- 塀って建築物に分類される?
- どんな構造の塀がある?
- 控え壁が必要となるCB塀の基準が知りたい。
こんな悩みに答えます。
本記事では、建築基準法の「塀」に関する制限をわかりやすく解説。
たとえば、戸建て住宅の周囲に設ける塀は建築物とみなされるため、建築法規を満たさなければいけません。
「塀が倒れて近隣住民がケガをする」といった事故を防ぐためにも、法規制を正しく理解しておきましょう。
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住宅から特殊建築物まで1000件以上の設計相談を受けた経験をもとに、建築知識をわかりやすくまとめていきます。ご参考までにどうぞ。
塀とは【見通しのきかない連続性のある壁】
塀とは、敷地の境界などに設置する連続した壁のことです。
塀を設ける目的は主に…①敷地周囲からの目隠し②他人地からの火災の燃え移りを防ぐ③敷地内への侵入防止…など。
「建築物のある敷地に設けた塀」は「建築物」にあたります。(建築基準法2条による)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
よって、塀は建築基準法を満たすように設計しなければいけません。
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塀に関する建築基準法の制限
塀に関する建築基準法の制限は、大きく分けて3つ。
- 構造規定
- 防火規定
- 道路斜線制限
構造規定
塀の構造種別として、代表的なものは2つ。
- 組積造:コンクリートブロックやレンガを積んだもの
- 補強コンクリートブロック造:コンクリートブロックを鉄筋で補強したもの
塀の高さ、控え壁の要否が問題となるケースが多いため、それぞれの基準を表にまとめました。
✓ 補強コンクリートブロック造の規定
法令 | 建築基準法施行令62条の8 |
高さ | 2.2m以下 |
壁の厚さ |
|
鉄筋 |
※ただし、縦筋をその径の40倍以上基礎に定着させる場合は、縦筋の末端は、基礎の横筋にかぎ掛けしないことができる。 |
控壁の間隔 | ※高さ1.2mを超える場合のみ控壁が必要
|
基礎 | ※高さ1.2mを超える場合のみ
|
✓ 組積造(コンクリートブロック・石積み・レンガ等)の規定
法令 | 建築基準法施行令61条 |
高さ | 1.2m以下 |
壁の厚さ | 高さの1/10以上 |
鉄筋 | - |
控壁の間隔 |
|
基礎 | 基礎の根入れ:20㎝以上 |
防火規定
以下のいずれかに当てはまる高さ2m超の塀は、延焼ライン内にある部分を不燃材料でつくるか、または覆う必要があります。
- 準防火地域内で木造建築物に附属するもの
- 防火地域内で建築物に附属するもの
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道路斜線制限
道路斜線を検討する際、道路中心のレベルから高さ1.2mを超える塀は、後退距離の緩和を適用することができません。
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塀の種類
塀に用いられる代表的な構造は以下のとおり。
- コンクリートブロック積み
- タイル張り
- レンガ積み
- 化粧ブロック積み
- 自然石張り
- コンクリート打放し
- 吹付(洋風)塗り壁
- 生垣
- 木塀
塀に関するQ&A
塀に関する建築基準法の取り扱いで、質問の多いものをまとめました。
- 塀の前後に高低差がある場合の高さの取り方
- 塀を増築するときの確認申請の要否
- 塀と擁壁の違い
- 塀とフェンスの違い
塀の前後に高低差がある場合の高さの取り方
塀を増築するときの確認申請の要否
塀は床面積0㎡であるものの、建築物に該当。いわゆる「0㎡増築」として確認申請の対象となります。
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塀と擁壁の違い
ちなみに、建築基準法において2mを超える擁壁は工作物として確認申請が必要。
塀は工作物ではありません。建築物として確認申請の検査対象となります。
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塀とフェンスの違い
フェンスに比べて、塀は風圧をもろに受け、重量も重いため倒れたときの危険性が高いといえます。
塀について建築基準法を読む
組積造の塀に関する制限は、建築基準法施行令61条に書かれています。
「建築基準法を読みたくない」という方は、建築法規PRO2024 図解建築申請法規マニュアルや建築申請memo2024といった書籍で、図や表を見て理解を深めていきましょう。
(組積造のへい)
第六十一条 組積造のへいは、次の各号に定めるところによらなければならない。一 高さは、一・二メートル以下とすること。
二 各部分の壁の厚さは、その部分から壁頂までの垂直距離の十分の一以上とすること。
三 長さ四メートル以下ごとに、壁面からその部分における壁の厚さの一・五倍以上突出した控壁(木造のものを除く。)を設けること。ただし、その部分における壁の厚さが前号の規定による壁の厚さの一・五倍以上ある場合においては、この限りでない。
四 基礎の根入れの深さは、二十センチメートル以上とすること。
補強コンクリートブロック造は建築基準法施行令62条の8。
(塀)
第六十二条の八 補強コンクリートブロック造の塀は、次の各号(高さ一・二メートル以下の塀にあつては、第五号及び第七号を除く。)に定めるところによらなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。一 高さは、二・二メートル以下とすること。
二 壁の厚さは、十五センチメートル(高さ二メートル以下の塀にあつては、十センチメートル)以上とすること。
三 壁頂及び基礎には横に、壁の端部及び隅角部には縦に、それぞれ径九ミリメートル以上の鉄筋を配置すること。
四 壁内には、径九ミリメートル以上の鉄筋を縦横に八十センチメートル以下の間隔で配置すること。
五 長さ三・四メートル以下ごとに、径九ミリメートル以上の鉄筋を配置した控壁で基礎の部分において壁面から高さの五分の一以上突出したものを設けること。
六 第三号及び第四号の規定により配置する鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、縦筋にあつては壁頂及び基礎の横筋に、横筋にあつてはこれらの縦筋に、それぞれかぎ掛けして定着すること。ただし、縦筋をその径の四十倍以上基礎に定着させる場合にあつては、縦筋の末端は、基礎の横筋にかぎ掛けしないことができる。
七 基礎の丈は、三十五センチメートル以上とし、根入れの深さは三十センチメートル以上とすること。
塀における防火上の制限は、建築基準法施行令136条の2ですね。
第七章の二 防火地域又は準防火地域内の建築物
(防火地域又は準防火地域内の建築物の壁、柱、床その他の部分及び防火設備の性能に関する技術的基準)
第百三十六条の二 法第六十一条の政令で定める技術的基準は、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。中略
五 高さ二メートルを超える門又は塀で、防火地域内にある建築物に附属するもの又は準防火地域内にある木造建築物等に附属するもの 延焼防止上支障のない構造であること。
まとめ
- 塀とは、敷地の境界などに設置する連続した壁のこと。
- 「建築物のある敷地に設けた塀」は「建築物」に該当。
- 塀に関する建築基準法の制限は、大きく分けて3つ。
- 構造規定
- 組積造
- 補強コンクリートブロック造
- 防火規定
- 道路斜線制限
- 構造規定
- 塀に用いられる代表的な構造は以下のとおり。
- コンクリートブロック積み
- タイル張り
- レンガ積み
- 化粧ブロック積み
- 自然石張り
- コンクリート打放し
- 吹付(洋風)塗り壁
- 生垣
- 木塀
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