- 塔屋(読み:とうや)って何?
- 階数に入らないってホント?
- 高さに含まれない塔屋の基準が知りたい。
こんな悩みに答えます。
本記事では、建築物の屋上に設ける「塔屋」について、建築基準法による制限をわかりやすく解説。
例えば、戸建て住宅にルーフバルコニーをつくるとき、屋上へあがる階段を設計するためには欠かせない知識です。
✓ 本記事の内容
- 塔屋の定義
- 建築物の高さの制限に含まれない塔屋の基準
- 階数に含まれない塔屋の基準
このサイトは、確認検査機関で審査を担当していた一級建築士が運営。
住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
塔屋とは【昇降機塔、装飾塔、物見塔など建築物の屋上部分】
塔屋とは、建築物の屋上から突き出した部分のことです。
ペントハウスとも呼ばれ、建築図面にPH階(Pent House)と表現されます。
「高さ」に含まれない塔屋の基準(令2条六号)
建築基準法(※1を除く)において、下記に当てはまる塔屋は「建築物の高さ」に含まれません。
- 用途:階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓
- 塔屋の水平投影面積の合計:建築物の建築面積の1/8以内
- 塔屋部分の高さ:12m以下(※以下の条文においては5m)
- 法55条1項、2項
- 法56条の2第4項
- 法59条の2第1項(法55条1項にかかる部分のみ)
- 法別表第四(ろ)欄二の項、三の項、四の項ロ
※1:上記を満たす塔屋でも高さに算入される法規制
法33条 | 避雷設備 |
法56条1項三号 | 北側斜線制限 |
法57条の4第1項 | 特例容積率適用地区内における建築物の高さの限度 |
法58条 | 高度地区 |
法60条の2の2第3項 | 居住環境向上用途誘導地区 |
法60条の3第2項 | 特定用途誘導地区 |
塔屋の用途は、主に階段室や昇降機塔(=EVホールなど)に限定されています。
「倉庫」や「物置」のようなスペースを設けた時点で「建築物の高さ」に含まれるということですね。
「階数」に含まない塔屋の基準(令2条八号)
下記に当てはまる塔屋は、建築物の階数に含まれません。
- 用途:階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓
- 塔屋の水平投影面積の合計:建築物の建築面積の1/8以内
建物は階数が多いほど、建築基準法による防火避難上の制限が厳しくなるもの。
例えば、「2階建て+塔屋」に比べて「3階建て」の建築物は、避難規定(非常用進入口の設置など)や防火規定(耐火建築物の要否など)が厳しくなります。
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塔屋に関するQ&A
塔屋の設計において、よくある質問をまとめました。
- 塔屋に庇などを設けるとき、水平投影面積はどのように算定する?
- 塔屋は日影規制の対象になる?
- 昇降機塔とみなされるエレベーターホールの規模は?
- 大屋根と一体になる塔屋は、階数に含まれない?
庇のある塔屋の水平投影面積の算定方法
よって、塔屋の出入り口に庇を設ける場合、奥行き1mを超えるものは、端部から1mセットバックした範囲が水平投影面積に含まれます。
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高度地区・北側斜線制限における塔屋の取り扱い
塔屋は北側斜線に当たらないように設計しなければなりません。
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日影規制の対象となる塔屋について
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昇降機塔とみなされるエレベーターホールの規模について
たとえば、大阪府における法解釈は以下のとおり。
エレベーターホールの広さがエレベーターシャフトの広さと同程度で、塔屋部分の床面積が建築面積の 1/8 以内であれば階に算入しない。
上記の回答はあくまでも目安のため、確認申請を提出する際は、確認検査機関に事前確認することをおすすめします。
大屋根と一体になる塔屋の取り扱い
例えば、京都市では以下のとおり。
また,屋上への設備等の点検時等のみしか用いられない必要最小限の階段室(勾配屋根の大屋根部分に存する階段室も含む。)は,水平投影面積の制限内であれば,階数に算入しません。なお,これらの屋上部分は建築物の「階数」には算入されませんが,「(PH)階」には該当するので,その部分の床面積は,延べ面積に算入されます。
階段室は,階段および屋上への通路のみであること。階段室に物入れや屋上への通路以外のスペー
スがある場合は,1/8以下でも階に算入されます。大屋根部分に存する必要最小限の階段室は,
階数には含まれませんが,建築物の高さには含まれます。
一方で、東京都葛飾区の建築基準法取り扱いでは基準が異なります。
1)階段室と吹抜け・小屋組・小屋裏物置は壁で明確に区画されていること。
2)階段室は、屋根面より50cm 程度突出していること。
※ 階段室と屋根が一体で、階段室が屋根から突出しておらず、➊ + ➋ > S×1/8 となっているもの。
塔屋について建築基準法を読む
「建築物の高さ」「階数」の定義は、建築基準法施行令2条に書かれています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
第二条 次の各号に掲げる面積、高さ及び階数の算定方法は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
六 建築物の高さ 地盤面からの高さによる。ただし、次のイ、ロ又はハのいずれかに該当する場合においては、それぞれイ、ロ又はハに定めるところによる。
イ 法第五十六条第一項第一号の規定並びに第百三十条の十二及び第百三十五条の十九の規定による高さの算定については、前面道路の路面の中心からの高さによる。
ロ 法第三十三条及び法第五十六条第一項第三号に規定する高さ並びに法第五十七条の四第一項、法第五十八条、法第六十条の二の二第三項及び法第六十条の三第二項に規定する高さ(北側の前面道路又は隣地との関係についての建築物の各部分の高さの最高限度が定められている場合におけるその高さに限る。)を算定する場合を除き、階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部分の水平投影面積の合計が当該建築物の建築面積の八分の一以内の場合においては、その部分の高さは、十二メートル(法第五十五条第一項及び第二項、法第五十六条の二第四項、法第五十九条の二第一項(法第五十五条第一項に係る部分に限る。)並びに法別表第四(ろ)欄二の項、三の項及び四の項ロの場合には、五メートル)までは、当該建築物の高さに算入しない。
ハ 棟飾、防火壁の屋上突出部その他これらに類する屋上突出物は、当該建築物の高さに算入しない。
七 中略
八 階数 昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の八分の一以下のものは、当該建築物の階数に算入しない。また、建築物の一部が吹抜きとなつている場合、建築物の敷地が斜面又は段地である場合その他建築物の部分によつて階数を異にする場合においては、これらの階数のうち最大なものによる。
まとめ
- 塔屋とは、建築物の屋上から突き出した部分のことです。
- 下記に当てはまる塔屋は「建築物の高さ」に含まれません。(※1の規定を除く)
- 用途:階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓
- 塔屋の水平投影面積の合計:建築物の建築面積の1/8以内
- 塔屋部分の高さ:12m以下(※以下の条文においては5m)
- 法55条1項、2項
- 法56条の2第4項
- 法59条の2第1項(法55条1項にかかる部分のみ)
- 法別表第四(ろ)欄二の項、三の項、四の項ロ
- ※1の規定
- 法33条:避雷設備
- 法56条1項三号:北側斜線制限
- 法57条の4第1項:特例容積率適用地区内における建築物の高さの限度
- 法58条:高度地区
- 法60条の2の2第3項:居住環境向上用途誘導地区
- 法60条の3第2項:特定用途誘導地区
- 下記に当てはまる塔屋は、建築物の階数に含まれません。
- 用途:階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓
- 塔屋の水平投影面積の合計:建築物の建築面積の1/8以内