- 屋根勾配ってなに?
- どうやって計算する?
- 3寸勾配の角度が知りたい。
こんな悩みに答えます。
本記事では、建築物の屋根勾配についてわかりやすく解説。
勾配の角度を決めるときのメリット・デメリットや傾きの計算方法を理解することができます。
このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
屋根勾配とは
屋根勾配は、屋根を仕上げるときの角度を示すものです。
建築実務において屋根の角度は「○度」という表記はしないもの。
屋根勾配は、三角形の底辺を10寸としたときに高さが何寸かで表します。
「寸」で表した方が傾斜の計算がしやすく、高さも確認しやすいからです。
三角形の斜辺が屋根面を表していますね。
勾配をどのくらい取るかによって、建築物の外観や機能性に違いが出てきます。
屋根勾配の計算方法
屋根勾配の分数表記を角度に変換する計算方法は以下のとおり。
θ(度)=A tan(a/b)×180/π
- a:勾配の水平距離
- b:勾配の高さ
屋根勾配の角度
屋根勾配を示す単位「寸」と「角度」の対応を一覧表にまとめました。
分数表示(t) | 寸貫法表示(勾配) | 角度表示 |
---|---|---|
2/10 | 2寸 | 11°18’36” |
2.5/10 | 2寸5分 | 14°02’11” |
3/10 | 3寸 | 16°41’57” |
3.5/10 | 3寸5分 | 19°17’24” |
4/10 | 4寸 | 21°48’05” |
4.5/10 | 4寸5分 | 24°13’40” |
5/10 | 5寸 | 26°33’54” |
5.5/10 | 5寸5分 | 28°48’39” |
6/10 | 6寸 | 30°57’49” |
6.5/10 | 6寸5分 | 33°01’26” |
7/10 | 7寸 | 34°59’31” |
7.5/10 | 7寸5分 | 36°52’12” |
8/10 | 8寸 | 38°39’35” |
8.5/10 | 8寸5分 | 40°21’52” |
9/10 | 9寸 | 41°59’14” |
9.5/10 | 9寸5分 | 43°31’52” |
10/10 | 1尺 | 45° |
屋根勾配の係数
勾配係数は、屋根の傾斜の度合いを表す数値です。
具体的には、屋根の水平面に対する傾斜の角度を表しています。
勾配係数の算出方法は以下のとおり。
寸貫法表示(勾配) | 勾配係数 |
---|---|
2寸 | 1.020 |
2寸5分 | 1.031 |
3寸 | 1.044 |
3寸5分 | 1.059 |
4寸 | 1.077 |
4寸5分 | 1.097 |
5寸 | 1.118 |
5寸5分 | 1.141 |
6寸 | 1.166 |
6寸5分 | 1.193 |
7寸 | 1.221 |
7寸5分 | 1.25 |
8寸 | 1.281 |
8寸5分 | 1.321 |
9寸 | 1.345 |
9寸5分 | 1.379 |
10寸 | 1.414 |
片流れ屋根の傾斜部分の長さは、勾配の係数を覚えておくと簡単に導くことができます。
たとえば、3寸勾配の屋根を計画するとき、勾配係数α=1.044と覚えておけば、水平距離4000㎜に対して屋根面は4000×1.044=4176㎜とわかります。
勾配係数が大きいほど、屋根は急傾斜になり、雨水や雪が流れやすくなります。また、勾配係数が小さいと、屋根は緩やかな傾斜で、雨水や雪が滞留しやすいでしょう。
勾配の角度によるメリット・デメリット
屋根は、勾配の角度によって大きく3つに分けられます。
- 緩勾配:勾配がわずかにあり、0.5寸〜2.5寸勾配(約2.8~14.0度)
- 並勾配:勾配がやや急で、3寸〜5寸勾配(約16.7~28.8度)
- 急勾配:勾配が非常に急で、6寸勾配以上(約31.0度以上)
緩勾配のメリット
- 風の影響が少なく、突風や台風の被害を受けにくい。
- 設計や施工がしやすく、コストを削減しやすい
- 屋根面積が小さく、少ない材料でつくれる
- 落雪の危険性が低い
緩勾配のデメリット
- 雨水や雪が流れづらく、排水能力が低い。雨漏りのリスクが高くなる。
- 外観の変化に富まず、デザイン的に物足りないことがある。
- ゴミやホコリがたまりやすく、劣化が早く進む。
- 小屋裏(屋根と天井の間)のスペースが狭いため、空気層による断熱効果が期待できない。
並勾配のメリット
- メンテナンスをするときに、屋根足場が不要なケースが多い。
- 多様な屋根材を選ぶことができる。
並勾配のデメリット
急勾配のメリット
- 雨水が流れやすく、雨漏りのリスクを抑えることができる。
- 小屋裏収納やロフトを広くとりやすい。
- 小屋裏空間が大きくなるため、下の部屋の断熱効果が期待できる。
急勾配のデメリット
- 屋根面積が大きくなるため、多くの屋根材が必要となり、コストが上がる。
- 5.5寸以上の勾配では屋根足場が必要となる
- 風にあたる面積が増えるため、突風や台風の被害を受けやすい。
屋根の必要最低勾配
屋根勾配は屋根材によって最低限、確保すべき勾配があります。
- 金属屋根:勾配1/10以上
- スレート屋根:勾配3/10以上
- 瓦屋根:勾配4/10以上
勾配をゆるくしすぎると、雨漏りなどのリスクが高まるため、上記の基準を守るようにしましょう。
まとめ
- 屋根勾配:屋根を仕上げるときの角度を示すもの。
- 三角形の底辺を10寸としたときに高さが何寸かで表記。
- 勾配係数:屋根の傾斜の度合いを表す数値
- 勾配係数 = 屋根の斜辺の長さ ÷ 屋根の水平距離
- 屋根は、勾配の角度によって大きく3つに分けられる。
- 緩勾配:0.5寸〜2.5寸勾配(約2.8~14.0度)
- 並勾配:3寸〜5寸勾配(約16.7~28.8度)
- 急勾配:6寸勾配以上(約31.0度以上)
- 屋根勾配は屋根材によって最低限、確保すべき勾配がある。
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