確認申請における『軽微な変更』の判定基準|建築基準法の規則を解説

軽微な変更_判定基準 軽微な変更/計画変更
  • 施工中に建物の仕様を変更しないといけなくなった…。
  • 確認検査機関に『軽微な変更』を届け出ないといけない?
  • 『軽微変更』と『計画変更』の違いって何?

こんな疑問に答えます。

本記事では、建築確認申請における『軽微な変更』の判断基準について解説。

建物を施工している途中でプランの変更がしたい場合、軽微な変更にあたるか、計画変更になるかは大きな問題ですよね。

記事を読んでもらえれば、設計者自身で『軽微変更』か「計画変更」かの判断ができるようになります。

 

このサイトは、確認検査機関で意匠審査を担当していた一級建築士が運営しています。

住宅から特殊建築物まで、1000件以上の設計相談を受けて得た建築基準法の知識をできるだけわかりやすくまとめていくので、ご参考までにどうぞ。

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確認申請における『軽微な変更』とは

軽微な変更とは、確認済証が交付されたあとに、建築基準法に適合することが明らかな設計変更を行うことです。

逆に言えば、「軽微な変更」に当てはまらない設計内容の変更はすべて「計画変更」となるので注意しましょう。

計画変更:軽微な変更にあてはまらない設計内容の変更のこと。建築基準法第6条に「計画の変更」として明記されています。

 

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軽微な変更の判定基準は『建築基準法規則3条の2』

確認検査機関や特定行政庁が、軽微な変更にあたるかどうかを判定する基準は、”建築基準法規則3条の2”です。

”建築基準法規則3条の2”のいずれかの項目に当てはまる設計変更は、「軽微な変更」として届け出可能。

 

 軽微な変更の判定基準一覧表

規則
3条
の2
変更事項 明らかに軽微な変更と判断できるもの 左記以外で軽微な変更と判断するもの
1-1 敷地に接する道路の幅員 幅員が広くなるもの 幅員が測量の微少な誤差により狭くなる場合で、建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
敷地が道路に接する部分の長さ 長くなるもの若しくは短くなる場合で、建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
1-2 敷地面積、敷地境界線の位置 敷地面積が増加する場合で、変更後の敷地境界線で囲まれた部分が変更前を包含し、建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
1-3 建築物の高さ 低くなるもので、建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
建築物の地盤面 変更後の計画が建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
 1-4 階数 減少するもので、建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
 1-5 建築面積 減少する場合で変更前の建築面積を算定するために用いた線で囲まれた部分が、変更後を包含し、建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
 1-6 床面積 減少する場合で変更前の床面積を算定するために用いた線で囲まれた部分が、変更後を包含し、建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
 1-7 用途の変更 令第137条の18で指定する類似の用途相互間におけるもの
室の用途の変更 変更後の計画が建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
1-8 構造耐力上主要な部分である基礎ぐい、間柱、床版、屋根版又は横架材(小ばりその他に限る)の位置の変更 確認申請時に変更に関する予め検討がされており、変更がその範囲内である場合 変更に係る部材及び当該部材に接する部材以外に応力度の変更がなく、変更に係る部材及び当該部材に接する部材が令82条各号に規定する構造計算によって確かめられる安全性を有するもので、建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
1-9 構造耐力上主要な部分である部材の材料又は構造の変更 建築材料に変更がないこと、強度または耐力が減少しないこと及び施行規則第3条の2第1項第12号の表に定める変更であることが確認できるもので、建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
1-10 構造耐力上主要な部分以外の部分である屋根ふき材、内装材、外装材、帳壁などの部分、広告塔、装飾塔など建築物の屋外に取り付けるもの若しくは取り付け部分、壁又は手すり若しくは手すり壁の材料若しくは構造の変更又は位置の変更 施行規則第3条の2第1項第12号の表に定める材料、構造の変更のみで、位置の変更がない場合 位置の変更にかかるもので、建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
1-11 構造耐力上主要な部分以外の部分である天井の材料若しくは構造の変更又は位置の変更 構造耐力上主要な部分以外の部分である天井の材料若しくは構造の変更又は位置の変更
1-12 施行規則第3条の2第1項第12号に定める材料又は構造 施行規則第3条の2第1項第12号に定める材料又は構造
1-13 井戸の位置 施行規則第3条の2第1項第13号に定める変更
1-14 開口部の位置及び大きさ 変更後が変更前を包含するもの(耐力壁にかかるものは除く) 変更後の計画が建築基準関係規定に適合することが明らかなもの(14号イ~ニにかかるものを除く)
1-15 建築設備の材料、位置又は能力 能力が低下しないもの 変更後の計画が建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
2-1,2 昇降機・定期報告対象の建築設備 耐火構造又は不燃材料を他の耐火構造又は不燃材料に変更するもの。材料、位置又は能力を変更するもの(性能が低下する材料の変更及び能力が減少する変更を除く)
3-1,2,3,
4,5
工作物の位置、材料、構造 構造耐力上主要な部分以外の部分施行規則第3条の2第1項第12号に定める材料または構造の変更 築造位置、構造耐力上主要な部分の位置、材料等の変更をするもので、建築基準関係規定に適合することが明らかなもの
4-1,2 製造・貯蔵・遊戯施設の位置、高さ、築造面積 高さの減少、築造面積が減少するもので、建築基準関係規定に適合することが明らかなもの

 

建築基準法の施行規則3条の2を抜粋すると、以下のとおり。

(計画の変更に係る確認を要しない軽微な変更)

建築基準法施行規則 第三条の二 

法第六条第一項(法第八十七条第一項において準用する場合を含む。)の国土交通省令で定める軽微な変更は、次に掲げるものであつて、変更後も建築物の計画が建築基準関係規定に適合することが明らかなものとする。

以下省略

軽微な変更について、建築基準法の条文にどのように書かれているかは、建築関係法令集で確認してください。

法文には、おおまかな内容しか書いてない。具体的な設計変更となると、「軽微な変更」に当てはまるかどうか判断に迷う…。

”建築基準法規則3条の2”の詳しい解釈については、”建築確認手続きの運用改善に関する講習会 質疑 – 国土交通省”が参考になるかと。

 

「軽微な変更」に当てはまるか、まずは設計者が判定しましょう

設計内容を変更しなければならないけど、「計画変更」になると手続きが面倒。できることなら「軽微な変更」で処理してほしい…。

そんなときは、まず変更したい内容が”建築基準法規則3条の2”の項目に当てはまるかどうか法令集を読んで調べましょう。

確認検査機関に相談するのはその後です。

 

例えば、間仕切壁の位置を施工中に変更したい場合…

今回の変更は、「間仕切壁の位置の変更」のため、規則3条の2第十号にあたると考えています。「軽微な変更」で問題ないですよね。

こんなふうに、「軽微な変更」に該当するという見解を設計者から確認検査員に伝えられるように、準備することが大切。

確認検査機関の検査員でも「軽微な変更」か「計画変更」か、判断に迷うケースはあります。

そんなとき、設計者の考えや意思表示がないと、確認検査機関にとって手続き違反になる恐れがなく、安全な判断である「計画変更」という結論にいたるので…。

 

”軽微な変更”について調べるために必要な書籍

軽微な変更の判定には、建築基準法を読みこなす必要があるため、下記の2冊が参考となります。

基本建築関係法令集 法令編

建築基準法が原文どおり書かれている基本の一冊。建築確認申請に携わる設計者は、まず法令集を開くクセをつけましょう。

軽微変更の判断基準である「規則3条の2」も掲載されています。

建築申請memo

確認検査機関で働く職員も愛用者が多いです。

基本は建築基準法の法令集で確認しつつ、条文の内容を確認するために利用するのがおすすめ。

 

まとめ

  • 『軽微な変更』とは、”建築基準法規則3条の2”のいずれかの項目にあてはまる設計変更。
    • 「軽微な変更」に当てはまらない設計内容の変更はすべて「計画変更」。
  • ”建築基準法規則3条の2”を読み、設計者として「軽微な変更」に該当するか判定すべき。
    • 『軽微な変更の判定基準一覧表』を要確認。