れ壁は、以下のいずれかの構造とする。
- 不燃材料で造る
- 不燃材料で覆う
- 防煙垂れ壁は、原則として500㎜の高さが必要。
- 以下のいずれかの構造をもつ不燃戸(鉄製扉など)の上部は、垂れ壁高さが300㎜でOK。
- 常時閉鎖式
- 煙感知器と連動して閉鎖
- 排煙設備が必要となる建築物で、防煙垂れ壁を設置すべき位置は以下のとおり。
- 500㎡以内ごとの防煙区画
- 告示1436号による排煙設備の緩和
- 階段・エスカレーター・吹き抜けの防煙区画





